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カゴメがCPAを大きく改善!ワンスターのYCD活用から探る、ネット広告の可能性

 ワンスターは、デジタル領域におけるダイレクトマーケティング支援を提供している。さる5月19日、「2017年度Yahoo! JAPAN エージェンシーカンファレンス」において、Yahoo!コンテンツディスカバリーの売り上げに最も貢献した企業に贈られる「注力プロダクト賞」を受賞したのが同社だ。そこで、ワンスターとヤフー両社のキーパーソンに取材し、Yahoo!コンテンツディスカバリーの活用事例や可能性、今後の展望などについて話を聞いてきた。

月間280億インプレッション以上の集客力を活用

(左)株式会社ワンスター 増井秀人氏(右)ヤフー株式会社 宇都宮正騎氏
(左)株式会社ワンスター 増井秀人氏 (右)ヤフー株式会社 宇都宮正騎氏

 「Yahoo!コンテンツディスカバリー(以下、YCD)」は、Yahoo!ニュースをはじめ、ヤフーグループ内のメディアやメディアパートナーのページ下部に、“おすすめのリンク”として配置された、モジュール枠のこと。昨今、YCDがマーケティングソリューションとして注目されている背景には、何があるのだろうか。

Yahoo!コンテンツディスカバリーの表示イメージ
Yahoo!コンテンツディスカバリーの表示イメージ

 「YCDをはじめとするレコメンドソリューションは、コンテンツリンクやサムネイルなどを構成したウィジェットをページの下部に配置します。YCDの場合、ファーストビューやトップページではなく、Yahoo!ニュースなどの記事を読み終えた後に表示されますので、コンテンツを消費した後のユーザーに接触していただくことができます。コンテンツを消費した後のユーザーはコンテンツを消費するニーズが顕在化されており、次のアクションとして、モジュール内のリンクをクリックすることを狙ったサービスです」(宇都宮氏)

 ヤフーは、月間で280億インプレッション以上というボリュームの担保が強みであり、YCDはYahoo!ニュースへも掲載される。

 今回取材したワンスターは、2017年4月にYahoo!マーケティングソリューションパートナープログラムにおいて、ゴールドパートナーと特別認定パートナーとして、コンテンツマーケティングパートナーの認定を受けている。また5月19日には、ヤフーが開催した「2017年度Yahoo! JAPAN エージェンシーカンファレンス」において、YCDの売り上げに最も貢献した企業に贈られる「注力プロダクト賞」を受賞。ヤフーの広告商品・サービスを統合的に活用してきた実績、とりわけコンテンツマーケティングに関する知見があり、運用品質が一定基準以上であると認定されたマーケティング支援会社である。

 「ワンスターは、健康食品や化粧品に特化して、デジタル領域におけるダイレクトマーケティングを支援する代理店です。元々、コンテンツを用いたダイレクトレスポンスに注力していて、2015年にYCDが広告メニューとして登場以来、全社的にこの活用に取り組んでいます」(増井氏)

リーチ力×機械学習で、配信の最適化の精度を向上

 YCDはコンテンツをフックにしているため、コンテンツになじんでいるのがひとつの特長である。また、リーチに関して国内屈指のボリュームが想定できることや、YCDを支えるレコメンドエンジンそのものが強みとして挙げられる。

 ということで、YCDのレコメンドエンジンについてもう少し補足したい。YCDは欧米をはじめアジア太平洋で多数使われている、Taboola(タブーラ)社とパートナーシップを提携。そのレコメンド技術によって、閲覧するユーザーと該当ページとの関連性やデバイス、視聴タイミング、行動履歴など、100以上のエンジンの要素を組み合わせて、モジュール内にリンクを表示することができる。

 「エンジンは機械学習を重ねますので、時間が経過するほど最適なユーザーへ最適なタイミングで配信されやすくなります。また弊社が持つリーチをもとに、エンジンは学習を重ねていきますので、同一のユーザーに対しても、昼か夜かといった利用タイミングや利用時間などのロジックが変われば、出るコンテンツが変わります」(宇都宮氏)

