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アドテック東京 2017

人が育つ仕組みがあればブランドは継続する 和田浩子氏が語る人材育成の真髄

戦略とは、ブランドが目指す目標へ向かうための地図

 この仕組みをベースに、和田氏はマーケティングのステップを解説する。最初の一歩は、エンドユーザーを理解し、自社および他社製品を理解すること。消費者の暮らしが大きく変わる中、彼らを理解するのは簡単ではないし、前述のようにマーケターの働きかけで消費者の暮らしや意識が変わるなら、変わった彼らの意識をまた理解する必要がある。「大変なことだが、とても重要なこと」と和田氏は強調する。

 次に掲げるのは、ディマンドクリエーションの概念だ。自分たちのブランドがまだ世に出ていない場合、既に他のブランドを使っているユーザーにニーズを感じてもらい、こちら側を選んでもらうこと。その際には、ポジショニングを規定することが欠かせない。「ポジショニングとは、存在するスペースはあまたあれど『私はここにしかいない』という決意の表れ。皆、決定するのを怖がりますが、絞り込まないとマーケティングになりません」と和田氏は強調する。

 たとえば和田氏がダイソンの日本支社長を務めていたとき、まだわずかだったユーザーを追いかけて購買理由を分析すると、花粉症などのアレルギーの症状改善に役立っていたことがわかった。こうした「買わざるを得ない人」を見つけ出し、訴求すべき主たるベネフィットを抽出して、ブランドのキャラクターを決めていく。

 その上で重要なのは、目的と戦略だ。「目的は、売上や市場シェアといった形で見据えているでしょうが、戦略がないブランドが多い。戦略とは、社員や関わるスタッフを同じ方向に向かわせる、そのブランドが目指す遠い目標に対して進むためのマップです。そしてその中には、最低でもひとつふたつ、チャレンジングだけれどイノベーティブな施策を入れてください。そうすると、ブランドは育ちます」。

周囲の人を育てて初めて100点満点に

 エンドユーザーと製品を理解し、ポジショニングを決定し、目的と戦略を明確に施策を実施する。その結果、自社の施策がうまくいけば顧客の生活が向上したり、意識が変わったりするから、また改めて顧客の理解に努める——。ブランド育成の成功の鍵は「本当にこのくらい」と和田氏は述べる。一方で、ブランドは決して企業の持ち物ではなく、消費者一人ひとりの中に刻まれるものという側面もある。

 「よいブランドを作るのには何年もかかりますが、失うのは1日で十分。メディアが報じれば30分で失われるでしょう。“ブランドになる”のは素敵なことですが、維持するのも大変なことです」(和田氏)

 では、成功が持続しない理由とは? 和田氏は、「そのように仕組まれていないから。今日参加されている方の中にも、ブランドの成功を『自分が加わったから成功した』と思っている人がいるでしょう。でも、その人が抜けるとうまくいかなくなるのは、属人的な成功です。マーケティングを成功させるだけでは、50点。そのノウハウを部下や周囲の人に授けている、つまり周囲を育成していて初めて100点満点になります」と指摘する。

 和田氏は、成功を持続するための必要条件として、勝つための戦略、優れたリーダーシップ、優れた人材、優れたシステム/仕組み、そして一貫したプリンシプル(行動規範)の5つを掲げ、「この中で“人”ってひとつだけです」と強調する。

 「優れた人材が、戦略を立て、リーダーシップを執り、とすべてを動かしていきます。人に、よるんです。つまり人がしっかりしていない“なんちゃって”だったら、他の条件もすべて“なんちゃって”になってしまうんです」(和田氏)

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27659

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