4. メッセージはユーザーのインサイトから考える
カメムシマンガの「自分が死んだ後も、家族の生活は続く」というメッセージは、マンガのスポンサーであるライフネット生命の「生命保険の大切さを、改めて感じて欲しい」という想いから考えだしたものです。どのコンテンツも、まず課題があって、それに対応したメッセージを決めて、そのメッセージを表現するものを作ります。そのため、メッセージはコンテンツの核となるのですが、これはユーザーを観察して考えます。
カメムシマンガの想定読者は、まだ生命保険に入っていないユーザーです。ではなぜ保険に入らないのか? と考えたとき、自分の死後をちゃんと想像できていないからではないか? と推測してメッセージを考案していきました。ユーザーのインサイトについては様々な考え方がありますが、私はユーザー自身が直視できていない自分の現実や本音、欲望や抑圧を見つけることだと思っています。
コンテンツを通して、ユーザーは既に自分の中にあった想いに気づき、それによってユーザーは中から変化します。逆に言えば、元からユーザーの中にないものを植え付けることは難しいので、あくまでユーザー本位であるべきでしょう。ちなみにカメムシマンガは読者が中国語に訳したバージョンも制作し、中華圏でも話題になっていました。

第一に時間感覚のすり合わせを
解説した4つの原理は、多くはWeb以外のコンテンツでも使われている方法です。Webで最も特徴的なのは、「知っているモノが、別のモノに見えるように表現する(A≠A)」の、フリからオチまでの時間がゼロだということです。Web以外の舞台で活躍してきたクリエイターとWebコンテンツを共同制作する場合は、この時間感覚が異なる場合があります。その場合はまず感覚をすり合わせすることからはじめてください。
なお、例として紹介した企画や物語の内容は、スポンサーと直接話しながら作り上げていきます。実はカメムシマンガのアイデアの半分はライフネット生命側が考えたものです。
コンテンツの質はスポンサーとクリエイター、漫画家や映像クリエイターによって左右されるため、実のところ誰とコンテンツを作るかが一番重要かもしれません。