デジタル×アナログのテレビCM最適化モデル

坂田:野球が行けそうだ、などと着眼するきっかけはありますか?
松岡:スマートニュースは自前の一次ニュースを扱っていないので、ユーザーに対して最適なUI/UXが提供できるかが、一つの強みです。なのでユーザーの普段の行動から、何をこのアプリに置き換えたらラクになるかを考えていました。
巨人ファンなら日々いろいろなサイトで巨人の情報をチェックしているから、それならアプリでまとめて見る体験のほうが絶対いいよね、といった感じです。コンテンツ以外に広告でも、たとえばBIGBANGのDVD発売時にオリジナルの縦動画や360°動画を展開したり、新しい体験を作ることに注力していましたね。
坂田:そんなふうにアイデアを具現化したら、走らせるのは他の人に任せてまた別のことに着手されているわけですね。ではRIZAPで手がけたことを教えてもらえますか?
松岡:RIZAPで最初にやったのは、テレビCM出稿のバイイング最適化です。それまで1ヵ月後くらいに結果をみて判断していたのを、開始から1週間でバイイング最適化できるようにしました。複数パターンのクリエイティブを出稿して1週間の効果を把握し今後の効率推移予測モデルを作り、クリエイティブの割り当てバランスを最適化していく。
指標もレポートのフォーマットも見直して判断も半自動化できるようにしました。地味ですが、これは利益貢献の大きい作業です。その後は完全に手離れしています。
起案して実行して、仕組み化して手放す

坂田:テレビCMでも、そんなことができるんですね。
松岡:これはライフネット生命のときに身につけた“特殊技能”で、デジタルマーケティングの作法でPDCAを回していくことに、テレビCMならではの複雑な商習慣を加味してモデルを構築していくんです。
テレビCMの世界には、理論上はこの枠がよくても、他の広告主の兼ね合いだとかいろいろな事情でそこは無理だからこっちが狙い目……みたいな、モデル化しにくい部分が多いんですね。そこが経験上わかっていました。RIZAPの面接時に何枚か資料を作ってディスカッションをしたのですが、このCM最適化は「やりたいこと/できること」として挙げていたひとつでした。
坂田:元々、そうやって提案していたんですか。
松岡:そうですね。営業部門にセールスフォースを導入するのも、設定からチューニングまでやりました。今はグループマーケティング推進ユニット室ができて、そのユニット長という立場ですが、入社当時はひとまず「メディア戦略特命担当」という肩書きで入社前に提案したことをどんどんやっていました。
今年の頭からは、長野県伊那市と組んで、成果報酬型の市民型健康増進プログラムを実施しました。参加者が結果を出せたら、対価をいただくという取り組みです(プレスリリース)。
坂田:個人の財布だけでなく、自治体からも収益を得られるようになって、今後はきっと法人も増えていきますよね。コアビジネスが変わらないのに収入源が増えていくのは、美しいなと感じます。松岡さんはまさに、自分で仕事を作っているんですね。
松岡:はい。自分で起案して実行して、仕組み化する。瀬戸社長(RIZAPグループ 代表取締役社長の瀬戸健氏)も、「結果を出してくれればなんでもいい、任せるよ」と常々言っているので、その点もすごくやりやすいです。
