SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

COLUMN

便利なはずの無人売店「Bodega」がSNSで大炎上/企業に求められる「消費者への共感と貢献」とは

何が問題だったのか?

 「Bodega」というサービス名は、スペイン語の言葉で「お店」の意味。それだけでなく、アメリカのいたるところにある軽食や日用品を取り揃える「地域密着型のなんでも屋」も指す。

 主に南米系移民が家族で経営。アメリカ国勢調査局による2015年の報告では、ニューヨーク市内とその周辺ではコンビニエンスストアの数が「約900」だったのに対して、Bodegaはなんと「約6,500」というから、いかにアメリカ人の生活に浸透しているのかわかるだろう。

ニューヨーク市内のBogoda。軽食も提供するこの店は平日でも大賑わい(筆者撮影)

 Bodegaは古くから南米系移民人コミュニティーを中心に形成されてきた商業文化。ニューヨーカーはおのおの「馴染みのBodega」を持ち、その店主とのコミュニケーションを楽しみにしている人も少なくない。

 そうした背景から、「無人Bodega」のサービス開始に際しては、次のような厳しい批判の声がSNS上に溢れた。

「ただでさえ生活が苦しい移民の食い扶持を奪うな」
「その棚は淹れたてのコーヒーも提供してくれるというのか?」
「私はテクノロジーの力には頼らず、今まで通りのBodegaを支持する」
「棚の形をしたBodegaだなんて、彼らはBodegaの根本的な役割をはき違えている」

 Bodegaでは「看板猫」が飼われていることも多く、「Bodega Cats」は店の顔として常連客たちに親しまれている。インスタグラムでBodega Catsの写真を投稿し、10万を超えるフォロワー数がいるアカウントもあるほど。そんなBodega Catにインスパイアされたと思しき、黒猫の絵柄をあしらった同社のロゴもやり玉に挙げられた。

Bodega Catが入り口で客を迎える(筆者撮影)

事前調査では97%の人が事前調査で「受け入れる」と回答

 批判が相次いだ後、前出のPaul氏は同社のブログに謝罪文を掲載。「Bodegaは従来のBodegaビジネスを駆逐しようとは一切考えていない」と前置きした上で、「Bodegaという社名が誤解を招くリスクがあったことは承知していたが、まさかここまでの批判を受けるとは思っていなかった」と、理解を求めた。

Paul氏が掲載した「謝罪ブログ」

 「まさか」と彼が言うのは、彼らは社名を決める際、アメリカ国内の南米系移民人コミュニティーに事前調査を行い、「97%」の人がBodegaという社名を受け入れると回答していたからだ。

 たしかに従来のBodega経営者たちからは、調査結果とは真逆の声が聞こえてくる。ニューヨーク市内で1日に5,000人もの客が訪れる繁盛店を経営するHan Seo氏は「amNEWYORK」の取材に対して、「僕は常連客の欲しいものは把握しているし、(無人店舗の)Bodegaより速くサービスを提供できるけどね」と話す。

 同じく他の店を経営する男性も、「もし新しいものを試したければ試せばいい。だけど流行らないと思う」。地元密着型で顧客との信頼性を着実に築き、大手コンビニエンスストアやドラッグストアにも打ち勝ってきたからこそ、彼らには自信があるのだろう。

 今の事態は、創業者の二人にとってまさに「青天の霹靂」だったに違いない。事前に行った世論調査と実際の総意とが真逆になった今回のケースは、「トランプ大統領誕生」の一件を想起させる。

次のページ
オリンピックに向け、日本企業にとっても他人事ではない

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
COLUMN連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

橋本 沙織(ハシモト サオリ)

大阪大学外国語学部卒。半導体メーカー勤務を経て、2014年よりニューヨーク在住。フリーライターとしてマーケティング、ITや子育てに関連する情報をネットで紹介する傍ら、フードスタイリストとしても活躍中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2017/10/06 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27142

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング