コミュニティの目的・存在意義は変化するもの
松澤:コミュニティの立ち上げから7年経ちましたが、活動に変化はありますか?

中:最初はオフィスワーカーの活性化のために始めたイベントでしたが、現在は六本木ヒルズのオフィスワーカーは3割程度に留まり、外部から参加される方が多くなっています。一方で毎回欠かさず来てくださる方もいらっしゃいます。運営ボランティアの入れ替わりもありますね。
イベントの参加者が変わってきているので、イベントを今後どう改善していくかということも考えています。実は、「Hills Breakfast」は当初の目的を達成できたのでは? と考えたこともありました。オフィスワーカーの士気を上げて、街自体を活性化させることはできたので。ですが、時代の変化やテナントの入れ替えによるワーカーの変化に合わせながらイベントの目的なども変えていき、より良いイベントにしていこうと思っています。
松澤:「Hills Breakfast」を六本木以外の街で行うことは考えていますか?
中:街ごとに掲げているコンセプトが異なるので、そのまま別の場所で行うことは考えていません。もちろん突発的に開催することはあるものの、最終的に目指す街のイメージが違うんですよね。なので街の課題も異なりますし、それに合わせて解決策も変わってきます。
松澤:今後の展望についてもお聞かせください。
中:六本木という街はこれからも変化し、成長し続けています。7年前とは違うテナント企業も沢山入っていますし、「Hills Breakfast」を終わりにすることは今考えていません。核である「オープンマインド」「アイデアの生まれる街」を意識しながら、活動していきたいと思っています。
今回のポイント/オフラインイベントを継続させる意義
六本木ヒルズのコミュニティ運営はまず、ミニマムスタートであったことに特徴があります。大企業でありながらも「まずはやってみる」というくらいのスタンスで挑戦することが必要だと言えるでしょう。
また今回のケースは、オフィスワーカーの潜在ニーズを掘り起こしたことも注目すべき点です。オフィスワーカーから具体的なニーズや声を基に企画した施策ではなかったにも関わらず、結果としてこのイベントは愛され、沢山の人々をつなげています。街が掲げるコンセプトに基づいた長期的なコミュニティマーケティング施策であり、かつターゲティングができている好例ではないでしょうか。
WeWorkなど世界的な流れを見てもわかるように、人々は利便性だけに動かされるものではなく、“つながり”に価値を感じてアクションを起こす傾向があります。WeWorkでは、コワーキングスペースを活用することで、働くことへの充足感を得ることができます。この充足感は、それぞれがその場に自分が存在する意味を理解していることが前提として重要であり、それは社内での「役割」もありますが、社外の人たちとのつながりから生まれることもあります。
今回紹介したオフラインイベントでは、登壇者も参加者も自分の役割を見出すことができています。この点は、運営ボランティアの方の多さ、参加者の熱量からわかるのではないでしょうか? そしてミニマムスタートで始めた活動は、継続的に六本木ヒルズのブランドイメージを表現する場になり、多くの人々が朝早くからわざわざ六本木に来る“目的”になりました。
オフラインのイベントは時間も手間もかかります。ですが、フォーマット化して登壇者などコンテンツを提供する側のクオリティを高く保つことで、イベントの連続性自体がブランド価値につながります。朝活など同じ類のイベントもある中、今でも人を集め続けられているのは、街全体を盛り上げたいという“コンセプト”がぶれないから。
そして自主的にコミュニティに参加してくれる人達や派生コミュニティを“協力者”にすることで、イベントやコミュニティ全体を盛り上げることに成功しているのです。