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IoTの最先端「IoHT」

 IoTの中でも最も注目されている分野「IoHT(Internetof Health Things)」は、どのようにヘルスケアを変革するのか。その可能性を探ってみたい。

※本記事は、2018年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』30号に掲載したものです。

 2014年末ごろから「IoT(モノのインターネット)」という言葉がバズワードとなり多くのメディアを賑わしてきた。産業だけでなく日常の様々なモノがネットにつながることで、大量のデータを取得できる。それを分析することで、これまでにない価値を生み出せると、若干誇張がかったトーンが多かったかもしれない。

 しかし最近では、IoTに関わる課題も認知され始めており、現実的にIoTの可能性を議論する風潮も出てきている。

 IoT市場の伸びしろは大きいと見られている。マッキンゼーによると、2025年までに世界のIoT市場は11兆ドル(約1,188兆円)に拡大する見込みだ。分野別では工場向けのIoT市場が3.7兆ドルと最大。次いで都市分野が1.7兆ドル、医療分野が1.6兆ドルとなっている。この3分野で全体の60%以上を占めており、注目度は他の分野に比べ高いと言えるだろう。

 この中でも医療分野のIoTは「IoHT(Internet ofHealth Things)」という新たな言葉が登場するほど、直近で最も注目される分野になっている。

IoHTを構成する4つの分類

 IoHTとは、消費者/患者と医療関連機関/企業がネットワークを介してつながり、診断、症状改善、健康促進などを実施できるIoTベースのソリューションと定義することができる。

 ネットワークにつながったIoHT生体センサーにより体温、心拍数、脳波、糖尿病の状態など、様々なデータを取得し、医療機関や企業は個人に最適化された治療や健康改善策を提示することが可能となる。

 米国を拠点とする電子工学の学会IEEEの論文では、IoHTを「遠隔ヘルスケア・モニタリング」「スマホベースのヘルスケア・ソリューション」「アンビエント・アシステッド・リビング」「ウェアラブル・デバイス」の4つのサブカテゴリーに分類している。

 「遠隔ヘルスケア・モニタリング」とは、家族や医師、病院が患者の生体シグナルをリアルタイムでモニタリングし、異常事態への対応を迅速化するだけでなく、データ活用による治療の改善などに役立てようというものだ。

 Berg Insightsによると、世界の遠隔ヘルスケア・モニタリング利用者は年率40%以上で増えており、2016年には700万人だったが2021年までに5,000万人以上に拡大する見込みという。

 利用者が増えている理由はいくつかあるが、その1つとしてセンサーデバイスの小型化が進み、患者の負担が減っていることが考えられる。

 たとえば米国のナノテク企業Gentagが開発しているバイオセンサーは、シールのような非常に薄いもので、利用者の負担はほとんどない。同社は、Mayo Clinicと共同で、肥満と糖尿病の症状改善に向けた遠隔ヘルスケア・モニタリングシステムとウェアラブルパッチの開発を進めており、その効果に注目が集まっている。

 もう1つの理由は、テクノロジーを利用することに慣れている若い世代の需要が高まっていることが考えられる。ニュージーランド・オークランド大学などが実施した調査によると、16〜24歳の糖尿病患者のうち64%が糖尿病症状をモニタリングする手段としてスマホのアプリやメッセージが好ましいと回答したのだ。

 生体センサーの小型化やモバイルとの統合は今後さらに進んでいくと考えられ、さらに糖尿病だけでなく心臓病や睡眠障害など対応できる症状も増えていくことから、遠隔ヘルスケア・モニタリング利用はさらに増えていくはずだ。

 「スマホベースのヘルスケア・ソリューション」とはスマホのカメラやマイク、速度計などを使い利用者の健康データを収集・分析し、診断や病院とのコミュニケーション、医療に関する教育などをサポートするスマホアプリのことだ。

 たとえば前出のIEEEの論文によると、スマホのセンサーを使い患者の足取りパターンから異常を検知するものやスマホのカメラで撮影した傷口からその状態を診断するソリューション、また皮膚の写真から悪性黒色腫を早期発見できるソリューションなどが提案・開発されているという。

 「アンビエント・アシステッド・リビング」とは高齢者や障害者が安全かつ健康的な生活を送れるようにするためのIoTサービスだ。

 IoTデバイスを活用して高齢者の転倒や血圧の異常を検知したり、心拍数によって適切な運動方法を提示するようなソリューションが開発されているという。

 「ウェアラブル・デバイス」はIoTと同様にバズワードとしてよくメディアに登場する言葉なので説明は必要ないかもしれない。

 最も身近なウェアラブル・デバイスと言えばスマートウォッチだろう。一方、最近では多様化が進み、身につけるあらゆるものがウェアラブル・デバイスになっている。たとえば、スマートシューズやスマートソックス、スマートベルトなどが登場していることはあまり知られていないはずだ。

 Sensoria社が開発したスマートソックスは、利用者の歩き方や走り方を分析し、それらがケガをしやすい走法なのかどうかを判断し伝えてくれるウェアラブル・デバイス。走法を改善することで膝や腰への負担を軽減することが可能だ。

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この記事の著者

細谷 元(Livit)(ホソヤ ゲン)

シンガポールを拠点にフィンテックやドローンなど先端テクノロジーに関する情報を実践を通して発信。現地ネットワークを生かしアジア新興国のリアルを伝える。Livit Singapore CTO。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/25 14:30 https://markezine.jp/article/detail/28629

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