半年で辞めるのってダメじゃないですか?
――大企業である資生堂を辞めるにあたって葛藤はなかったのですか?
北見:葛藤はありましたね。正直なところ、大企業からスタートアップに移るとなると福利厚生の面でも違いはあるし、世間体の差も感じないといったらウソになります。残していく仕事の大きさもありましたし。それに、日本の社会人として半年で会社辞めるってダメじゃないですか?
ただ、それを理由に転職しないのも大人になりすぎというか……。最終的には悩んだときは流れの激しいほうに進むべきだと思い、決断しました。それから2017年の2月にantenna*のロゴに「TOKYO* LIFE」というタグラインが追加になったんですけど、それもすごく気に入っていて。

――え? どういうことですか?
北見:ワコールにいるときにグライダーアソシエイツの人から聞いていいなと思っていたのですが、なかなか共感してもらえなくて……。たとえば、原宿で流行っているものが全国に広まっていくというのはよくある話で、東京がトレンドの発信源になっているのは一つの事実です。
2020年の東京オリンピックに向けて、「TOKYO」は場所を表す言葉ではなく、ある意味で憧れを対象ともなる聖地を示すようなキーワードになっていくと思うんですよね。そういう雰囲気が出ていてすごく魅力的だなぁと感じていたんです。しかも、antenna*がこれから「行動喚起」型のアプリにモデルチェンジしていくという話もあって、おもしろいことができそうだなと。
広告主もふんぞり返っていちゃいけない
――北見さんといえば、去年からFacebookでオリジナルのハッシュタグ「#CITYBOY」をつけた、ある種のセルフブランディング的な活動を行っていますよね。自作のシールを配ったり、オリジナルTシャツを着ていろんなマーケターと会って、その様子を投稿したり。それも「TOKYO* LIFE」の影響があったんですか?
北見:それ聞いちゃいます? 影響もありますが、実は結構考えてやっていたんですよ。SNS担当として、中の人自身が楽しそうに使っていないと企業アカウントでもいい企画作れないと思っていました。それぞれの特性を理解して、ここまではオッケーでここからはやっちゃいけないというラインとか、やっぱり自分でやってみないとわかりません。
Instagramでも「1ヵ月で◯◯人のフォロワーを増やす」とかもやってみました。そうすることで、インフルエンサー起用の基準とかが肌感覚でわかってくるようになります。
オリジナルハッシュタグを使った活動をFacebookでやっていたのは、Twitterだとそういったセルフブランディングに取り組んでいる人がたくさんいて埋もれてしまうためです。Facebookだと見るのは基本的に友だち界隈だけですので反応が読みやすいというのもあります。
“広告主”であっても、ふんぞり返っていたらお客様を喜ばせることはできません。自分でやってみせることが大切かなと。「やっているんで知っています」という感じにならないと。