膨大なデータ処理を支えた「Microsoft Azure」
しかし、全306試合のデータをありとあらゆる角度から徹底的に分析するには、強固な基盤が求められる。そのために今回両社が採用したのは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」だった。その理由について、西内氏は以下のように解説する。
「当社はデータ分析支援ツールの開発・販売に特化したベンチャーということもあり、まだスタッフも少ないことから、とてもユーザーごとの様々な環境でシステム運用をお手伝いすることができません。しかし、『Microsoft Azure』であれば、膨大なデータの蓄積・活用が簡単に実現可能で、私たちはサービスやインターフェースの開発部分に集中できるのがありがたいですね」(西内氏)
具体的には、「スケーラビリティを柔軟に調整できる点が大変ありがたい」と西内氏は続けた。分析の場合、Webサービスなどのように平常的に負荷がかかるものでもなく、分析時だけ突発的に膨大な負荷がかかる。
そのため、都度都度その負荷に合わせてインフラを整えるのは難しい。しかし、Microsoft Azureであれば、即座にその負荷の変化にも対応できるのだ。これに関し西内氏は「他のクラウドプラットフォームという選択肢もあるが、Microsoft Azureでなければできなかった」と高く評価している。
2018年シーズンはJリーグにとっての「データ活用元年」に?
2017年シーズンのJリーグ全試合のデータの解析結果の提供は、既に複数のチームで進み始めているという。
「2018年シーズンは、データ解析の導入・活用が一気に普及・定着していきそうなトレンドを感じますね。というのも、こうしたデータ解析を導入した成功事例は企業などの場合は一般的に公表しません。
でもJリーグ側も導入に積極的ですし、強豪チームの中には既に積極的にデータ活用を進めようというクラブもいます。こうした事例が少しずつ知られてくるにつれ、他のクラブでも、データ解析を活用しようという動きは加速していきそうですね」(西内氏)
加えて西内氏は、チーム同士が競合するのではなくWin-Winの関係で切磋琢磨していく環境作りにも貢献できると期待を示す。
「どこかのチームのサポーターが増えると、近隣のチームが主催する試合でもアウェイの観客ということで売上に貢献してくれる人も出てきます。つまり、試合の勝敗という点ではチーム同士は「敵」ですが、ビジネス面では互恵的なパートナーということになります。Jリーグだけでなくプロ・アマ問わず、あらゆるスポーツチームの活性化にも貢献していきたいですね」(西内氏)
2018年6月にはロシアで「2018 FIFAワールドカップ」が開催される。久永氏はその挑戦の舞台でもデータ解析の結果が導入・活用されるシーンに期待を寄せる。
「試合中も、これまでは禁止されていたピッチでの電子機器の使用が一部認められるようです。このシステムやノウハウを活用することで、試合のハーフタイム時に限らず前半の試合内容をリアルタイムで分析して次の戦術に活かしていくことも可能です。
ワールドカップをきっかけに、世界中のチームが常に『勝ちパターン』を考えながら試合に臨むスタイルが定着していくことを期待しています」(久永氏)
2018年は、「データ解析」という新しい視点から日本と世界のサッカーシーンがさらに進化していくシーズンになりそうだ。
「思いもよらない結果が得られる」Data Diverの秘密
今回記事に登場するデータビークルのデータサイエンス支援ツール「Data Diver」ですが、記事内では機能の詳細は語られません。しかしながら、J1リーグのコーチングスタッフやフロントも気づき得なかった、得点の要素を明らかにするツールには何か秘密があるに違いありません。
現在データビークルの公式サイト上では、Data Diverがどのような特徴を持ち、なぜ通常の分析では発見できなかった知見が得られるのかを解説しています。ぜひ記事と併せてご覧ください!