デジタルマーケティングに対する「違和感」の正体
プレイドがKARTEの開発を進めてきた背景には、同社のユーザー企業を始め、様々な企業が感じているはずの「デジタルマーケティングに対する“違和感”」が原動力にあるという。
本来であれば、データを活用して「お客様にいい体験をしていただく」ことが目的であるはずなのに、「『いかに効率的に、効果を最大化するか』に焦点が当たり過ぎていることに、違和感を抱きました」(倉橋氏)という。
元々データを活用・分析する背景には、「モノやサービスを提供したいお客様がいて、そのお客様にどう届ければ良いか」を理解し、それをパフォーマンスにつなげたいという動機がある。
Webアクセス解析を行うのも、「どういうユーザーが来ているのかを把握したい」ということが根本にあるはずだ。それがいつしか、「コンバージョンを上げるために」という流れになり、「データを活用して、最短で最大の効果を上げること」だけに主軸が置かれるようになった。
こうした目的で利用されるデータは、購買履歴や売上単価などの「結果データ」が中心だ。倉橋氏は「それらはあくまで、結果として企業に落ちたデータであり、結果に至っていない行動データは十分に活かされてきませんでした」と語る。
もちろん、こうした結果データを活用してセグメントを切ることに意味がないわけではない。ただ、顧客を理解して「より良い体験」を実現するには、「深み」が足りない。
ユーザーのデジタル環境も変化している。PCやガラケーからスマートフォンへとデバイスシフトが起こるなか、一人ひとりの可処分時間が細分化された。モノを購入したり店を探すような時も、検索ではなくInstagramで画像を見て直感的に決めることも増えてきている。チャネルが分散してきており、もはや、顧客行動を「点」で見ているだけでは、その人物像を理解しきれない状態だ。
ユーザーの情報処理スピードは上がり、ニーズは多様化/断片化している。しかも、デジタルマーケティング自体も細分化し、「何かをやろうと思っても、ややこしい、そして面倒くさいという問題が起こっています」と倉橋氏はいう。
データを活用し、すべての顧客チャネルの体験を向上する
本来の課題である「顧客を理解して、最適な接客を行い、パフォーマンスを上げること」に注力するのであれば、シンプルに、「顧客を理解するために必要な情報を集約・分析し、その状態をリアルタイムに可視化すること」ができれば良い。次は、その理解に基づき最適な接客を進める。すると、顧客の反応をリアルタイムに把握できるので顧客理解が深まる。こうしてPDCAが回り出す。
もうひとつ、顧客理解を進める上で忘れてはならないことがある。それが、行動の裏にある顧客の文脈を読み解くことだ。これまで、デジタルマーケティングのデータ活用であれば、購買履歴や売上履歴、購買頻度など、結果のデータを中心に顧客理解を進めようとしていたが、そもそも人が何かを購入するまでには、様々な行動がある。そうした行動を蓄積し、「ある顧客が購入に対してどのような状態にあるか」を分析して、わかりやすいようにすることも必要だ。
KARTEでは、ユーザー軸で情報を集め、可視化しているため、これにより、専門家にデータ分析を依頼したり、分析結果の解釈をレクチャーしてもらったりすることなく、顧客理解を進めることができるという。
そして、こうして収集された1st Party Dataの適用範囲は、Webだけとは限らない。LINEやFacebookメッセンジャーのコミュニケーションに適用したり、チャットやメールに利用することもできる。将来的には広告なども含め、「データを活用して、顧客チャネルのすべての体験を最適なものにしていきます」と倉橋氏は説明する。