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アドテック東京 2017

人が育つ仕組みがあればブランドは継続する 和田浩子氏が語る人材育成の真髄

業務と人材育成を同等に評価する

 ここで、ブランドマネジメントの仕組みにおいて重要である前述のマルチファンクショナルチームに立ち返り、マーケターだけでなくこれらの関連部門の皆が優れている必要があると和田氏は指摘する。リーダーシップや戦略的思考、コミュニケーション力など、マーケターに求められるスキルのいずれもが、先のブランドを支える皆にも求められるということだ。

 和田氏が列挙するスキルの中には、リスクを負う力や情熱といったワードがあるのが印象的だ。「ある程度データを取りながらも、最後は崖から皆で飛び降りるようなリスクを負うことができる力も大事です。そしてブランドを育てるには、数々の困難がともなうので、初めてのことに挑戦して得られるその先を楽しみにすること、勝利への情熱が重要だと思います」と和田氏はその理由を語る。

 これらは、一概に研修では教えられない。そこでOJTがある程度機能するが、仕組みとしてのポイントについては「まず人材育成がすべてのマネージャーの責任になる、シェアード・レスポンシビリティにならないといけない」と和田氏は述べる。

 もうひとつは、業務と人材育成を同等レベルに扱うこと。業績が厳しいと、人材育成どころではないという声も聞かれるが、むしろ売上の責任と部下の能力開発を両輪として重視し、後者も正当に評価することが必要だ。

 「そうすればマネージャーも業務だけに追われず、若いジュニアの人にオンザジョブで仕事をしてもらい、ちょっと失敗したりしながら学んでいける。そしてスキルがついてきます。すると次のキャリアプランも描けて、先へ進みたいならまたマネージャーがヘルプして育てたり必要な研修を受けたりと、成長していけます」(和田氏)

タンポポの種が飛んでいくように

  加えて和田氏は、研修制度はぜひ社内でつくりあげてほしい、と語る。たとえばP&Gの研修制度では、講師は全員が社内の人だという。教えることによってマネージャーのスキルも上がるため、社内講義制度の意義は大きい。

 これらの人材育成の仕組みを総合して、マネージャーの責任監督下でOJTをし、能力開発を売上と等しく評価していくと、上司にも部下にもよい循環が生まれていくというわけだ。

 和田氏は、自身はこうして人を育ててきたが、その人たちが同じように育てているかどうかは別問題、と語って笑いを誘う。講演を熱心に聞く最前列の参加者に目を向け、「私がこの人たちのほとんどを見つけて、この人いいなと思って雇って、私や他のいろんな人が育てたんです。その人たちが今度また人を育ててくれれば、小さなタンポポの種がひゅーっと飛んでそこで芽を出すように、新しい場所で同じように人が育っていく。冗談なしに、そうなります」と力を込める。そして、自身の経験から得たという次の言葉で講演を結んだ。

 「成功は成功を生み出さない。成功体験はじゃまになるといいますが、成功から学べば、次の成功を生み出します。失敗は、もちろん成功にはなりませんが、そこから学べば成功を生み出せますし、同じ失敗はしないでしょう」(和田氏)

 講演後、会場からはいくつも質問が上がったが、特に採用のポイントについての問いに「学生の活動の中に自社のDNAの芽があるかどうか」と和田氏は答える。それを見つけるには、まず面接官の側が相手の目を見てその人を理解できる、自分を埋没させるマインドセットが必要だという。その上で「マーケターはファイナンスではない、感じることができないといけないから、人間味のある風や色を感じさせる側面が大事だと思う。そういう人がビジネスライクに戦略を考えていこうとすると、多様性が生まれる。人は昔も今も変わっていないので、人間らしい感度がある人、音の世界や文字の世界を感じ取れる人を見つけるといいのでは」とアドバイスを送った。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/26 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27659

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