KPIを達成すると同時にKGIの来社予約数も増えた
石井:たとえばこの「Web登録」というKPIについて、コンバージョンする人の行動を分析すると、福利厚生に関する情報に触れていた人が多いということが明らかになりました。そこで福利厚生に関する情報を充実させたのですが、結果は「Web登録数は増えるが、KGIである来社予約数はあまり増えない」というものでした。しかし同じようにコンバージョンする人がよく触れていた「お仕事開始までの流れ」というコンテンツを改善の対象にしたところ、KPIを達成すると同時にKGIの来社予約数も増えたんです。
荒竹:この気づきから「『お仕事開始までの流れ』のコンテンツを追加してユーザーの納得度合いを深めた上で、福利厚生ページに遷移させる」という施策を打つことにしました。「お仕事開始までの流れ」をきちんと読んでくれたうえでコンバージョンした人は、その時点でパソナ様が提供しているサービスの流れに納得しているので、その次のプロセスにも進んでくれやすいはずです。KPIとKGIがどのように紐づいているのかをよく考えたうえでの施策だからこそ、成功につながるのだと思います。
知久:もちろんどんな場合でもKPIとKGIには何かしらの相関性があり、基本的には「KPIが上がればKGIも上がる」という関係が成り立つと思います。ただ、そうではない結果が出たときに、KGIに立ち返ってKPIの本質に向き合うことの重要性に気づきました。

理解を得たい人の立場や目標にあわせて
――KPIは「何かやれば、何かしらの数値は上がる」というものです。数値を上げることだけを目的にすれば、やり方や見せ方はいくらでもあります。そんな中で、目の前のKPIだけにとらわれるのではなく本質を考え抜くことが、結局、ビジネスインパクトへの最短ルートと言えるのかもしれませんね。Webサイト改善のPDCAを回していくためには社内理解も重要ですが、ビジネスインパクトという意味では、社内理解を得るために施策の成果を金額換算することも有効なのでしょうか?
石井:金額換算を気にする人もいれば気にしない人もいる、というのが正直な感想です。理解を得たい人の立場や目標にあわせて、いろいろな切り口を用意するのがいいのではないでしょうか。
知久:Webサイトの設計を変えるときって、他の部門にも影響がありますよね。システム部門はもちろんですが、リーガルに関わることもあるし、サポート部門がWeb画面を見ながら手続きの説明をしたり、営業部がWebサイトのコンテンツをプリントアウトして営業に活用していたり、ということもあります。そういった意味では業務フローを把握した上で、関連する部門への、こまめな情報共有が欠かせません。
また社内理解という観点では、冒頭でお話ししたように、1回目の施策で失敗してリカバリーできたことにも大きな意味があったと考えています。「失敗することもあるけど、そこから気づきを得て成功できる」という可能性を社内に示せたので、今ではA/Bテストを繰り返すことを前向きに捉えてもらえています。
