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ソーシャルメディア その進化と活用

【Twitter活用で売上4倍の事例も】シャトレーゼが挑んだオーガニック運用で口コミを増やす仕組み

 菓子メーカーのシャトレーゼがTwitter公式アカウントを開設したのは、2017年8月。店舗への来店促進と顧客のファン化を目的に運用してきたアカウントは1年で12万以上のフォロワーとつながるまでに成長。実売にも直接的な影響を与えるようになったという。販促企画課の岩井氏にロイヤルカスタマーとつながり、ユーザー投稿と口コミを増やす仕組みについて迫った。

 山梨県甲府市に本社を置く菓子メーカー、シャトレーゼ。国内に500店を超える店舗を構え、近年では東南アジアを中心に60近くの店舗を展開し、海外への出店も加速している。シャトレーゼが若年層への認知拡大と来店促進のためにTwitter公式アカウントを開設したのは2017年8月。10月より実質的な運用を開始した。現在、フォロワー数は12万を超え、Twitterを活用したキャンペーン告知の成果として前年比で4倍の売上につながったケースもあるという。プロモーション領域の責任者であり、公式アカウント開設から携わっている岩井一紘氏に、オーガニック運用のポイントと実際の取り組みについて聞いた。

株式会社シャトレーゼ 販促企画課 課長 岩井 一紘氏
株式会社シャトレーゼ 販促企画課 課長 岩井 一紘氏

広告予算ゼロからのTwitte公式アカウント運用

 岩井氏によると、これまでシャトレーゼではネット広告にかける予算はゼロだったという。プロモーション施策としては、販促費という枠組みの中で、主に新聞折込みやポスティング、店頭チラシ配布などのインストアマーケティングを行っていた。シャトレーゼでは広告宣伝費を最小限にとどめ、その分を素材と製法に投資するという戦略をとっているためだ。しかし、それだけでは特に若年層の集客が厳しくなってきていた

 岩井氏がシャトレーゼに入社したのは2013年。チラシやPOPの企画・制作に携わる傍ら、SNSを活用した施策を温め続けてきた。Twitter公式アカウント開設の追い風となった出来事が起きたのが、2017年4月のことだ。あるユーザーのTwitter投稿をきっかけに「シャトレーゼがあるのは田舎か?」という話題がネット上で盛り上がり、トレンドの1位を「シャトレーゼ」が飾った。翌日からの来店データを確認すると、SNS利用者数の多いエリアでは若年層が顕著に伸長していたという。シャトレーゼでは「カシポ」という会員制度を設けているが、非会員の来店が目立った。それだけ新規顧客が訪れていたということだ。

 さらに、Twitter上の社名関連の投稿を調査してみると、競合と比べてみても多く、またその内容もポジティブなものがほとんどであることがわかった。Twitterには若年層にアプローチする素地があると判断。これらのデータを材料に、公式アカウントの開設に至った。運用担当者に抜擢されたのは、数年前まで工場に勤務していた女性だった。販促課で働いていた彼女は、社内公募に手を挙げた。しかし、彼女自身はチラシ制作を担当しておりSNSの知識はなく、自分のアカウントすら持っていなかったという。

 「最初は同じ部署の人にもTwitter運用の価値を理解してもらえなかった」と岩井氏。今までは、キャンペーンとなれば1店舗あたり数万枚というチラシを撒き、瞬間的な集客と売上は見込めた。しかし、デジタルの施策はすぐに山を作るというものではなく、平均値を上げていくものだ。そこで成果の可視化のためにも「ログを取っていくことが大切」だと岩井氏は語る。コメント返しやフォロー返し、RTなどを可能な限り丁寧かつ地道な運用を続け、少しずつ実績を積み上げてきた。その結果、社内からの評価も良い意味で変わってきたという。

2017年と2018年のTwitter上での口コミ数の変化(1ヵ月間)
2017年と2018年のTwitter上での口コミ数の変化(1ヵ月間)

Twitter運用方針とキャンペーンの方向性

 Twitter公式アカウントの運用にあたり岩井氏が目標として定めたのは、「ファンと口コミを増やし、来店を促進する」というもの。UGC(=User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ、ユーザー自身による投稿)を口コミとして広めた上で、来店を促進するという流れを生み出すことだ。

 「KPIは自分たちで掲げました。小売業ですし、そこはやはり20・30代のお客様の来店数を見ています。かけられる予算も販促費として店舗と紐付けたものしかありませんでしたから、オーガニック運用をメインに来店のきっかけづくりを狙ってやっています」(岩井氏)

 そのための投稿の方向性も、「より良く見せようとする広告的内容ではなく、商品力を素直に伝えるユーザー目線の画像でエンゲージメント率を高める」ことや「参加型のコンテンツ企画」などを意識していった。一例として「レモン・ザ・スーパー」という酸っぱいアイスを使った簡単なカクテルの作り方を紹介したものがある。

 自社の商品力を活かしつつ、共感を生む画像(この場合は動画)をオーガニックで投稿する。それを真似て作ったユーザー投稿を公式アカウントでRTする。公式からRTされると、その投稿だけエンゲージメントが跳ね上がる効果があるという。そのため、ユーザーの承認欲求が満たされ再び自ら投稿するようになるという流れが生み出される

UGC創出のプロセス
UGC創出のプロセス

 公式アカウント開設当初は「シャトレーゼの公式があったんだ?」という程度のユーザーの反応が、3ヵ月後には「買いに行ったよ」「美味しかった」という感想が寄せられるようになり、半年経った頃には「Twitterを見て買いに行きました!」というものが増えていった。

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この記事の著者

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/29472

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