BtoBにも押し寄せる、デジタルファーストの波
現在、顧客と企業の最初の接点は、デジタルがほとんどであろう。隙間時間にはスマホでSNSのタイムラインを眺め、ふと疑問に思ったことがあると考える前に検索している、といったこともまったく日常的な行動になっている。
そうした、顧客にとっての一番の接点が「デジタル」になってしまったという変化を指す「デジタルファースト」をテーマに開催された今回のMarkeZine Dayで、SATORI株式会社の植山浩介氏はタイトルに「マーケティングオートメーションはもう古い?!」と掲げた。その真意は、マーケティングオートメーション(以下、MA)がブームとして扱われている現状に疑問を呈し、「MAは一過性のものではなく、BtoBのデジタルマーケティングの本質を突いていく概念だという意図を込めた」と説明する。
エンジニアを15年、マーケターを5年経験した植山氏が2015年に立ち上げたSATORI株式会社は、MAツール「SATORI」を開発・提供。後発ながら今年3月時点でMAツールの認知度ランキング2位を誇っている(出典:2017年3月 ジャストシステム)。導入企業は現在200社ほどで、中小企業や大企業の中の小規模事業のようなリソースが少ない組織で主に活用されている。何より、自社が同ツールを使って認知度を獲得するところから事業を拡大してきたノウハウが、導入企業に評価されているという。
植山氏は「デジタルファーストな顧客に対するマーケティングが、今の本質的な課題です。BtoBだと『営業マンを呼ばないだけでなく、資料請求さえ行わなくてもオンラインで情報収集して判断できる』という顧客が増えている、つまり顧客にとっての最前面にデジタルが来ているのは非常に厳しい状態です」と切り出し、次の2つのデータを提示する。
デジタルで接触する顧客の97%が匿名という現実
植山氏が提示した2つのデータのうち、ひとつは顧客コミュニケーションの85%が、メールやWebサイトやネット広告などの非対面の接点で展開されるようになること(出典:2017年 ガートナー社)。もうひとつは、Webサイトを訪れる人の97%が、MAツールを使っても匿名状態であること(出典:2017年 SATORI)。つまり、既存のMAツールは、実名がわかって“潜在顧客化”してからの顧客育成をするものが多いが、これを導入したところで、97%の匿名見込み顧客に対しての育成はできないのだ。
一方、先の「MAは古い?!」という提示は、そもそものMAの発祥を考えると頷ける部分も大きい。植山氏によると、20年前にアメリカで誕生したMAは、広大な国内で顧客と会えない状況をどう埋めるかという観点でつくられたもので、デジタルファーストを前提にしていない。「見込み顧客を発掘して育成し獲得する、という行為は汎用的だが、それがデジタルを前提にしていない点で今のMAツールは限界がある」と植山氏。
これらを踏まえると、MAツールはデジタルマーケティング実践の強力な味方になるようでいて、実はMAツールだけでは不十分。先のデータからわかるように、実名化して資料請求やセミナー参加などアクションを起こす顧客は見込み顧客全体のごくわずかだ。
「本当は、その先に何十倍も潜在顧客がいることをぜひ理解していただきたいと思います」と植山氏。デジタルファーストの顧客を捉えるには、MA以外の要素を入れる必要があるという。その要素であり、実際にSATORIが自社のBtoBマーケティングで重視しているのは、いかに早くデジタルで潜在顧客に接触するかという「ファーストタッチ」の視点だ。