“山田孝之がバストを測ってくれる”という顧客体験
佐藤:戦略的ですね。では、瀬出井さん。僕がミーアンドスターズとして、CIOの山田孝之くんと一緒にやらせてもらった御社の「ふんわりルームブラ」のイベント(※5月19日にSHIBUYA109で開催された、山田孝之さんが参加者のバストを測りまくるという企画。瀬出井氏率いるシーオーメディカルは、山田さんの1日受付権をオークションにて2700万超で落札し、実現した)は、ちょっと驚くくらい反響が大きかったですね。
瀬出井:そうですね。このご時世、セクハラ的なクレームも覚悟していましたが、抽選で来場したお客様が本当に心から喜んで帰られていて、泣いている方もいて。こんなにも感謝されるんだなと思いましたね。

プロのヘリコプターライセンス取得。その後警察官、SBCメディカルグループに務めたのち、
シーオーメディカルを創立するという異色の経歴を持つ瀬出井(せでい)氏。
佐藤:正直、事前に現場からは反対意見が出たと思います。ただ、僕と山田くん、そして瀬出井さんは、いけると確信していた。新しい顧客体験を作るときって、皆の総和的な意見が正しいわけじゃないんだなと、反響を受けて僕も改めて思いました。
瀬出井:世論と本質には、若干ズレがあるのかなと私も実感しました。すごくニッチだったからこそ、話題になったというのもありますね。スタッフが売り場を調査すると、いまだに「私、山田くんのブラ買ったんだよね」といった会話が聞こえてくるんです。男性でも、商品名は知らなくても、「山田くんのブラ」というと半分の方がわかってくれます。
顧客体験にデータはどう寄与するか
佐藤:顧客体験の中でも、かなり強烈なコアファンを意識したイベントでしたね。

2017年には俳優の山田孝之氏と一緒にミーアンドスターズを設立。代表取締役社長兼CEOを務める佐藤氏。
長瀬:マーケットとインサイトとのギャップは、常にありますよね。そこをちゃんと理解して設計すること、お客さんを知った上でビジネスに落とし込むことが重要なんだと思います。顧客体験って学術的にも解説されていますが、やはりそんなことじゃなくて、現場のお客さんの心をつかむことが大事。山田さんの企画にしたって、それが商品のターゲットの女性層が嫌いな人だったら成り立たないわけで。
佐藤:そうですね。特にアドテクやデジタルマーケティングに閉じた議論になると、数字に答えがあると思われがち。でも本当にデータだけで顧客体験をつくれるかというと、違うと思います。今回のセッションに来場される方は、顧客体験へのデータ活用に少なからず関心があると思うんですが、それぞれ何に活かし、何には使えないとお考えでしょうか? 久保くんはコンサル出身ですが、データへの向き合い方は変わりましたか?
久保:変わりましたね。CLASの前にベンチャーを立ち上げたときから、「調査データは結局過ぎた時点のものでしかない」と思うようになりました。新しいことをするとき、データから示唆を得ようとしても、古くさいものしかできないと思う。もちろん、ある程度のフィジビリティ(実現可能性)チェックはしますが、それも飲み屋とかで2・30人に聞いて、半分以上が「お金を出してもいい」といってくれたら価値があるな、という確認の仕方ですね。
瀬出井:飲み屋みたいな、リアルな場で聞いてみて反応が高ければいける、っていうのはすごくわかりますね。それこそ口コミデータなんかは裏で買える時代にもなっているので、将来の顧客候補と接して感じることのほうが確かだと思います。