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インターネット広告の歴史と未来

Googleの核となるサービスの買収劇/検索連動型広告が「バナー広告」に及ぼした影響


 2002年12月にOvertureとGoogleが検索連動型広告を開始し、インターネット広告市場は爆発的に成長していくことになります。この勢いは「バナー広告」にも波及し、ディスプレイ広告の在り方を大きく変えていくことになります。インターネット広告の歴史と進化を追う本連載。今回は、アタラ合同会社の鹿毛比呂志さんにも話を伺っていきます。

検索連動型広告市場の伸長が「バナー広告」に与えた影響

杓谷匠(以下、杓谷):検索連動型広告市場が爆発的に伸びていく中で、これまでインターネット広告を牽引してきた「バナー広告(予約型ディスプレイ広告)」にはどんな影響を及ぼしたのでしょうか? 当時のインターネット広告業界の状況を教えてください。

鹿毛比呂志(以下、鹿毛):2000年代前半~中盤まで私はインターネット専業広告代理店に在籍していたのですが、私が在籍していた広告代理店は数年に渡りYahoo! JAPANのバナー広告の売上No.1でした。

アタラ合同会社 シニアコンサルタント 鹿毛 比呂志さん
アタラ合同会社 シニアコンサルタント 鹿毛 比呂志さん

 広告制作プロダクションを経て、オプト、ADKインタラクティブ、デジタルインテリジェンスでSEM、WEB解析、DMP導入運用サポートなどのプロジェクトマネジメント、コンサルティング、ビジネス支援を行う。その後3年半のフリーランスを経て2018年1月よりアタラ参画。 パフォーマンス型広告とブランディング広告、広告と非広告、コンサルタントとエンジニア、成果と洞察など、分断されがちなものをデータやテクノロジー、アイデアを使ってつないでいき、デジタルによるマーケティングやビジネスの未来を作っていきたいと考えている。

鹿毛:当時、バナー広告は、「インターネット広告は投資対効果がはっきりとわかります。だからやりましょう!」ということを売り文句にやってきました。私が在籍していた広告代理店では広告効果測定ツールの提供と平行してバナー広告を販売していたのですが、インターネット広告の黎明期ではこの売り方はかなり成功しました

 しかし、その流れが変わってきました。それは確実に検索連動型広告の影響でした。検索連動型広告もバナー広告も僕が当時在籍していた広告代理店が売上高No.1だったので広告主の予算の事情がよく見えたのですが、広告主がバナー広告の予算の大部分を検索連動型広告にシフトしていってしまったからです。なぜかというと、検索連動型広告はこれまでのバナー広告に比べて圧倒的にコンバージョン数が多く、安いCPAでコンバージョンが取れたからです。CPAが安いとか、コンバージョン数が多い、というのは広告主にとって非常にわかりやすい指標ですよね。

 最初は500万円くらいで始めた検索連動型広告の予算が2,000万円になり5,000万円になり最終的には1億円という規模になっていきました。こんなに検索連動型広告に出稿してどうなるんだと思うぐらい広告主が予算を投下していきましたね。

 そういった背景があるなかで、バナー広告側にも新たな動きが出てきました。特にその中心となったのは、検索連動型広告の恩恵を受けにくかったパブリッシャー(ニュースや生活情報、金融情報などのコンテンツ提供者)やメディアレップでした

 パブリッシャー側の課題として、継続的に質の高いコンテンツを大きなボリュームで世に提供しているのに、なかなか収益につながらない。前と比べてバナー広告がどんどん売れなくなっている。サービスを維持するために一体どうしたらいいんだという話になっていきました。

「バナー広告」はデータをセットにしないと売れないことがわかってきた

鹿毛:検索連動型広告の影響でバナー広告も安いCPAでコンバージョンを獲得できるようにならないといけないという広告主側からの圧力が高まっていったのですが、Yahoo! JAPANの「ビヘイビア・ターゲティング」だけは順調に売れていました

行動ターゲティングの仕組み
ビヘイビア・ターゲティング(行動ターゲティング)の仕組み

鹿毛:ビヘイビア・ターゲティングとはいわゆる行動ターゲティングのことで、たとえばYahoo! JAPANの不動産カテゴリーを閲覧したユーザーに対して、不動産会社の広告を表示させる、といったものです。バナー広告の中では比較的CPAも安く、コンバージョンの量も取れました。このことから、バナー広告はデータを裏側に持たせてターゲティングでき、効果測定ツール上で効果を証明できると売れる、ということがわかってきたわけです。

 そんな中で、検索連動型広告のシェアが大きくなればなるほど広告主側からCPAとコンバージョン率を重視する圧力が高まりました。検索連動型広告がどのキーワードに投資するとか、マッチタイプをどうするとか、そういう最適化を行って効果を良くしていくものであるという流れがバナー広告にも及んだわけです。

 ネット上のCPAやコンバージョン率で効果測定がしにくい食品飲料業界や化粧品業界の広告主はインターネット広告を認知目的で使いたいという目論見はあったものの、当時はその因果を明確に証明することはできていませんでした。

 また、これらターゲティング型の広告はある程度の出稿ボリュームを超えると成果が飽和していくため、認知や利用意向獲得のための広告との並走や、成果が飽和するしきい値の特定や広告予算のリアロケーションなど、アトリビューション分析へつながっていくことになりました。

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:04 https://markezine.jp/article/detail/29122

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