YouTubeはテレビの代替にはなり得ない
そもそもGoogleはYouTubeプレミアムをサービス化している。つまり「CMがウザかったら、どうぞお金払って排除してください」と言っているわけで、CMの受容性など考えてはいない。(これはテレビ画面にYouTubeがもっと進出したら少しは変わってくるだろうが、まだテレビ画面での仕様やリモコンの限界でブレイクスルーする時期にない。)
つまり、テレビからYouTube(TVerの広告枠の量はまだ補うレベルにない)にシフトしても、テレビと同じ効果を得ることはできない。むしろ、むやみな出稿はおそらくマイナスの効果を生むだろう。
これは誰だってわかる理屈だが、パッシブな視聴態度のテレビと異なり、YouTubeはサムネイルを見て「このコンテンツを観よう」とアクティブな視聴態度にある。その際のCMの受容性が違うのは当たり前だ。
テレビCMの視聴者の受容性は、長い時間をかけてテレビ局と広告主、広告代理店が一緒になって努力してきた。テレビ黎明期、多くは1社提供で、ベムは『鉄腕アトム』(※日本最初の長編テレビ用連続アニメ)から観てきているので憶えているが、『鉄人28号』のテーマソングの最後は「グリコ、グリコ。グ~リ~コ~♪」だった。現在でもカメラで視聴者の画面注視率を計測しているデータでは、1社提供では番組からCMに移っても画面注視率が1社提供でないものより落ちないことを確認している。
アメリカに行ってテレビを観るとわかるが、お金のかかったナショナルクライアントのCMもあるが、ローカルのカーディーラーなどのCMが非常に多く、まあお世辞にも見栄えのいいものではない。それでも、昔からケーブルTVに金を払うことに慣れている向こうの人は、コンテンツ制作に金がかかっていることがわかるので、CMが入ることを理解している(まあ仕方ないこと、と頭で理解している)。その点、最初から無料で番組が観られる日本では、CMを観てもらえる努力が必要だった。いかにおもしろいCMにするかや、CMの量、入れ方も含めて理解というより「視聴者との和解」を進めた。
それだけ、CMの受容性は広告業界にとって重要なことだった。その重要なことに対してあまりに無神経なことに、ベムは少々怒りを覚えている。
そのうえ、このCMの受容性が低いと思われる枠は、テレビよりはるかにCPMが高い。
各広告主は両方買っているのだから当然計算していると思う。もちろんターゲットCPMにすると若年層になるとテレビは高い(そもそもそういう計算をしたのはベムだw)。
ただ、デジタルのターゲティングと、テレビのGRPで基本ターゲティングができない買い方を単純比較してはいけないのだ。ベムはテレビでの「準ターゲティング」という考え方を提唱しており、インプレッション数で買い付けることでこれは実現できるが、この話は別途語ろう。