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MarkeZine Day 2018 Autumn(AD)

BtoB/BtoCを問わず広がるAI活用 DataRobotが実現するマーケティングの自動化

 昨今、AIを活用しマーケティングの最適化に取り組む企業が増加している。これまで属人的だった分析手法の選択や意思決定をAIで自動化し、効果の最大化を図ることが目的だ。DataRobot Japan(データロボット ジャパン)でチーフデータサイエンティストを務めるシバタアキラ氏は、「MarkeZine Day 2018 Autumn」に登壇し、これまでのマーケティング手法と比較しながら、マーケティング分野におけるAI活用について語った。

AIによるモデル構築で「離職率低下」を実現した事例も

 シバタ氏はまず、マーケティング領域における従来のデータ分析の課題を振り返った。同氏によると、従来の統計分析では「結局何をすべきかがわからない結論」が導き出されることが多かったという。

DataRobot Japan チーフデータサイエンティスト シバタアキラ氏(以下、シバタ氏)

 「たとえば、『今回のキャンペーン施策を実施することで、KPIを改善できる可能性は5%より小さい』という結論を得ても、マーケターは『だから何?』となりますよね。これでは、統計分析をマーケティングに活かす以前の問題になってしまいます」(シバタ氏)

 従来のマーケティング分析フレームワークは粒度が粗く、分析結果から知見を得るにはデータ分析に精通した人間のセンスが必要だった。シバタ氏は、「購買行動データによるRFM(Recency:最新購買日、Frequency:購買頻度、Monetary:購買金額)分析や属性データによるクラスタリングを作成しても、そのデータをもとに具体的な施策を講じることは難しかった」と指摘。ところが、技術の発展でこうした課題は解消され、現在は分析から施策までが一連の流れとしてつながっているという。具体的には、以下のようなことを実現できる。

  • 集計分析や統計分析をBIツールでレポート化し、現状を可視化することで、人間の意思決定をサポート
  • データの学習をモデル化し、AIによる分析で特定の未来を予測
  • 要因分析から最適化を行うことで解決策を導き出し、次のアクションにつなげる

 シバタ氏によれば、こうしたAIを活用した施策は、あらゆる分野で実際に進められているという。そのひとつの例がコールセンターだ。3ヵ月で50%が離職すると言われるコールセンターでは、離職予防スキームの作成が喫緊の課題となっている。

 そこで、コールセンター大手のトランスコスモスはAIの自動化プラットフォーム「DataRobot」を活用し、退職予測モデルを作成。離職防止活動を実施した。全国のコールセンター拠点から収集した学習用データで予測モデルを構築し、機械学習で退職率と理由を予測してスコア化。その上で、退職予備軍リストのオペレーターに対しては面談を行うなどの離職予防活動を行ったという。その結果、離職率は大幅に低下した。

予測に基づいた精度の高い意思決定を自動化

 続いてシバタ氏は、「AIは頻度と精度の高い意思決定を自動化してくれるもの」だと説明した。従来のデータ分析は都度目的に応じて分析を行うものが多く、分析頻度も少なかったという。また、分析手法も「集計」「相関分析」「多変量解析」「重回帰分析」などが中心で、分析結果から人間が判断し、意思決定を行っていた。

 シバタ氏によれば、そうしたデータ分析は「属人的で職人芸」な領域で、「RFM分析による顧客行動の理解」など、専門知識や経験が必要とされていた。

 一方、AIが実用化レベルに達している現在は、定常的な分析が可能だ。分析手法も「特徴量生成」「機械学習」「アンサンブル学習」「モデル解釈」など、データさえあれば定常的に分析し、リアルタイムで予測することができる。さらに、パターンをモデル化すれば、導き出された予測に基づいた自動的な意思決定も行える。

モデル生成のプロセスを自動化する「DataRobot」

 AI精度の高度化にともない、課題となっているのが「AIのブラックボックス化」だ。AIの精度向上とアルゴリズムの複雑性は比例する。そのため、求めていた結果が導き出せたとしても、「どのアルゴリズムを使って結果を導き出したか」「なぜその解釈をしたのか」が説明できないケースが頻繁に起こる。

 DataRobotが提供するノンプログラミングで利用できるAIプラットフォーム「DataRobot」は、そうした課題を解決できるひとつの手段だとシバタ氏は語った。

