※本記事は、2018年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』30号に掲載したものです。
通信と放送の融合
近年、ネット上の動画サービスとテレビの境界が非常に曖昧になっています。TVer等のサービスによるキャッチアップ配信、自らを「インターネットテレビ局」と称するAbemaTVなどがその一例です。
このような動画視聴環境の変化は一般に「通信と放送の融合」と呼ばれる大きな流れの中に位置づけられ、法制度の面からも議論が進められています。しかし通信と放送の融合とは言うものの、そもそもどのような「違い」があるものが融合していくということなのでしょうか。本稿では通信と比較した際のテレビの大きな2つの特徴として「地域性」と「同時性」に着目し、放送と通信が融合する時代におけるテレビ放送ならではの価値を考えてみます。
「制約」としての放送の地域性
テレビの放送としての特徴の1つはその地域性です。ネット上のコンテンツに対しては基本的に世界中のどこからもアクセスできるのに対し、テレビの放送を受信できるのはその放送局の電波が届くエリアに限定されています。
この放送の地域性により、各地域で受信できる放送局の数には大きな差が生まれています。関東広域、近畿広域、中京広域の3つの広域放送域には5~7つの民放があるのに対し、それ以外のエリアでは1~3つしか民放が存在しないところも多く存在します。
図表1は2017年の大晦日の23時時点に地上波で放送していた番組を東京と宮崎で比較したものです。東京では全部で10種類の番組を見ることができるのに対し、民放が2つしかない宮崎では4種類の番組しか見ることができません。地域によって見られる番組の種類に大きな「制約」があると言えます。
▶調査レポート
「動画配信サービスにはない『テレビらしい』楽しみ方とは?―ライフログデータが示す、メディアの未来#1」(Intage 知る gallery)