「個客」を知ればきめ細かなコミュニケーションが可能に
具体的に、顧客を知ることでどのようなコミュニケーションが可能になるのか。
たとえば、スマホで本格的な大学受験対策ができる受験アプリ「スタディサプリ」では、KARTEで作成したアンケート結果をもとに、最適な受験コンテンツや学習の進め方を提案することで、「学習効果を上げたい」という顧客のニーズに応えている。
また、通販サイトのQVCでは、ターゲットとする顧客に対し購買行動を喚起するために、「当たりくじ」を提示するなど、ユーザーによって提案の出し分けを行っている。
「一度にいろいろなキャンペーンを一気に表示するWebサイトが多いのですが、すると多くの人は『これは自分には必要ない』として、結果としてコンバージョンが下がるケースが見受けられます。きちんと個々の顧客を理解し、想定する人に最適な提案を行うことで、コンバージョン率を上げられます」(倉橋氏)
他にも、カートに商品を入れたまま離脱しそうになったユーザーにメッセージを表示したり、人材紹介であれば、特定の経歴を持つ人に特別なお知らせを出すなど、一人ひとりの特性に合わせた提案ができる。こうした提案を続けることで、「自社の価値を届け、パフォーマンスが上がることが、そもそもデータ活用で目指していたことではないでしょうか」と、倉橋氏は説明する。
講演では、こうしたKARTEの機能を実体験できるデモサイトの紹介もあり、自分のスマホからKARTEを操作するシーンもあった。
ARやVR、さらにはMR技術も適用して顧客体験向上を目指す
同社は今後も、さらなる顧客理解に向かって、様々な取り組みを進めている。中でも注目なのは、2018年1月に発表された「Googleアナリティクスとのデータの相互連携開始」というニュースだ。
これまでKARTEは、基本的に自社Webサイトへの流入経路、サイト内の行動履歴、そして会員データや独自のスコア、購買データなどを利用して顧客分析を行っていた。今回の連携により、企業がGoogleアナリティクス360を導入している場合、サイト外部での広告接触データもKARTEのユーザー解析に反映できる。「自社サイト外の顧客体験データも活用し、さらなる顧客理解へとつなげていきます」と倉橋氏は語る。
そのほかにも、Salesforce、Marketoを始めとする主要MAとの連携も発表、様々なツールでKARTEのデータを活用できるようにしている。
またユニークな取り組みとして、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、MR(複合現実)への対応も進めている。
ARの実証実験として進めているのが、不動産情報サイトとの連携だ。ユーザーの不動産閲覧情報を、リアルな不動産店舗と共有することで、店舗への内覧申し込みや問い合わせ時に、何度も不動産条件を尋ねることなく、スムーズな対応が実現できる。
VRも現在取り組み中だ。これは企業のWebサイトを1つの空間として表現し、顧客がサイト内をどのように行動しているかを仮想空間で表現することで、より直感的に顧客理解を深めようというものだ。
たとえばECサイトであれば、バーチャルに「デパート空間」としてサイトを表現し、顧客の姿も実際に立体化して、「同じ商品を行ったり来たりする様」や「カートに入れて、レジまで持っていくが引き返す様」などがリアルに見えるようにする。このようにVRで表現することで、分析や解釈ではなく、直感的な理解が深まるという。
MRは、店舗とECを両方運営している企業に対し、VRの技術を応用して店舗の壁にWebの顧客像を映し出す取り組みだ(参考記事)。リアル店舗とWebの顧客が同じ商品を見ていることもあるし、Webの顧客が商品を購入しているシーンを、リアル店舗の顧客や店員が眺めることもある。
「リアル店舗とECを併用している場合、ともすればECはリアルを補完すると捉えられがちですが、ユーザーにとってみれば、リアルもECも、対等なチャネルです。リアル店舗にECの顧客を投影することで、そうした事実を改めて理解できるようになり、その結果、より良い提案やコミュニケーションにつながります」と倉橋氏は語る。
なおプレイドでは、こうした新しい取り組みに加え、定期的にユーザーを招いた勉強会や事例を共有し、ユーザーと一丸になって「さらなる顧客体験の向上」に努めている。勉強会で共有した事例をもとに、他のユーザー企業が工夫を重ね、より良い提案とコミュニケーションにつなげていくという。
誰もが簡単にデジタルとアナログの壁を越えた革新的な「顧客体験」を実現できる未来に向けて、同社の「BEYOND DIGITAL MARKETING」への挑戦に期待がかかる。