LINE to CALLとは、LINEが提供する法人向けカスタマーサービスであるLINE カスタマーコネクトの機能のひとつで、IP電話で企業のコールセンターへ無料で通話ができるというものだ。ユーザーは海外からでもWebサイト上に設置されたボタンやリンクから電話をかけることができる。
東京海上インターナショナルアシスタンス(以下、INTAC)代表取締役社長の太田征宏氏は、「弊社のお客様は大きく分けると3つ。海外旅行者、留学生、そして企業の駐在員や出張者。中でも留学生の数が年々増えており、LINEを使ってコンタクトセンターへ連絡することはできないのかと、LINEを指名したお問い合わせをいただくこともありました」と語る。こうした問い合わせからもそのニーズを把握していたが、実際にLINE to CALLの導入に至った背景にはどのような課題があったのか。
国際フリーダイヤルに加え、新たな通信手段を
INTACでは保険加入者に向けて、365日24時間対応可能なコンタクトセンターを設置している。LINE to CALLの導入以前は、国際フリーダイヤルを利用した国際電話から問い合わせを受けていたが、海外現地の通信環境の都合などから「音声が途切れる」「回線がつながりにくい」といった指摘が度々あった。
加えて導入の強い後押しとなったのが、留学生を中心にした若年層からの強い要望だ。業務企画部 兼 医療サービス部 部長の鈴木康敬氏は次のように語る。
「導入に踏み切った大きな要因は、留学で海外に滞在する学生のお客様からのご要望です。お問い合わせ件数の割合としても留学生のお客様は大きく、LINEから連絡をしたいというご要望も年々増加していました。学生のお客様は現地キャリアと音声通信サービスを契約しないことが多く、日本から持って行ったスマホを利用されることが多いようです。インターネットさえつながれば、SNSを使って現地の友人や日本のご家族と連絡が取れるからです。国際電話料金や国際ローミング代もかかりません。
たとえば海外でトラブルにあった留学生がコンタクトセンターへ連絡しようと思ったとき、直接は電話せず、まずご自身の親御さんへ『体調を崩した』『盗難にあった』とLINEします。そして日本にいる親御さんから国内電話で弊社コンタクトセンターへ問い合わせがくるという、三角形の構図になっていたのです。これだと正確な留学生ご自身の情報が伝わってこない、タイムラグが発生するという弊害が出てきます。
このようなニーズを踏まえ、新たな通信手段を早急に導入する必要があるという共通認識が社内にありました」
アプリの自社開発をやめて、LINEの活用へ
LINE to CALLの導入を決定する前は、IP電話やWebRTCを組み込んだ自社アプリの開発の検討も進めていた。開発をやめた要因は3つ。開発コスト、OSアップデートにともなうメンテナンスコスト、そしてユーザーがアプリをダウンロードしてくれる確証がもてないことだった。
「そこで自社開発から既に普及しているサービスを活用していく方向へ舵を切りました。LINEなら、元々お客様からいただいていた強い要望からマーケットニーズも十分。また、国内7,600万人というユーザー数が示すように普及率の高さが決め手となりました」(業務企画部 兼 医療サービス部デピュティマネージャー 橋本尚美氏)