即座にアテンションを獲得する「インフィード」

FacebookやTwitterに代表されるインフィードは、フィード上のいちコンテンツとしてユーザーの目に触れるため視聴回数はスケールしやすい一方、興味のない内容であればすぐにスクロールすることもできるため、動画セッション数と視聴時間は反比例の関係となります。動画セッション数のポテンシャルを最大限活かすためにも、動画が再生されて早々のタイミングでユーザーのアテンションを獲得することが鍵となるでしょう。
この点でまず重要になってくるのが動画の構成です。Facebookによれば、モバイル環境ではニュースフィードのスクロール速度がデスクトップ環境と比較して41%も速いとのことですから、ユーザーの目に触れてすぐにアテンションを獲得できるような構成にする必要があり、ポイントとしては以下4つがあげられるとのことです。
・15秒以内にメッセージを伝える
・冒頭にインパクトを持たせる
・ブランド要素を早めに提示する
・投稿の文章を工夫する
次に、動画のアスペクト比を一工夫することも効果的です。以下は横長(Horizontal)、正方形(Square)、縦長(Vertical)の比較ですが、縦長動画はスマートフォンの占有面積が大きいため、ユーザーの注意を惹きつけやすいことが伺えます。
Facebookが北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパで実施した調査によれば、従来の横長、正方形と比較して、縦長動画は広告想起含めブランドリフトに大きく貢献したとのことですので、実際に一定の効果があることも裏付けられています。
画面の専有面積が大きくなることによるユーザーの反応は気になるところかと思いますが、IABによると、縦長動画を初めて見たユーザーも含め、縦長で動画を見れた方が良いと答えるユーザーは8割以上おり、7割以上のユーザーはエンゲージメントしやすいと回答しています。

一方で、すべてのモバイルアプリやウェブサイトでサポートされておらず、かつ縦長動画を作成するためのコストにより、活用できている広告主にも偏りがあるようです。以下はIABのデータですが、映画やテレビに代表されるメディア業界では活用が進んでいるものの、それ以外の業界では活用が思うように進んでいないようです。

動画の構成についてはトライ&エラーを繰り返して最適化を進める必要があるかと思いますが、アスペクト比の変更は比較的取り組みやすいのではないでしょうか?縦長動画に対応できていない広告主も多いとのことですから、試す価値は十分あると考えています。
短尺でのブランデッド・モーメントが鍵となる「インストリーム」

YouTube等の動画プラットフォームに代表されるインストリームについて、Facebookは上記の通りNon-skippable(スキップ不可)とSkippable(スキップ可)の2つにグラフを分けて紹介しています。Non-skippableはスキップ不可のフォーマットのため動画セッション数と視聴時間のカーブは緩やかになっていますが、インフィードと同様に視聴時間の短いセッション数が多くなっていることから、Non-skippable動画の短尺化が一般的になっていることが伺えます。
Skippableについては、視聴時間が一定に達したタイミングで動画セッション数が急激に下降していることが分かるかと思います。Facebookによれば、この形式では5秒以下の動画が最も見られ、尺が15~30秒と長尺になると全体の10%未満にしかリーチできなくなるとのことです。YouTubeのバンパー広告が普及したことで、よりユーザーのアテンションを長尺で維持することが困難になっていることが伺えます。
短尺動画としていまや一般化したバンパー広告について、Think with Googleではいくつか成功事例が紹介されています。パーティーコップ(party cups)のブランドHeftyは以下のバンパー広告を配信し、ブランド認知向上に成功したとのことです(参考記事はこちら)。
クリエイティブディレクションを担当したHavasのKaren GoodmanはThink with Googleの中で次のように語っています。
“When it comes to the six-second format, the challenge is to avoid treating it as a shorter version of a longer ad. We think of the six-second ad as its own branded moment―not a cut-down. Thinking this way avoids the temptation to tell too complex of a story, and it opens the door for branding to be a central part of the moment. It’s clear how that came through in ‘Office Party,’ where the Party Cup is organic and integral to what’s happening.”
(日本語訳)6秒フォーマットの広告を作成するにあたってのチャレンジは、長尺広告の短尺バージョンとして扱うことを避けることです。我々は6秒広告それ自身をブランデッド・モーメントとして考えました。このように考えることでストーリーを複雑化させることを避け、ブランディングをモーメントの中心に置くことが可能になります。パーティーカップがあることが自然でかつ必要な状況の「Office Party」でそれがどのように成功したかは明らかです。
大手電池メーカーのDuracellは動画リマーケティングを利用して、同社の30秒動画を見たユーザーに対して以下を含む複数のバンパー動画を配信し、購入意向の上昇がみられたとのことです(参考記事はこちら)。
本キャンペーンの運用を担当したSpark FoundryのErin Breenは次のように語っています。
“We built ‘Slamtone’ and several other bumper ads, and remarketed them to viewers of our equity-building 30-second ads. Our media strategy was to reach viewers with these longer stories, then reinforce them with quick, hard-hitting six-second ads to keep Duracell top of mind.”
(日本語訳)我々は「Slamtone」を含む複数のバンパー広告を制作し、30秒動画を視聴したユーザーに対してリマーケティングを実施しました。我々のメディア戦略は、すでに30秒動画を視聴したユーザーにバンパー広告を配信することで、常にDuracellが彼らが一番に思い浮かべる電池ブランドであり続けることを補強する狙いがありました。
ブランド認知、購入意向のリフトとキャンペーンの目的は異なりますが、HeftyもDuracellも6秒というフォーマットに合わせた非常にシンプルかつインパクトのある動画という点では共通しているかと思います。6秒というフォーマットに合わせてクリエイティブを制作することが鍵となるでしょう。