お金もコネもないけど、東北に桜を届けたい~参加者自ら企画を遂行
松澤:イベントの運営では、どこまで森ビルが関わりどこからボランティアの方へ任せていますか?
佐藤:前日までの登壇者選びやイベントの告知、イベント後の動画のアップなどは弊社で行いますが、当日の運営はボランティアの方と一緒に行っています。ただイベントに参加して学びを得たいというだけでなく、参加者や登壇者とつながりたい、応援したいと思ってくださるオフィスワーカーの方々が、椅子の用意から司会進行まで手伝ってくれます。
たとえば、イベントのスピンアウト企画として3周年イベントを開催した時は、「Hills Breakfast」のオーディエンスが40人くらい集まって実行委員会を組成し、4ヵ月くらいの準備期間をかけて、イベントを実現させました。皆さんお仕事の合間で手伝ってくださいましたので、この期間はきっと多忙を極めたと思います。
松澤:六本木ヒルズを飛び出したプロジェクトはありますか?
佐藤:東日本大震災の後、あるお花屋さんが登壇され「私にはお金もコネも力もないけど、被災地に桜を届けたい」と自分の想いを発信されました。その想いに会場の参加者が感銘を受けて、実際にプロジェクトを遂行したことがありました。
具体的には、「Hills Breakfast」運営のボランティアをしてくださっているオフィスワーカーが事務局長となり、募金の手配などをしてくださったようです。このようなプロジェクトは、この事例だけに限りません。
「Hills Breakfast」は思いが伝わりやすいという特徴があって、これには参加者の積極的な姿勢がとても関係していると思います。イベントで登壇者や参加者を支援したいという仲間が現れ、実行に発展するパターンが多いんです。
松澤:私も一度、「Hills Breakfast」に登壇させていただいたことがあるのですが、参加者が積極的であることは非常に感じました! イベントで出会った人たちの熱量がすごかったですね。
「Hills Breakfast」から派生した「ヒルズブ!」

松澤:「Hills Breakfast」から派生して、他にもいろいろなコミュニティがありますよね?
佐藤:はい。参加者の中でも特に熱度の高いオフィスワーカーが「ずっと欲しかった大人の遊び仲間、遊び場を作ろう」と言って盛り上がり、「ヒルズブ!」を結成しました。それぞれ違う企業に勤めていた六本木ヒルズのワーカーたちが中心になり、自主的につながりはじめたんです。
松澤:派生コミュニティに会社がどこまで関わるか、あるいは許容するか否かは、コミュニティを運営しているとよく直面する問題です。森ビルとしてはどういうスタンスで関係していましたか?
佐藤:会社の事業ではなく非公式な活動なので、関係性を探りながら様子を見ていました。「ヒルズブ!」を自走させるために我々が会社として関与することはありませんでしたが、「活動は応援したい。社内調整はするから、何かやりたい時は事前に相談してほしい」ということをきちんと伝えていました。
たとえば、テレビCMの撮影などの営利活動を森ビルの中で行うときは、使用料金が発生します。なので「勝手に動画を撮影したら使用料が発生するけど、事前に伝えてくれたら最大限できることは協力する」というように、既存のルールからコミュニティが逸脱しないような舵取りを行っていました。
元々「Hills Breakfast」からの信頼関係があったからできたことかもしれませんね。そのうち、森ビルで受ける取材を「ヒルズブ!」に受けてもらったりするなど、協力し合える関係が築けてきました。