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インターネット広告の歴史と未来

【勝負は意外な結末に】Yahoo! JAPANを巡るOvertureとAdWordsの攻防


 インターネット広告の歴史を振り返り、その未来を展望する本シリーズ。2002年に日本でOvertureとAdWordsがサービスを開始し、検索連動型広告がスタートしました。50:50でトラフィックを分け合ったYahoo! JAPANを巡る2社の攻防を中心に検索連動型広告市場の勃興を振り返ります。

OvertureとAdWordsの2つの違い

杓谷匠(以下、杓谷):当時60%の検索シェアを誇ったYahoo! JAPANを舞台にOvertureとAdWordsのどちらが売上を多くもたらすかという壮大なABテストが始まりました。勝った方がYahoo! JAPANのトラフィックを独占できるということで、OvertureとGoogleの間で熾烈な競争が繰り広げられました。当時のOvertureとAdWordsには2つの特徴的な違いがありました。

違い1:掲載順位の仕組み 純粋なオークション vs 「広告ランク」

佐藤康夫(以下、佐藤):AdWordsは現在のGoogle広告と同じで掲載順位は「入札価格」×「品質スコア」(当時はクリック率)からなる「広告ランク」で決まりました。Googleは広告も情報と考えていたため、「品質スコア」が悪くなると入札価格をいくら高くしても広告が出なくなることがありえるという仕様でした。

杉原剛(以下、杉原):Overtureは純粋なオークションモデルで、広告の掲載順位は入札価格の高さで決まりました。

杓谷:キーワードを入札しているにも関わらず、クリック率が悪くなると広告が表示されなくなる、というのは当時としては斬新ですよね。そもそも広告とはお金を払って掲載を確保するものですから既存の広告代理店の商習慣とは明らかに異質な考え方だったと思います。

違い2: 入稿作業 Overtureで入稿 vs 完全セルフサービス

佐藤:OvertureとAdWordsでは初期の営業オペレーションがまったく違っていました。AdWordsは今と同じ完全にセルフサービス型のオペレーションでクレジットカード決済。売っている私達でも「クレジットカード決済?」と思うぐらい当時は斬新で、インターネット上でクレジットカードを登録すること自体がまだ普及していませんでした。

 逆に、Overtureはキャンペーン開始時のベースとなるキーワードや広告文、入札単価などの入稿はOvertureの社員が広告主の依頼を聞いて管理していました。

杉原:営業がRFP(提案依頼書)を広告主や代理店からもらってリンク先のURLなどをもらいます。キーワードや広告の入稿を管理する「エディトリアルチーム」がリンク先URLなどを見てキーワードを150~300個抽出し、サンプルの広告文を1つだけつけて、おおよその月額の予算とともに提出していました。

杓谷:当時の見積もりはどのように行っていたのでしょうか?

杉原:全キーワードの1位から5位くらいまでの平均クリック率やクリック単価を使っていました。クリック単価は35円が最低入札価格だったので、必要なご予算のベースラインはこれです、といった形で提案していました。

佐藤:パートナーとなる検索エンジン側は広告代理店がしっかり売ってくれるかどうかを気にしていたので、広告代理店が売りやすかったOvertureが当初はとても強かったですね。AdWordsはOvertureと違って完全セルフサービス型なので、そもそものサービス設計の段階で広告代理店をさほど考慮に入れていなかったですし、入稿や入札管理を代理店が行わなくてはならなかったので、代理店受けが悪かったですね。

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:05 https://markezine.jp/article/detail/28982

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