 また、昨今言及されているブランドセーフティについて、ヤフー系列のサービス全般にいえることは、審査が厳格であること。YCDの提携メディアにおいても審査は厳格であり、自社で記事などのコンテンツ作成を行っているメディアか、記事提供契約を結んで記事の提供を受けているメディアに限っている。

 「YCDは安心した環境でご利用いただけます。また活用方法についても、YCDを通して一般受けするコンテンツにばかりユーザーを届けるのではなく、たとえばニッチなコンテンツであっても興味をもって読むユーザーがいるのであれば、そこに需要を感じるユーザー層にYCDを通してコンテンツを届けることができます。YCDは、ユーザー・メディア・出稿主それぞれが満たされるマーケティングソリューションなのです」(宇都宮氏)

顕在層にきちんとアプローチできていますか?

 YCDが登場する2015年以前、ワンスターは一般的なバナー広告運用の伸び悩みに直面したそうだ。バナー広告の出稿はある程度までいくと上限にぶち当たってしまうのだという。

 「バナーをはじめ既存の広告手法では、いくら頑張ってもリーチできない層があります。これは皆さん共通の悩みだと思いますが、ユーザーも日々リテラシーが高まっていて、バナーだとわかるとクリックしてくれないんですよね。一方で、YCDというプロダクトは、コンテンツとしてユーザーに提供できるもの。これなら今までアプローチできなかった層にリーチできるサービスになりうる!、と全社的にYCDへの注力をはじめたわけです」(増井氏)

 ワンスターはエンドユーザーを4分類に分けて、ユーザーごとにアプローチの方法を使い分けている。そこで広告に反応しない顕在層へのアプローチに効果的なのがYCDだという。

 「ユーザーのリテラシーが高まるほど、広告を嫌う層が増えています。そこで着目すべきは取りこぼしている顕在層です。広告に反応しないけど、ニーズは顕在化している層へのアプローチは、コンテンツになじむYCDが最適です。

 広告に反応する層にはバナー広告、広告に反応しない層にはコンテンツになじむYCDといった棲み分けをすればいいと考えています」(増井氏)

ワンスターの強みの秘訣は、コンテンツ作成にある!

 先で触れたとおり、YCDにおけるワンスターの業績は注力プロダクト賞を受賞するほど。この受賞の背景には、全社的な取り組みを実践できたことに加えて、制作体制を内製化しつつ、YCDで通用するためのコンテンツ作りについて、どんどん知見が貯まる仕組みを構築したことが要因としてある。

 ワンスターでは、YCD用のコンテンツ作成において、ディレクションも含め内製化を徹底。完全内製化のもと、最も注力しているのがベースの記事作りだと増井氏は補足する。各営業単位で配置されたディレクターを中心に、ワンスターオリジナルの「ターゲット設定シート」を作り上げながら、コンテンツの方向性を考察し、現状の問題点を浮き彫りにすることで、本質的なコンテンツ作りにつなげていくのだという。 

 「PDCAより何より、ベースの記事作りにパワーをかけます。コンバージョンにつながる記事作りを実現するには、制作メンバー全員が対象商品・サービスを熟知し、様々な角度から検討しなければなりません。

 そこで、ターゲット設定シートを通じて商材の特徴や市場におけるポジショニング、競合調査、ユーザー特性を洗い出し、その上で最も成果を引き出す訴求やページ構成について、ディレクターが中心となって考え、コンテンツを作成します。一部ライティングを外部パートナーさんにお願いすることはあるものの、基本は内製化しながら知見を社内で貯めて、社内横断的にノウハウ共有も行っています」(増井氏)

目標CPAの達成率229%を実現!

