変化の激しい時代、エージェンシーとどう組むべきか
アドテックに10年連続で登壇している徳力氏は、これまで議論してきた様々なテーマを振り返り、「結論としてはチーム編成がすべてだと思う」と述べる。新しい手法も次々に登場するが、自分たちのマーケティングに取り込めるかはチーム次第。変化の激しい時代、エージェンシーとどのようにタッグを組むべきだろうか? この大きなテーマのもと、それぞれ新しい形でチームを編成して実績を上げている3名のマーケターが集まった。
まず、カルビーのグラノーラ「フルグラ」の事業を担う藤原かおり氏。朝食の啓発を通した商品PRによって、その売上を6年間で30億円から300億円へと成長させた。
現在の取り組みとしては、フルグラが新しい朝の文化を作ることを謳った「100年朝食プロジェクト」を発足し、その一貫として順天堂大学との共同によるフルグラの健康価値の研究を3年計画で開始している。
続いて、EC事業運営に加えて、オフィス向けカフェ商品の定期便サービス「ネスカフェ アンバサダー」などの新規事業も手がける、ネスレ日本の津田匡保氏。同サービスは2012年に津田氏が中心となって立ち上げ、現在は42万人の規模に成長しており、ユーザー参加型のイベントなどを通して継続的な関係づくりにも力を入れている。
そして、来年創業120周年の節目を迎える吉野家から、田中安人氏。牛丼一筋の同社で初めて、肉が一切入らない野菜のみの丼ぶり「ベジ丼」の開発を主導するなど、イノベーティブな試みを連発している。
直近では、人気映画『銀魂』などを手がける福田雄一監督によるテレビCMが話題で、13分にもおよぶWeb版も好評だ。3名のうち、藤原氏は広告会社の勤務経験があり、また田中氏は自身で広告会社を創業・経営していた経験を持つ。
「この人に頼みたい」が重要
それぞれ、どのようなチーム編成で現在の業務を推進しているのだろうか? 藤原氏は前述の順天堂大学との研究を例に、プロジェクトマネージャーを中心にした組織横断的な座組みの模式図を提示する。
まず社内だけでも、研究や商品開発、マーケティング、ECなど複数の部署と協力しているため、各所とプロジェクトマネージャーがやり取りする形になっている。同時に大学側とも連携し、さらに外部への発信という観点ではデジタルマーケティングエージェンシーとPRエージェンシーの2社とタッグを組んでいる。
立ち上げ期の現状では、藤原氏がプロジェクトマネージャーの役割を担っているが、軌道に乗ったら部下に任せるつもりだという。エージェンシーを総合広告会社1社ではなく2社と連携しているのは「得意分野がまったく違い、それぞれ『この人にお願いしたい』という希望があるから」と話す。
津田氏はエージェンシーとのチーム編成について、「旧来のようなトップダウンの関係性を変えようとしている」と紹介する。
「暗黙の上下関係があるとクライアントにものを言えない雰囲気になり、結果的に機能しなかったり失敗したりする。過去の反省を踏まえて、上下関係のない円陣のような構図を描いている」(津田氏)