SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

アドフラウド、フェイクニュース、フィルターバブル……ネットメディアの問題に日本はどう立ち向かうか


社会的に重要なニュースを、多様性をもって届ける

——ECサイトのレコメンドのように、情報も個人の主義や関心に偏って提示されてしまう時代ですが、ニュースを届けるプラットフォームとしては「多様性」が大きなポイントになると。

ジャロスロフスキー:そうです。ユーザーが自分自身の信念の延長上だけで情報を求める使い方ではなく、こういう側面もある、ああいう側面もあるのだと気付けるような接触を可能にすることが大事です。

 私はレポーターたちに、いつも「ニュースの定義とは何か」という話をしています。ひとつは、人々が興味を覚える内容であること。もうひとつは“News”ですから当然、ユーザーや自分自身がまだ知らない新しい情報であることです。もちろん完璧なパブリッシャーはいないので、正しいと思って報道した情報がひっくり返ることもジャーナリズムにはつきものですが、社会的に重要だ、人々が知るべきだと考える“ニュース”を多様性をもって届けることが非常に重要だと考えています。

——なるほど。その、情報の正しさという部分は、スマートニュースではコンテンツ単位で、品質などを確認するアプローチを取ることで担保しているわけですね。

西口:精査はたしかにシビアですが、安全性を求めるゆえに絞り込みすぎて、我々自身がフィルターバブルをかけてしまわないようには注意していますね。

 その兼ね合いはチャレンジングですが、画面の小さいスマートフォンが主流になって特に、重要性が増していると感じています。以前は紙媒体でいろんな見出しを一気に見たり、書店で多様な情報に触れたりするのが当たり前で、PCもまだ画面が広かったのでそこまで視野が狭くならなかったと思いますが、スマホだとこの面積で、しかも以前はみずから検索していたネットの使い方もどんどん受動的になっている。なので、多様性という観点はこれからますます求められると思います。

問題を見据えて広告主が持つべき視点は

——コンテンツや情報を集約するプラットフォームが浸透すると、ユーザーは発信元をあまり気にしなくなるのではと思いますが、その点はいかがですか?

西口:その傾向もあるでしょうが、一方でこんな現象もあります。最近テレビCMで英語圏のニュースを原文で読めることを訴求しています。ユーザーはSmartNews経由でCNNやBBCのニュースに接触し、その後気に入ったメディアのチャンネルを登録して、継続的にコンテンツを読んでいることが数値でも明らかになっています。ユーザーはちゃんと発信元を確認して、メディアの情報を取得しており、この現象はパブリッシャーにも喜ばれています。

——情報の質が良ければ、メディアへの信頼性は高まるのですね。

西口:そうですね。パブリッシャーと我々は、両輪です。これまでSmartNewsはプロダクトの充実に心血を注いできて、広報や広告営業が追いついていないので、今後は日米で強化して、パブリッシャーと広告主へも還元していきます。

——では最後に、西口さんには広告主や広告会社、パブリッシャーに期待することを、ジャロスロフスキーさんには日本の広告業界へのメッセージをいただけますか?

西口:私は長く広告主側にいましたが、アドフラウドやフェイクニュース、フィルターバブルの問題は多くの経営者やマーケターに知られていません。残念ながらネットの世界に完全な自浄作用は期待できませんが、このまま悪意ある場やプレーヤーにお金が流れていくと、オープンであるのがいちばんの特長のインターネットに政府の規制が入る事態にもなりかねない。現状と問題をまず認識していただき、広告を含めて健全な情報接触の環境をともにつくれたらと思います。

ジャロスロフスキー:アメリカでは日本に先駆けて急速にデジタルメディアの問題が噴出し、業界だけでなく一般のユーザーも混乱に陥りました。日本はアメリカの例に学んで、広告主はプラットフォーマーにもっと透明性を要求し、これらの問題が深刻化するのを避けていただきたいと強く思います。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2017/11/14 09:19 https://markezine.jp/article/detail/27364

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング