可視化した顧客行動を“顧客軸”で解析
CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を提供するプレイド。同社は、KARTEによって「データの価値を最大化し、顧客満足を最大化する」ことを目指している。
そもそも、なぜ企業はCXに取り組む必要があるのだろうか。三浦氏は、「CXを積極的に進めるリーダー企業と、遅れている企業との間では年平均成長率に大きく差が出ている」と述べた。Forrester Researchのレポートによると、CXは新規顧客の獲得だけではなく、アップセルも促せるという効果が実証されている。
「世界では、CXは既にやらなければならないテーマとして掲げられています。今日は皆様のお客様にとっての“CX”とはどのようなものであるか、考えていただくきっかけとなればと思います」(三浦氏)
そのCXを実現するプラットフォームがKARTEだ。KARTEでは、タグ(サイト)やSDK(アプリ)を埋め込んでおくことで、「顧客がどのページを閲覧中なのか」「どのくらいそのページに滞在しているのか」「過去に訪問したページはどこか」「顧客の関心は何か」などをリアルタイムで確認することができる。
大切なのは、可視化した顧客行動を“顧客軸で解析する”ことで、「顧客体験の改善」につなげていくことだと三浦氏は述べる。
「KARTEの強みは、第一にお客様の情報を解像度高く知れること。そして、お客様を知ったうえで、お客様に合わせに行けることです。可視化したデータを活用することで、最適なチャネル、タイミング、内容でお客様とコミュニケーションを取ることが可能になります」(三浦氏)
「個人に寄り添いながら導く」が可能に
三浦氏はKARTEの活用事例として、マネックス証券、キリン、ライトオンの事例を紹介した。たとえばマネックス証券の場合、初回取引時にユーザーがどこで迷っているのかをKARTEで把握し、改善することで初回取引率を20%改善したという。
また実店舗を持つライトオンでは、会員情報、購入履歴に基づき、ECサイトで個人に合わせた商品をリコメンドしているという。このほか、旅行など在庫があるサービスについては、KARTEでページ閲覧人数をKARTEで把握し、リアルタイムに「◯人が購入を検討しています」などのメッセージを表示することで、ユーザーの背中を押すという施策に利用しているという。
またオウンドメディアなど、直接CVにつながらない施策においても役立つという。たとえばキリンでは、「一番搾り」のブランドサイトでKARTEを導入し、サイト閲覧者がどのような興味を持って来ているのか、記事コンテンツが購入意欲を促進させているのかなどを見ているという。記事コンテンツの場合、読了のタイミングで会員登録を促す施策につなげることも可能だ。
KARTEだけでPDCAサイクルを回せるように
KARTEは2018年3月より、アプリへの対応を開始。メルカリなどのサービスが導入している。同時に、オーディエンスデータ、マーケティングオートメーション(以下、MA)など外部との連携も開始している。三浦氏は今年リリースした新機能、および予定している新機能について紹介した。方向性は、「定性」「記憶・解釈」「定量」だ。
まず「定性」として、エンドユーザーの画面をリアルタイムで表示する機能を追加。これにより、離脱の原因を探ったり、顧客サポートに利用することが可能になるという。「記憶・解釈」としては、スコアリングのアルゴリズムでカスタマイズできる機能を追加。どのようなコミュニケーションを取ってきたかなど、ユーザー行動の軌跡をたどることが可能になる。そして「定量」として、アクションの後の”振り返り”を行える機能も充実させた。
「これまでBIツールに頼らざるを得なかった部分を、KARTEではすべてカバーしています。PDCAサイクルがひとつのツールで回せるところは、我々の強みです」(三浦氏)
三井不動産のリアル共生型ECモール「アンドモール」
後半登場したのは、三井不動産の中田敏文氏。同社は、ファッション、インテリアなどを取り扱うECモール「Mitsui Shopping Park &mall(以下、アンドモール)」でKARTEを導入し、同社が考える顧客体験をアンドモールで実現した。
2017年11月にローンチしたアンドモールは「リアル共生型」として、店頭でのタブレット接客(商品がないときはオンラインの在庫から販売する)、店舗在庫出荷(オンラインで注文した人に店舗から在庫を直接届ける)などに取り組んでいる。また商業施設の運営ノウハウを生かし、新作商品を試着した人にアンドモールで使えるクーポンを配布するなどの施策も行っているという。「商業施設の場を生かして、単純なネット通販にとどまらない、新しい顧客体験を提供したい」と中田氏は言う。
今、商業施設は単なるショッピングの場から、時間・体験を共有する場へと進化しているという。次なる体験価値とは何か――中田氏は、「我々も必死に考えている」としながら、「一人ひとりのお客様主体の方向性になっていくのではないか」と考えを述べた。
「これまでは、マスのニーズに合致するモノ・サービスを提供できていれば、お客様に来店いただけていました。ですが、もうそれだけでは通用しない。これからは、お客様と一緒に空間を作り上げていく必要があります」(中田氏)
中田氏は理由として、ウェブルーミングに代表されるように賢くなる消費者、Amazonの「Amazon Go」など店舗の急速な進化、ネットとリアルをはじめとしたボーダーレス化を挙げた。
顧客の「見える化」と「つながり」をKARTEで実現
三井不動産がアンドモールのマーケティングプラットフォームとして選んだのがKARTEだ。「オンライン上で一人ひとりのお客様に合わせた顧客体験を提供する、という考え方が合致していると思った」と中田氏。
活用は大きく2つ、「お客様の見える化」と「お客様とつながる」だ。具体的な施策としては、1)初回来場者にポップアップでサイトの特徴を伝える、2)アンケートの実施、3)買い回りスタンプラリーの3つを紹介した。
1)では、ポップアップ表示をした時、しない時をA/Bテストで比較したところ、ポップアップ表示時のCVRが30%改善したという。
2)では、プレイドの提案で実現したもので、購入までのサイトの使い勝手と、商品についてのアンケートを実施している。「インセンティブがないのに、回答率が高くて驚いた」と中田氏。前者に対しては50~60%、後者は76%が回答しており、いいフィードバックが得られているという。
新たなトレンドを生み出す商業施設へ
効果は出ているが、導入・運用では苦労もあったようだ。ボタンを一時的に消す、文字でメッセージを入れるといったことが「あまりにも手軽にできてしまう」ことから、事業部内各チームの意見を取りまとめるなど、調整するという点で、内部の運用体制作りで苦労したという。
また施策を行ううえでは、UI/UXについて骨太のコンセプトを明確にし、事業室内で共有したことが重要だったという。
「コンセプトが明確でなければ、クリエイティブや文言など細かい部分にブレが生じてしまいます。そして、それがサイトのブランディングやコンセプトのブレにもつながる。最初にコンセプトを共有していくことがなによりも重要です」(中田氏)
中田氏は最後に、「商業施設にとって、流行を捉えた商品・サービスを提供していくことは重要なポイントです。ですが、これからはただ流行に乗るのではなく、アンドモールから新たなトレンドを生み出していきたい」と展望を語り、セッションを締めくくった。