検索結果が大幅ダウン!コンテンツ施策を強化したワケ
「中古車売買サービスのガリバーは、店頭契約を最終コンバージョンとしています」と語るのは、同サービスを運営するIDOMのマーケティングチームに所属する三井紀子氏。三井氏は、ガリバーのサービスサイトである「221616.com」のコンテンツ施策を担当している。
全国に店舗を持つガリバーへの来店は、直接来店が4割なのに対し、オンライン経由の予約来店は6割にのぼる。この予約来店数とここから生まれる利益を上げることが、三井氏が所属するデジタルマーケセクションのミッションだ。
サイトへの流入は、業界のビッグワードである「買取」「査定」というキーワードの検索からがメイン。それゆえSEOには力を入れていたのだが、コンテンツの質にフォーカスしたとされる検索アルゴリズムの変化にともない、2016年春頃から検索結果の順位が大幅に下がってしまったという。
その検索順位低下は、大幅なサイトリニューアルを進めていた矢先のことだった。IDOMはSEOをより意識したサイトリニューアルが必要だと考え、抜本的なSEOの改革を検討することになった。
「やはり『中古車といえばガリバー』というブランディングへ立ち戻ろうと、コンテンツマーケティングを強化する方針になりました。現在もオンライン施策として、リスティング広告・アフィリエイト広告など幅広く展開していますが、利益率で見ると自然検索経由のコンバージョンが最も高いのです。ビジネスのさらなる成長の一手として、コンテンツやオウンドメディアの強化は必然でした」(三井氏)
Web未経験からコンテンツ制作の担当者へ
しかし先に説明した検索アルゴリズムの変化にともない、既存のコンテンツは検索上での評価が落ちてしまい、コンバージョンにつながらないという状況だった。コンテンツがユーザーの検索意図に応えられていなかったのである。
そこで、IDOMのSEO施策支援を担当していたFaber Companyの井上憲作氏は、IDOM社内で検索意図に応えられるコンテンツ制作体制の構築を提案した。
「お客さまとサービスを一番理解しているのは、クライアントご自身です。質の高いコンテンツを提供するためにも、インハウスでの制作をお勧めしました」(井上氏)
しかしIDOMでは、コンテンツ制作の知見がないという状況。当時、Web未経験でマーケティングチームへ異動してきたばかりの三井氏が担当となり、井上氏をはじめとしたFaber Companyのチームと二人三脚でコンテンツ制作の体制作りからスタートした。
コンテンツマーケ強化に必要なソリューションとは?
SEOを意識したコンテンツの制作には、ユーザーの検索意図を考えてターゲットキーワードを決め、そのキーワードで評価されているサイトの傾向を把握し、ユーザーニーズが高い重要テーマ・トピックからコンテンツ構成案を作るといった数々の工程が必要だ。
しかし、これらの工程にはSEOへの深い知識とスキルが求められ、また膨大な調査分析の作業時間が必要になる。SEOの経験者でも対応しきれない作業があるほど難易度も高い。
さらに、コンテンツマーケティングは継続的にコンテンツを増やし続け、コツコツ改善していくことで成果が出る長期的な施策のため、すぐに成果が見えないことも多い。運用リソースが割けなくなって「なかなか続けられない」という企業も多いだろう。
三井氏のミッションは、「半年間でコンテンツ構成案の作成からライターへの発注、コンテンツのリリースまでのフローを自力で行えるようになる」ことだった。SEOやコンテンツマーケティングの業務は初めてだったという三井氏。不安はなかったのだろうか。
「やはり半年という限られた時間の中で、成果を出せるのだろうかと不安でした。そこでFaber Companyのミエルカを導入し、キーワードの調査分析や選定などのSEOに関わる作業を自動化したのです。
スキルが必要な工程をツールで補うことで、構成案を作るという実務に集中することができました。構成案制作などは井上さんたちにコンサルティングいただきながら、実践を通してコンテンツの作り方を学ぶことができました」(三井氏)
検索キーワードからユーザーの検索意図を読み取る
ミエルカの特徴について、井上氏は次のように話す。
「検索ユーザーに最適化したコンテンツを提供するには、もちろんユーザーの意図を把握し、合致したコンテンツをサイト内に展開するだけでなく、サイト構成まで意識して改善をし続けることが求められます。
さらに、SEOを意識したコンテンツ制作では、検索キーワードからユーザーの検索意図を把握することが重要です。ミエルカは、人工知能も用いてサジェストキーワードや評価されるコンテンツを分析し、ユーザーの検索意図を読み解くヒントを提供するツールになっています」(井上氏)
「検索キーワードから検索意図が見える」とは、どのようなことか。
