KDDIが挑む!生成AIで変わる広告クリエイティブ
「早速ですが、当社の広告クリエイティブ生成AIシステムが出力したバナーを紹介します。デザイナーが作ったバナーを100点とするなら、65〜70点というところではないでしょうか」。そう聴衆に語り掛けるのは、KDDIのコミュニケーションデザイン部の馬場 治氏だ。

【写真右】KDDI コミュニケーションデザイン部 グループリーダー(※登壇当時) 馬場 治氏
auのコミュニケーション戦略を担当し、「三太郎」「高杉」シリーズなどの人気キャンペーンを手掛けた実績を持つ。2025年4月よりUXデザイン部長
馬場氏が開発に携わる、広告クリエイティブ生成AIシステムの操作手順はシンプルだ。利用者がバナーサイズやブランド種別などの条件を設定、使用したい素材画像のプロンプトを入力し、生成された画像から使用するものを選択。キャッチコピー用のテキストを入力すれば、ブランドガイドラインに準拠したバナーが半自動で完成する。ターゲットユーザー属性(性別、年代)、ネガティブプロンプト(画像を生成する際に除外したい要素)、注釈、CTA(行動喚起)なども設定が可能だ。

生成されたクリエイティブは、デザイナーの手によって仕上げる必要がある。しかし、馬場氏は最初から100点満点のシステムを作れるとは思っておらず、現時点では十分だと考えているという。そして将来的には、バナー制作の全工程をシステムがサポートし、非デザイナーでもプロレベルの広告バナーを制作できるようになることが理想だと語る。
同システムに限らず、KDDIは生成AI活用に積極的な企業だ。展開する3つのブランド「au」「UQ mobile」「povo」のうち、auブランドではプロモーションへの生成AI活用に早くから取り組んでいる。また、UQブランドではホームページやランディングページのコンバージョン最大化のための分析やスコアリングにAIを活用するなど、先進的な取り組みを行ってきた。

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外部ツールではダメだった?独自開発した理由
KDDIがAIに明るい企業とはいえ、広告を担当するコミュニケーションデザイン部が、なぜシステムを開発したのだろうか。
馬場氏によると、広告コミュニケーションにおけるブランドイメージの統一に必要な手間や、大量にクリエイティブを制作する業務負担、過去配信データの活用不足といったよくある課題が、本プロジェクトの出発点となったという。これらの課題を解決する手段として、クリエイティブの内製化を促進する生成AIの活用を検討し始めた。
しかし検討を進める中で、本プロジェクトで重視する3つの要素(1)ブランド遵守(2)データドリブン(3)作業効率化のうち、特に(1)と(2)を十分に満たすサービスやツールが、国内外含めて存在していなかったという。
「当社では、ブランドを好きになっていただけるかということを非常に重視しており、『ブランド好意度』をコミュニケーション活動の最上位KPIとして位置付けています。クリック率やコンバージョンといった短期的な施策のKPI達成を目指すだけでは、長期的な事業成長には貢献できません。広告コミュニケーションがブランドにどう寄与するか、そしてブランド毀損をしてはいけないという考えを持ち合わせることが必要だと考えています」(馬場氏)