MA導入の「目的」が明確だった二社
美濃:本日はマーケティング・オートメーション(以下、MA)の導入と運用について、MAを活用して成果をあげている千趣会イイハナの二ノ宮さんと、三陽商会の安藤さんにうかがっていきます。千趣会イイハナの二ノ宮さん、御社でMA導入を決定した背景をお聞かせください。
二ノ宮:弊社が運営している「イイハナ・ドットコム」はフラワーギフトのECです。母の日の時期は需要が高まるのですが、それ以外の時期に売上をどう上げていくかが課題です。
今まではエクセルやアクセスを使って、手動でセグメントしてメール配信していたのですが、非常に時間がかかる割には効果があがらないのが悩みでした。そこで、作業負担を軽くして成果を最大化するためにMA導入を決めました。
美濃:実際に、どれくらいのセグメントメール施策を動かしていたんですか。
二ノ宮:5つから6つくらいです。手動でセグメントを作るのは時間がかかるので、それで精一杯でした。試してみたいセグメント施策はたくさんあるのに、できていなかったんです。
美濃:確かに、人力でのセグメント施策には限界がありますね。三陽商会の安藤さんはいかがでしょう。
安藤:三陽商会は、店舗とECの会員統合や在庫連携など、オムニチャネルを進める基盤づくりは先行して進めていたものの、顧客分析やマーケティングの活用においては、人的リソースやノウハウの部分で後れを取っていました。
千趣会イイハナさんのような先進企業では、手運用の限界がきてMAを導入されるケースも多いと思うのですが、当社の場合は、取り組みが遅れている分、手運用に時間をかけるフェーズをMA導入によって飛ばせないかと考えたんです。
MAの導入で運用を効率化すれば、運用者が施策を考える時間を確保できるため、戦略設計やPDCAのサイクルをはやく回せるのではないかと。
美濃:そういった中で、MAツールのCross-Channel Marketing Platform(以下、CCMP)をどうして採用されたのでしょうか。
安藤:日本のアパレル業界でCCMPを活用している企業が多かったことと、導入後も既存施策のチューニングから新施策の提案など、手厚いサポートを受けられると感じたからです。私たちは後発ですから、先行事例を上手く取り入れ、運用をスムーズに回したいと考えました。
二ノ宮:当社は実際の運用担当者が使いこなせるかを最も重要視しました。複数のツールのデモ画面を見て、CCMPなら使えるというメンバーみんなの合意を得て選んだ形です。
関係者全員で目的を共有し、主体性を持つことが重要
美濃:決定からローンチまでは、どの程度の期間で、どういう体制で進められたのでしょうか。
安藤:われわれ三陽商会の場合、決定からローンチまでが約4ヵ月でした。体制は、社内の関連部署はもちろん、社外のSIerやPOSベンダーも含めて、週1の定例ミーティングをベースに進めました。
二ノ宮:当社も同じく約4ヵ月くらいでローンチでしたが、選定の段階から運用メンバーに入ってもらい、そのまま具体的な施策シナリオを決めていきました。定例は週1で、必要に応じて外部のECシステム会社にも入ってもらいました。
美濃:両社様とも短い期間でのローンチに成功されたわけですが、何が秘訣だったのでしょうか。
二ノ宮:やはり、運用担当者が使いこなせるツールを選んだことが大きいです。過去に、トップダウンで「このツール使って」と指示して上手くいかなかった時とは対照的でした。
運用担当者も「自分たちで選んだツールだから、ちゃんと使わなければいけない」と本気になってくれました。自発的に「この施策をするためには、どうすればいいんですか」といった質問が出るようになり、運用担当者が主体性を持って取り組み、リテラシーを高めていったのが成功要因ですね。
安藤:一番重要なのは、「導入の目的を明確にすること」です。MAはできることが多い分、導入目的が明確でないと、導入後に何をすればイイか分からなくなるということも起きえます。
だから、MA導入の目的をはっきりさせた上で、運用メンバーやシステム担当者、外部ベンダー等と共有することが、全員が効率良く動くためには不可欠だと感じています。
たとえば、システム担当者にしても、MA導入の目的を理解せず、ただシステムをつなぐことだけを考えていると「とりあえず実装できればイイよね」となってしまいます。ところが、MAを使ってお客様にどんな販促を打つかがシステム担当にも想像できれば、「難しくても実装すべき」とか「これはあきらめよう」とか、前向きな姿勢で率直に話し合い、全員で納得しながら進められます。
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メッセージカードやアンケートからも、セグメントの種を拾う!
美濃:とはいえ、導入プロジェクトは簡単には進まないのも事実かと思います。苦労されたところはありましたか。
安藤:苦労したというより、「克服した」イメージですね。目的が共有できていると、全員の意識が苦労よりも実現した喜びへ向くので。
二ノ宮:苦労したところといえば、商品がギフトなのでメッセージカードを付けることができるのですが、その文章内容からキーワードを抽出して、「お客様が何の目的で買っているか」をデータ化していく作業は大変でした。
安藤:それって、「誕生日」だとか、メッセージカードの中に書いてあるテキストベースのキーワードをMAのシナリオに活用していくということですか?
