潜在顧客が課題を感じた時点で“ファーストタッチ”
実際、植山氏は自身が最近経験した“ファーストタッチで意志決定が変わってしまった”事例を紹介する。
社員一人ひとりの営業力や顧客提案力を上げたいと考えていた植山氏は、ツールとして営業支援システムや何らかのグループウェアの導入を想起した。そこでまず、いくつかのキーワードで検索すると、リスティング広告やコンテンツマーケティングの記事などで「チャットツール」という思いもよらなかった候補が浮上。関連ブログなどを閲覧するうち、チャットツールのほうが適していると思い始め、具体的に検討することに。4社に資料請求をして比較表にし、2社に絞り込んだ上で、植山氏の場合は周囲に実際のユーザーなどがいたため「最後まで営業担当者に会うことなく決めてしまった」という。
これをチャットツールの販売者の立場からみると、最後のイレギュラーな展開を除いても、最後の2社に入らなければ会ってもらえないということになる。手前の4社に入らないと、戦いにもならない。「売る側は、会って説明しないとわかってもらえないと思っていますが、顧客側は『会わなくてもネット検索で自分が欲しい情報は収集できる』と思っているのが常です。その乖離は非常に大きい」と植山氏。
また、そもそも最初の検索段階で「グループウェアにしよう」と思われたら、チャットツールの販売者は何も手を打つことができない。その時点から、実は努力すべき段階が始まっていたのだ。「どうすればいいかというと答えは一目瞭然で、最初に顧客が課題を感じた時点で、ファーストタッチすべきなのです」(植山氏)
ファーストタッチで重要なのは“啓蒙活動”
では、具体的にSATORIではどのようにMAツール購入の見込み顧客にファーストタッチしているのだろうか? 植山氏は「MAのことを知らない人にMAを伝える」ことがポイントだと解説する。何かしら課題を持った瞬間に、「それは実はMAで解決できるんですよ」と啓蒙しているのだという。
たとえば「営業チームを強化したい」と思ったとき、普通は「営業研修」や「採用」という発想になり、そうしたキーワードで検索される。そのとき、SATORIでは「個人の力に依存しない会社としての仕組みをつくりませんか?」という切り口で、MAを推していく。
「営業の仕組み化、つまりマーケティングなのですが、それを強力に支援するMAツールというものがあることを伝えるために、課題を抱えた時点で接触します。そこでまず『会社としての営業力を高められるツールがあるんだ、これは再現性がありそうだ』と気付いてもらって当社の認知を獲得し、潜在顧客化することができます。経営層などには特に有効です」(植山氏)
そこからは、関連コンテンツなどを提示して興味喚起を図り、最後に資料請求やセミナー誘導などの行動喚起をしているという。
ちなみに他のMAツールベンダーでは、施策が二極化しているのが現状のようだ。ひとつは多額の広告費を投じて大手メディアに純広告を出稿し、潜在顧客が興味を持った時点でのコンバージョンを狙う。もうひとつは、逆にニーズが顕在化している顧客だけを対象に「MA」の検索時にリスティング広告出稿やSEOを行う。ただし後者は既にMAでのCPAが4万円ほどになっており、これも手頃な策とはいえないだろう。