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アドテック東京 2017

人がまじめに一生懸命やることを人は喜ぶ〜糸井重里氏と唐池恒二氏が語ったこと【アドテック東京2017】

 「今日は、皆さんが普段この場で話されている話と逆の話になりそうですが。自分たちの考えていることを、逆のことを言っていそうな人のところでしゃべってみたいなと思いました」と語るのは、ほぼ日の糸井重里氏。10月17、18日に東京国際フォーラムで開催された「アドテック東京2017」、夕方のキーノートには糸井氏と、「ななつ星 in 九州」を手がけたJR九州の唐池恒二氏を迎えた。日々、マーケターの皆さんは一体何に向き合っているのだろう? 「気」「生活」「人間」というキーワード、それにまつわる両氏からのメッセージをお届けする。

なぜ、ななつ星を見ただけで人は泣くのか?

(左)株式会社ほぼ日 代表取締役 糸井重里氏
(右)九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長 唐池恒二氏

糸井: 唐池さんとは、以前テレビ番組で「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)に乗る機会があって、なんだかこの列車について板についた自慢ばかりする人がいるなぁと思ったら唐池会長だった、というのが出会いでした。そこから唐池さんの本を読んだり、何度かお会いしたりするうちに、自分と近いことを考えている方だな、ちょっと冗談を挟みたくなっちゃうところも似ているなと。唐池さんは、僕らに共通する何かがあると思っていましたか?

唐池:いやいや、もう糸井先生と私は比べようもないですから。

糸井: ね、こういうことを言ったりする人なんですけど。僕自身が今回なんの話を唐池さんから聞きたかったかというと、メディアをつくるということです。いわゆるマスメディアというくくりや、最近はネットも新しいメディアとして常識になってきたといわれますが、僕はメディアとはつくるものじゃないかと思っています。

 自己紹介を兼ねて、今年の3月に六本木ヒルズで開催した「生活のたのしみ展」をご紹介しますね。これは展覧会の形をした臨時の街づくりみたいな企画で、生活の中での「たのしみ」を全部集めよう、と組み立てたものです。たとえば僕は、普段からmont-bellの折りたたみ傘を愛用しているんですが、この場でキャンプ用品じゃなく傘の店として売れば、皆さんが喜んでくれるんじゃないかと思ってモンベルに声をかけたりしました。

ほぼ日が今年3月に開催した「生活のたのしみ展」の一コマ。
雑貨や絵、桜の木、様々な食事まで、たくさんの“たのしみ”が集まった。

糸井:メーカーさんや作家さんが、このメディアに参加してほかの人たちと一緒に何かをやっていく。そういうことが、この媒体だからできますと、ひとつずつ編集し直して持ってきました。次は11月中旬に、倍の広さで予定しています。さあ、ここにどんなコンテンツが乗ってくるでしょうか? というのが僕のメディアをつくるやり方です。唐池さんも、たくさんやってこられましたね。

唐池:今日のテーマは糸井さんから「メディアをつくる」だと聞いて、もう帰ろうかなと思ったんですけど。でも、糸井さんが盛んにいわれるのは、私がつくったななつ星こそメディアじゃないかと。考えてみると、そうかあ、あれはけっこう地域やお客様、あるいは我々運営側の人間が、それぞれコミュニケーションを図る場だなと。ひょっとしたらメディアをつくるという、そのひとつなのかなと思いました。

 ななつ星は、一昨日の10月15日で走り始めて満4年になるのですが、2年目に「日本PR大賞」というのをいただきました(※2014年度 日本PR大賞 パーソン・オブ・ザ・イヤー)。それまでPRとは広告や宣伝という意味で受け取っていたのですが、これはパブリックリレーションというんですね。公共との関わりで、地域と関わって新しいものをつくりあげたということで表彰の対象になった。ななつ星もパブリックリレーションなんだと気付きました。 

糸井: ななつ星が通ると、線路沿いで地域の皆さんが手を振ってくれるとうかがいました。

唐池: そうですね。4年前に初めて走らせたとき、筑後川の鉄橋の下の河原に福岡県うきは市の方が177名、集まってくださって、そのうち半数の方がななつ星を目にした十数秒で泣かれたんです(参考記事)。そしてその半分は、号泣なんですよ。これは説明がつかなかったんですね。そうこうしてますと、お客様の中からも旅の間に必ず3回か4回、多い方ではもっと、お泣きになる方が出てくる。

2013年10月に走り始めたJR九州の「ななつ星 in 九州」。
内装や食事、サービスの一つひとつにまで手が込んでおり、1年先まで申し込みが終了している。

唐池: なんでかなと考えていたら、我々ななつ星を手がける社員や、デザイナーの水戸岡鋭治さん、もう水戸岡さんなくしてはななつ星は誕生しませんでしたけど、それから車両をつくった職人さんや、客室乗務員に応募して着任してくれた人、そういう皆の思いやかけてきた手間が、ななつ星にぎっしり詰まっているからだと。それが「気」というものをつくり上げているんだと思ったんです。

糸井:「気」ですか。気合の気。

唐池:そうですね。「気」が、見た人や乗った人に感動のエネルギーとなって伝わっているんです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/11/09 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27398

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