二ノ宮:はい。たとえば誕生日用途で買う人に対しては、年に1回必ず来る誕生日に合わせて適切にメールを送る。これがやりたかったことの一つなんです。だからメッセージカードの内容や、あとはアンケートの結果も連携させて、この人はこういう注文をするだろうというのを考えて施策を打っています。
安藤:なるほど! MAのシナリオ設計って、年齢・住所・購買履歴などが一般的ですが、メールのパーソナライズを深化させるために、メッセージカードのキーワードやアンケートまで活用されているのですね。
MAでセグメントを切り出し「手動」でメール配信してみるのも有効
美濃:導入段階に続き、いよいよ運用段階についてうかがってまいります。お二方は実際にどのような施策を運用していらっしゃいますか。
安藤:現状、オートで回しているのは10シナリオです。残りの手動の分は、オート化できるものはオート化しながら、チューニング作業をしています。
MAは「オートメーション」というだけあって自動化のイメージが強いし、当社も最初の目的はメール配信の自動化による効率性アップにありましたが、「データベースが一元化されていて、常にアップデートされている」ことも大きなメリットです。
何かアイデアが浮かんだときに、CCMP上で設計すれば配信先のボリュームがすぐにわかり、配信することも可能です。これを導入前の別々のデータベースでやろうとすると、時間と手間をかけてデータの抽出や作成をしたのに、実際には思ったような配信ボリュームが出ないということもあり、意欲を削がれることもありました。
美濃:確かに、MAは表の施策面にフォーカスされがちですが、裏で支えているデータが、各種データベースを統合していて常に自動で連携されることも強みです。この強みが、いざPDCAを回したり施策を打ったりするときには大きな利点となります。
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CCMPを入れて、セグメント施策が苦でなくなった
二ノ宮:イイハナの場合は、代表的なものは大きく分けると4種のシナリオを回していて、細かく分類すると母の日のシナリオだけで20から30くらいあります。オートは少なくて、ほとんど手運用です。
セグメントはすごく細かく切っていますね。性別などではなくて、過去の注文履歴からギフトの予算や、花束なのか鉢植えなのかという花のスタイルの好みなどを基準にしています。
このセグメントを活用して、お客様が欲しいものを直接メールすると同時に、別の商品もおすすめしてみるようなABテストをかなり回しています。ほぼ思った通りの結果が出ますが、ときどき全く予想のつかない発見があったりするので、テストって重要だと思います。
安藤:二ノ宮さんたちがそういったテストをたくさんできるのは、手運用とはいえ、抽出や配信がかなり簡単にできるからでしょうか? そうであれば、僕らもチャレンジしてみようかなと改めて感じました。
二ノ宮:まさにそうです。エクセルやアクセスでやっていたときは、セグメントに手間がかかりすぎて、「頑張ってセグメント増やしても500件しかないなら仕方ない」と後ろ向きな姿勢に陥ってしまっていました。CCMPを入れた今は、データが連携されているので、簡単にセグメント後の件数が割り出せる。500件だとしても、10個集まれば5,000件になる。そういった積極的な姿勢でテストを行っています。
考える時間が生まれ、運用者の自発的取り組みが広がってきた
美濃:今、施策を回していく中で、大切にされていることは何でしょうか。
二ノ宮:2週間に1回、定例ミーティングを行い、そこで実行する施策を選んだり、実行したものを検証したりしています。
今までだと、何かするとなっても「じゃあ、あとでデータ抽出してみて」となっていたのに、今はミーティング中に対象者が何人いるかすぐわかる。だから、PDCAの速度がすごく上がったし、運用担当者もやりやすくなりました。
安藤:弊社でも、担当者が施策を回しながら「ついでに考えたもの」を、とりあえず設定保存しておいてくれるようになりました。管理画面をのぞくと「こんな施策は聞いてないぞ?」と思うこともありますが(笑)、自主的に考え動いてくれるようになったのは、CCMP導入のおかげだと思います。
美濃:運用者の方も考える時間ができたため、アイデアをどんどん形にしていけるのですね。では最後に、今後の展望をお聞かせください。
二ノ宮:お客様によって1日あるいは1週間の生活のリズムは違うので、欲しいタイミングにメールが来るような形にしたいですね。あと、イイハナは母の日の注文が多いので、次の母の日までに忘れられないよう、サービス内容や企業姿勢などをメールで発信して、ブランディングしていきたいです。
安藤:まず、MA自体を単なる「コミュニケーションツール」から、優れた顧客体験を提供するための「プラットフォーム」へ変えていきたいですね。具体的には、CCMPをハブにして、SNSやアプリ、ウェブ接客ツールなど別のサービスとつなげて、様々なメディアやチャネルでコミュニケーションをパーソナライズさせたいです。
次に、AIとの連携にも取り組んでいきたいです。これは時代的に必然ですね。設計や評価、チューニングもAIを活用して自動化できたらイイなと思っています。
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