動画広告は「スマホ前提」がマストに
動画メディアやSNS上で、私たちは日々動画広告を目にするようになった。動画広告市場は年々150%程度の伸びを見せており、2017年時点で1,374億円、2020年に2,700億円、2023年には3,485億円にまで伸びる見込みだ(参照)。また、現時点で7割、2023年には9割近くがスマートフォンでの視聴になると予測されており、今後は目的に関わらず、スマートフォンでの接触を前提に考えるべきだということがわかる。
さらに、“広告”という形態でなくとも、企業や商品のブランデッドコンテンツとして動画に接する機会はこの数年で増加した。かつて、企業が動画でメッセージを伝える形態はテレビCMに限られていたが、今ではメディアも形も多種多様だ。15秒、30秒という尺にとらわれず、また枠の制限もないオンライン上の動画は、発展するターゲティング技術との掛け合わせで、自由自在に使えるともいえる。
アドテック東京2018でのセッション「動画活用のシナリオ~認知から購買まで」において、モデレーターを務めたサイバーエージェントの有賀翔平氏は、「今や認知から購買まで、動画の活用目的は大きく広がっていると同時に、様々なオンラインチャネルがテレビに加わっている。そんな中、マーケティングで動画をどのように活用すべきか、まだ正解のない問いに対する各社の実践をうかがいたい」と切り出す。
最初のテーマは、ずばり「動画は売上につながるのか?」。まず有賀氏は、自身や他社の実践する内容を踏まえて作成したというファネルを提示する。
動画活用は向き不向きがあるが、無視できない
企業から動画でコミュニケーションを図る場がテレビしかなかった時代、動画活用の目的はおのずとファネル上部の「認知」に限られた。だが現在、図のように「興味・関心」「比較・検討」「購入」、さらにはコンバージョン後の「ファン化」にまで、オンライン動画がエントリーしている。同時に、認知の部分にも、一般的なインフィードやインストリームなどの動画広告、バイラル動画などが該当するようになっている。
「動画広告市場は伸びているが、まだ動画の活用に成功の定石があるかというと、各社探っている最中というのが現状だと思う」と有賀氏。
取り組みに対する実感について、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの青木耕平氏は「動画の活用は向き不向きがあるなというのが、率直なところ。ただし、無視できないというのは明確」と話す。同サイトは物販の傍ら、スタッフが等身大の目線で語る記事コンテンツに注力している。その世界観に乗せて、企業の商品やサービスをユーザーに紹介するBtoBの広告事業が非常に好調だ。
「ECの観点では、買いたいものが決まっていない人はまずザッピングしたいので、動画は不向きな気がしている。決まっている人には、説明動画は一定の効果はあるが、必ずしも動画でなければというのは、まだまだ少ないと感じている。むしろ、外部のプラットフォームを活用する際、僕らを知って理解してもらうのに動画が果たす役割は大きい」(青木氏)