デジタルトランスフォーメーションの“ジレンマ”
昨年、とあるセミナーで「デジタルトランスフォーメーションの前に横たわる組織的課題」といったテーマでお話をさせていただく機会があり、「現在、デジタルトランスフォーメーションを企業のあらゆる部署が主体となって推進しているが、革新主体の組織ポジションによって抱える課題は異なる。“部署間連携”が最も難しい」といった話をしたところ、多くの方々から共感の声をいただきました。
具体的には「部署間でKGI・KPIが異なる」「合意形成に膨大な時間がかかる」といった点が課題感として挙げられており、“デジタル化”という共通キーワードはあるものの、部署間で連携して達成すべき目的・ゴール設定がしっかりされたうえで道筋が共有されていないことが、志を一つにして部署間が連携して進めない理由の一つなのではないか、という仮説を持ちました。
裏を返せば皆が賛同するような目的であったり、組織を横断してでも取り組むべき(と思える)本質的な課題設定そのものがとても難しく、またそこから考えようとすると時間がかかる……といったジレンマに陥ってしまう、ということも、デジタル化を実行していく際の大きなハードルとして存在すると実感しています。
デジタルトランスフォーメーションは何のため?
“ゴール設定の難しさ”について前述しましたが、そもそも、デジタル化は何のために行うのでしょうか? 予算の効率化、若年層の獲得、スマホファーストへの対応……いろいろとキーワードは挙がりますが、筆者はデジタル化の本質的な目的は「生活者/顧客への提供価値の高度化と、それによる生涯顧客との関係構築と保持」であり、そのために企業が進めるべきことが“事業のサービス化”であると考えています。
では、事業のサービス化とは一体何なのか。なぜやらなければならないのか。どう取り組めばいいのか……などについて、順をおって解説していきます。