 「『DataRobot』は、モデルの出力の解釈・説明をサポートする独自のグレーボックス化技術の開発に注力しています。この点が、他のAIプラットフォームとは一線を画すところです」(シバタ氏)

 他にも、「DataRobot」には、モデル生成のプロセス全体を自動化できるという特徴がある。一般的な機械学習ツールでは、機械学習フローをデータサイエンティストが設計する必要があるが、同プラットフォームでは、自社データから高精度な機械学習モデルを自動的に構築。それだけでなく、モデルを実際の事業へ導入するプロセスまでを自動化できる。

Marketoとの協業でデータ統合を強化

 DataRobotは今後、マーケティングオートメーション(MA)ツールを提供する米Marketoとの協業を計画しているという。分析から実際の行動までを自動化する上で、Marketoが有するデータの統合技術は強力な武器となる。エンゲージメントマーケティングプラットフォームである「Marketo」は、ERPやCRMといった基幹システムやタスク管理、メールといったアプリケーションのデータを、ブリッジツールで統合できる。

 こうしたデータ統合によって、顧客獲得から購買に至るまでのマーケティング施策の精度は高まる。たとえば、顧客獲得のステージでは、データ(コンタクト先)は多いが項目は少ない。

 一方、顧客獲得後のステージに関しては、データ自体は少なくなるが、項目は多様化していく。シバタ氏は、「各ステージのデータ特徴を認識し、それぞれのステージでどのようにAIを活用していくのかを見極めることが大切です」と述べた。

MAとの連携でキャンペーン施策のレスポンス予測が可能に

 セッション後半では、「DataRobot」を使った実際の機械学習モデルの構築について、デモを交えながら紹介された。最初に、複数の変動因子と結果を含む「教師データ」を準備する。最低でも数百行は用意する必要があり、数万から数十万行のデータがあると良いとされる。

 次に行うのは、予測モデルの構築だ。与えられた教師データから、AIが条件と結果の関係を表す予測式を自動で見つけ出す。これに並行して、予測データも準備する。結果を導き出したい条件などは、人間が準備して予測モデルに登録する。そして最後は、AIが自動で予測値を計算する。

 こうしたモデルをマーケティングに活用する動きは、BtoBとBtoC両方の領域で広がっている。その一例が、キャンペーンデータを活用したキャンペーンレスポンス予測だ。

 過去のキャンペーンデータからレスポンス予測モデルを構築し、見込み客リストを分析して次回キャンペーンのレスポンス率を予測。その上で、レスポンス確率の高い順から、ダイレクトメールやターゲティングメールなどを使ってアプローチするといったものだ。

 シバタ氏は、「こうしたアプローチは、既存の属人化したマーケティングよりも高精度で、細分化して実行できるのが強みです」と語った。

 また、顧客の行動履歴などをもとに、顧客推奨度を予測することもできる。たとえば、特定の製品やサービスに対する顧客のロイヤリティを「推奨者」「中立」「批判的」で判断し、個別に最適化されたプロモーションオファーを実施するといったものだ。この場合、顧客推奨度の予測はAIが、個別プロモーションはMAツールが担う。Marketoとの協業によって、こうしたマーケティングも実現可能となる。

AIは人間の弱いところを補う手段でしかない

 ここで注意したいのは、最後のアクションだ。シバタ氏は、「たとえば、過去の顧客解約データを活用して予測モデルを構築し、解約確率が高いメンバーを抽出したとします。しかし、顧客が既に解約すると心の中で固く決めているならば、この場合手の打ちようがありません。重要なのは、予測した“先”のアクションを用意しているか、またそれを分析することに意味があるかどうかです」と述べた。

 シバタ氏曰く、「AIは人間の弱いところを補う手段」だという。データと課題設定を行えば、AIは過去のデータから学習し、可視化や予測をすることができる。多くの変数があっても、定量的・客観的で、人間より高精度であることが多い。その一方で、「未知の事象に柔軟に対応する」「少ない情報でも、過去の経験から予測する」といったことは困難だ。

 最後にシバタ氏は、「人間とAIがお互いの特性を理解して補完し合うことが、新たな次元を生み出すことにつながります」と語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)とOT(Opera...

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29358