欧米のニューロリサーチ市場は1,000億円規模に
MZ:昨年、国内でニューロマーケティングのパイオニアといわれるセンタン社と業務・資本提携し、続いて子会社化されたのも、この領域を強化していく一環ですね(プレスリリース)。
原:そうですね。先ほど生体データの解釈の話をしましたが、マーケティングリサーチへの実用化はまだまだ発展途上なので、たとえば当社のリサーチャーがニューロデータを簡単に解釈できるほど簡素化・パターン化はされていません。その実現も視野に入れながら、センタン社の研究員や監修に入っていただいている大学教授の協力を得て、研究と実用化を両輪で進めている状況です。
MZ:ちなみに、この領域は欧米のほうがかなり進んでいると聞いたのですが、市場規模はそれぞれどの程度なんでしょうか?
原:国内のマーケットは現状数億~十数億程度、対して欧米は1,000億円あると言われています。欧米では大手企業を中心に、家電製品のUI/UX改善や、自動車のデザイン評価などに使われているようです。
ただ、この1年間ニューロ領域に集中的に取り組んで、クライアントの具体的なニーズを体感していると、国内でも急速に伸びるポテンシャルはあると実感しています。
MZ:なるほど。では具体的な事例に入る前に、そもそもニューロリサーチとは何か、教えていただけますか?
原:よく脳波だけを測ることだと誤解されるのですが、対象は脳波を含めた神経活動全般です。心拍や皮膚電位、その他にもたとえば唾液でストレスを測定したりもします。こうした、人の無意識から生じる反応を用いて、行動原理や心理を推測する手法がニューロリサーチです。
脳波でわかる注目度合いや理解、好印象の有無
MZ:たとえば、どんなことがわかるのですか?
原:脳波について紹介すると、ここに注目したという「注意・興味」、使いやすさや操作性がわかる「認知負荷」、その他にもポジティブに感じているかネガティブに感じているか、あるコンテンツに対する「共感度」などがわかります。
たとえば店頭の買い物客の行動モデルとして「ストップ(立ち止まる)・ホールド(手に取る)・クローズ(購入)」というステップがありますが、注意を引けるか、手に取りたいというポジティブな気分になるか、といったことを脳波で測ると、パッケージの評価に使えますね。
MZ:その気分の変化は一瞬でしょうから、なかなか自分でうまく言えそうにないですね。商品の使い心地なども言葉にしづらいですが、使っていて気分がいいとかイマイチというのは確実にありますし。
原:そうですよね。たとえば自動車だと、乗り心地や運転のしやすさを回答してもらうのは難しいので、ニューロリサーチが使われています。
また、こういった調査は積極的にPRにも使われています。具体例を挙げると、昨年婚活に使えるカラーコンタクトレンズを提供する企業のPRで、ニューロリサーチの結果が活用されました。内容としては、結婚願望のある独身男性16名(26歳~39歳)を対象に「女性が『婚活に使えるカラーコンタクトレンズ』を装着すると、男性からの好意を持たれやすくなるか?」を調査しました(調査結果詳細)。
人の印象は出会って3~5秒でほぼ決まると言われ、これは「適応性無意識」という心理反応の一つです。婚活ではこの3秒勝負の第一印象をよくするために、様々なサービス・商品があります。
今回の調査で、婚活に使えるカラーコンタクトレンズをつけた女性の顔は、裸眼時よりも「適応性無意識」の前である、見て1~2秒の段階(無意識)の時に、男性に対してより魅力をあたえる結果となり、婚活シーンにより役立つであろうことが示唆され、この結果をPRとして活用していただきました。