 今回ワンスターには、直近のYCDの活用事例を挙げてもらった。飲料、食品、調味料の国内大手の総合メーカーであるカゴメが、通販限定で販売している野菜ジュース「つぶより野菜」の展開事例。コンテンツをフックに中長期的にジワリと効果が高まりがちだと思われるYCDで、比較的短いスパンで見事に目標KPIを達成した好例である。

「カゴメ つぶより野菜」(野菜ジュース)通販限定の商品
「カゴメ つぶより野菜」(野菜ジュース)通販限定の商品

 つぶより野菜の場合、YCDを利用する以前は、既存の運用媒体で出稿し、目標のKPIをCPAに据えたものの達成率が73.1%(2016年10月実績)。ところが、YCDに出稿したところ、CPAの目標達成率が229.0%(2016年10月実績)へとジャンプアップした。

 「つぶより野菜の施策でも、ターゲット設定シートを通じて徹底したリサーチ、市場のポジショニングを分析して、この商品が最も響く訴求を熟考し、YCDのコンテンツとして展開しました。2016年に累計本数1,000万本を突破した商品ですが、従来の手法ではリーチできなかった顕在ニーズへの訴求と、販売実績の底上げに寄与できたと思います」(増井氏)

 ヤフーの立場からは、完全内製化などワンスターならではの強みについて、以下の見解を示した。

 「ワンスター様が成果を出せるのは、自前で制作体制を構築できているからです。これはワンスター様はじめ、YCDで実績を残す代理店様に共通した特徴です。弊社は各ステップでの審査が多く、厳格ですので、記事の展開にはやや高いハードルがあります。コンテンツ作成のノウハウを社内で横展開できる体制は、次の機会にもダイレクトにつなげられるでしょう。

 また、そもそも審査を通すことだけが目的ではありません。クライアントニーズを満たし、エンドユーザーの関心を引きつけるコンテンツ作りが望まれます。サービス開設当初から全社的に取り組むワンスター様は、オリジナルのターゲット設定シートを導入しながら、そうした点を踏まえた内製化に成功されています」(宇都宮氏)

多様なコンテンツで購買に繋がる活用に期待

 最後に、互いの要望や今後の展望をうかがった。

 「皆さんには、顕在層へのリーチで取りこぼしがないかを再確認してほしいです。弊社は“コンテンツを使ったダイレクトマーケティング”に大きな可能性を感じており、今後も実践し続けます。YCDは有効な手法のひとつです。新規獲得や売り上げアップをYCDで実現するために、全社をあげて最適化に磨きをかけていきます。

 また、弊社はナショナルクライアントを手がける機会が多いです。ブランドセーフティが問われる昨今では、より安心して出稿できる商品としてYCDの審査基準の厳しさは継続してほしいです」(増井氏)

 「今年だけでも、前年比でYCDの出稿主が数倍と増えていますが、現状はまだまだ使われ方が限定的です。その中でワンスター様には、購買ファネルの使い方に一石を投じていただきました。

 世の中の人の関心は無限大です。現在のYCDにおいて、流通するコンテンツやクリエイティブパターンでは足りないのが現状で、それぞれのユーザーにとって心が動かされる、多様なコンテンツが並んでいてほしい。YCDがその一翼を担いたいですね。

 ワンスター様には、是非ターゲット設定シートを用いた制作のノウハウを、他の業種やコンテンツへの展開にも試してほしいです。他分野でも大きな成果を残すと予想しています」(宇都宮氏)

 YCDを用いたワンスターの取り組みは、結果重視のダイレクトマーケティングで得た知見をもとに、コンテンツを使った効果的な手法だ。YCD活用の幅を広げる先例として大いに参考にしたい。

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この記事の著者

遠藤 義浩(エンドウ ヨシヒロ)

 フリーランスの編集者/ライター。奈良県生まれ、東京都在住。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経てフリーに。Web、デジタルマーケティング分野の媒体での編集/執筆、オウンドメディアのコンテンツ制作などに携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/09/28 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27061