AIは既に購買率の予測について人間を超えている
「2015年、すべての企業にAI戦略が必要になってきた」と語るのは、Appierの最高経営責任者(CEO)兼共同創業者であるチハン・ユー氏。ITの歴史を振り返ってみると、1995年にネット化の波があり、2005年にはスマートフォンの普及にあわせてモバイルアプリの時代が来た。10年ごとに大きな革新があり、2015年に訪れた節目のキーワードとなったのがAIだ。

AI市場は数字的に見ても非常に大きく成長している。2021年までのAI市場の年間平均成長率は50%を超え、2025年までにはAIによって創出される市場価値は50億ドルに達すると言われいる。

また、ユー氏はクリエイティブな判断が必要となるシーンでもAIは強力であると説く。ECサイトのコーディネート画像の選択するとする。AIは既に購買率の予測について人間を超えているという。つまり、AIを使ったほうが人力で選ぶよりも、より買われる可能性が高い画像を選択できるというわけだ。

3つのAIのトレンド
Appierのチーフデータサイエンティストのシュアンテン・リン氏によると、これまでAIは人のように振る舞え、合理的な意思決定ができるような存在になるべく進化してきたという。しかし、AIの定義が変わってきた。今ではエンドユーザーがいかにサービスを使いやすく感じられるか。それが新たなAIの定義であると語る。

いかに人間的であるかや合理的かということだけではなく、AIが人のためにいかに使い勝手よく機能できるかが重要になっているのだ。では、AIが企業、あるいはマーケターの日々下す意思決定にどのような変革をもたらすのか。AIはパターンを見出していき、分析、そして予測を行う。その後でベストアクションを提案する。そのアクションを自動的に実行する、または人間に意思決定をしてもらう。さらに、そのアクションから施策の最適化を行い、次なる発見につなげていく。これが典型的なAI利用の流れだ。ハイレベルの意思決定を行うために必要となる洞察をAIが与えてくれるというわけだ。リン氏は「すべての業界に変革がもたらされている」とする。
また、マーケターがAIに最も期待する役割としては自動でパーソナライズされたコンテンツの創出、レコメンデーションだという。新しいインサイトをAIから得、人間では発見できないもを見つけ出したいという要求は非常に高い。しかし、大きな課題がある。データが部門間などで分断してしまっているということだ。AIプラットフォームを導入する以前に、データの整理と統合に多くの時間を割くことになる。異なるフォーマットのオーディエンスデータを自動的にクレンジング、一元化することができる同社のデータインテリジェンスプラットフォーム「アイソン」は、その点も強力にサポートしてくれる。
AIをマーケティングに活用していく上で重要な要素が2つある。AIが達成可能かつ明確な目標設定がされているか。AIはなんでもやってくれる存在ではなく、あくまで手助けをしてくれるものだ。もう一つはAIはデータありきだということを理解し、入力するデータの「有用性」「必要性」「品質」「処理にかかるコスト」をしっかりと見極めることだ。

2018年のAIのトレンドとして、リン氏は「クリエイティブ」「解釈可能」「インタラクティブ」という3つのキーワードを挙げた。AIからの提案を理解し、人間としてのフィードバックを返していく。そういったAIとの連携により、ヒトはよりハイレベルなタスクを、よりハイスピードに進めていけるようになるだろう。