井上氏によると、ミエルカを用いて検索キーワードを分析していくと「違うワードだが、知りたいことは同じ」「同じようなワードだが、知りたいことは違う」などのグルーピングができる。複雑に絡み合ったそれらを紐解いていくと、ユーザーの検索意図が見えてくるのだという。
「ユーザーがこのキーワードで検索しているときに、何を求めているのかを想像することが大事です。たとえば主軸となるキーワードと一緒に、『画像』や『イメージ』というワードが出てくることがあります。ここから、ユーザーはテーマに関する情報をテキストではなく、分かりやすい「画像」で知りたいのではないか?という仮説が生まれます。キーワードを文字列としてではなく、その背景を知るヒントと考えることができるのです」(井上氏)
半年でサイト流入が32%回復、コンバージョンは204%に
三井氏がミエルカを使いながら、Faber Companyと一緒にコンテンツ制作をスタートして半年経った2017年の1月。さっそく成果が現れる。
「まずサイトへの流入は、私が担当し始めて半年後に32%、1年後には80%回復しました。さらにコンテンツ経由だけでなく、オンライン施策全体でコンバージョンが増えたのです。また自然検索流入が改善したことによって、一番数字が落ち込んだ頃に比べてコンバージョンは204%となりました」(三井氏)
その要因の1つに、「車買い替え時期とタイミングはいつがベスト?」や「海外赴任が決まったら車は売るべき?保管すべき?」といったコンテンツで、ユーザーの細かな検索意図(ロングテールキーワード)にも対応したことが挙げられる。これらのコンテンツはミエルカで導かれた分析結果をもとに制作していった。
また三井氏自身も、顧客のインサイトに対する考え方が変わったという。
「ミエルカの利用や井上さんたちとの取り組みの中で、お客さまが何を考えて検索をしているのかという視点を持つ重要性に気づきました。常にお客さまのインサイトは考えていましたが、検索キーワードからは新しいニーズが発見できるんです。
たとえば弊社がプロモーションで多用している『車 売る』というワード。これと意味の近い『車 売却』というワードがあるのですが、改めてミエルカで検索意図を調べると、ちょっとした違いなのですが、知りたいことは微妙に違う。社内にいると、お客さま心理の発想力が小さくなったり、視野が狭くなってしまったりということがありますよね。そこにミエルカは、新しい視点を持たせてくれるのです」(三井氏)
コンテンツマーケの成果を導くインハウス体制とは?
さらに井上氏は、今回の施策が成功した背景に、IDOMのコンテンツマーケティングに取り組む体制、姿勢も大きいと指摘した。
「まず、1人でも専任の担当者がいることは強みです。長期的な施策になりますので、社内に明確なるミッションをもって推進する担当者がいることが成功の条件になるでしょう。
そして三井さんは、検索キーワードからお客さまの悩みに気づき、その答えを理解し、どのように表現するかをイメージすることに長けていらっしゃいますね。これが質の高いコンテンツにつながっていると思います」(井上氏)
またFaber Companyでは、サイト全体の構造も分析。「検索エンジンにコンテンツを正しく評価してもらうためには、まずサイトの土台を整えることが重要」と、サイトの構造やディスクリプション最適化、重複コンテンツの整理なども併せて提案した。
この提案された施策の中には、システム改修も含む改修コストが大幅にかかるものもあったという。それをお客さま視点で実行したIDOMの「企業全体で施策に取り組む」という姿勢も、早期に成果を生み出した大きな要因の1つだ。
三井氏も「SEOも何も知らなかった自分が成果を出せたのは、ミエルカとFaber Companyのおかげ」と絶大な信頼を寄せる。三井氏は、ただのツール提供のみではなく、ツールを理解し使いこなすためのトレーニングプログラムの重要性を挙げた。
Faber Companyは、導入トレーニングや動画マニュアルといったインハウス(内製)体制を構築するためのサポートメニューを充実させている。さらに、定期的に開催するワークショップ型セミナー「ミエルカ大学」では、コンテンツマーケティングの基礎やミエルカを使ったコンテンツ制作方法、コンテンツ運用開始後の分析・改善の流れを学ぶことができる。
ターゲット層を広げ、ナーチャリングできるコンテンツに挑戦
目標としていた半年で、オウンドメディアの運用をできるようになった三井氏。最後に今後の展望を聞いたところ、よりターゲット層を広げたコンテンツ制作に取りかかりたいと語った。
「これまでは、中古車売買の検討段階に入ったお客さま向けへのコンテンツを増やしていました。次は、リーチできていなかった売買検討の前段階にいる層に響くコンテンツを制作する予定です。顕在層に向けたコンバージョンを意識したものではなく、より潜在的なニーズをもつ層に向けたナーチャリングにつながるコンテンツとなりますから、新しいチャレンジですね。今まで以上に、想像力を働かせたいと考えています」(三井)