テレビ局に迫る“停波”の危機
先日、「【業界人間ベム】2025年・広告マーケティング業界7つの予測」を年始予測として寄稿した。
ところが今、テレビ・広告業界に大きなインパクトを与える出来事がまさに起こっており、これによりベムが予測した流れがドライブすると思われるため、急遽追記することにした。
芸能人N氏のハラスメントはフジテレビの経営に、それどころかテレビ業界全体に激震を起こしている。これだけスポンサーが引いてしまうと、まずは経営体力の弱いFNN系のローカル局から経営維持が困難になるだろう。
ベムはSNSで「新聞や雑誌は細々とでも事業継続は可能だが、テレビは広告だけが収入源であり、事業継続のコストがかかるので、ある時点で停波の憂き目にあうだろう」と書いたが、そのとおりのことが起きると思われる。そしてこの現象がフジテレビのみに留まるとは思えない。おそらく民放全局に大きな影響を与える。
テレビから広告予算が一斉に引く。その先に待ち構えるもの
年始寄稿では、次の項目を予測として提示した。
【1】電通対アクセンチュアの図式が本格化
【2】有効な広告枠の減少が顕在化する
【3】動画CMの受容性に問題発覚
【4】広告会社は「営業のビジネス開発力」が試される
【5】リテールメディアに大変革 アップファネルとつながる
【6】「SNS」×「TV&ストリーミング」による因果関係がデータで立証される
【7】AI活用は中堅代理店生き残りの最後のチャンス
【番外編】2025年に考えたい、「新・トリプルメディア」
2025年予測の中ではこの急激なインパクトまでは予測していなかった(まだまだ修行不足だと反省している)。ただ、2つめに挙げた「有効な広告枠の減少」は図らずも視聴率が落ちることではなく、広告主自らテレビから離れることで起こってしまうことになる。
日本の広告主の多くは「宣伝広告費はコストだ」と思っている。だから出稿先がなくなっても出費が減ってよかったくらいに考えている。しかし欧米のブランド管理者だったら、売上目標があるのだから、そのための広告出稿ができないということは大変なことだ。当然、宣伝広告費はコストではなく「投資」だからだ。
さらに日本の広告主は、いまだに「テレビ一強時代」の仕組みの中にいる。広告主ももちろんテレビ離れが激しいことは知っている。テレビだけでは届かないターゲットがいることも知っている。だからテレビからYouTubeやTVerにCM枠をシフトする。それだけだ。相変わらずテレビCM案を複数の代理店に提案させ、選ばれた代理店がキャンペーンのほぼ全体を請け負う。これでは何らテレビ一強時代の習慣と変わらない。ところが、彼らは別にそれがおかしいとも思っていない。
この仕組みから脱却する必要があることには、3つめに挙げた「動画CMの受容性の問題発覚」によって気づくことになるだろう。