適切なタッチポイントが作れているか
2.組織
大内氏は続けて、「組織」における問題に言及。プロジェクトチーム内では、「総論賛成・各論反対」を理由としたせめぎ合いが起こり、プロジェクトが円滑に進まないことがあるという。こうした企業の現場では、横断組織と事業部の距離を詰めていく取り組みが必要になる。
「チーム間で密に連携していくことが大切です。たとえば、金融業界のある企業では、各担当者が横断組織に出向するなどの取り組みをしています。また、リーダーがミッションを顧客視点で持ち、それを力強く宣言し続けることも重要です。
こうした体制を整えた上で、最初に課題をどう抽出するかヒアリングしたり、事業部参加型でワークショップを開催したり、カスタマージャーニーを描いたりといったことを行っていくことが必要になってくると思います」(大内氏)
3.データ
次に、「データ」の課題に触れた大内氏は、企業の現場ではデータがそもそも取得できていないことが多いと指摘した。つまり、顧客行動と触れ合うコンテンツとなるタッチポイントが上手く作れていないケースが多いそうだ。これでは、顧客のデータ分析をしようにも、前提として顧客が望んでいるタッチポイントが用意できていないため、顧客の反応の良し悪しを評価することが難しい。
コニカミノルタジャパンでは、デジタルマーケティングマーケティングサービス統括部がカスタマージャーニーにもとづき、Webを中心としたコンテンツ制作やセミナーを行うなどして、積極的に顧客とのタッチポイント創出を行っているという。
「特に、アナリティクス担当者の場合は『データ』を主語にして考えてしまう傾向があります。あくまでデータは結果で、主語は『顧客』です。まずは顧客がどのようなことに関心を持っているかを理解してから、それをもとにタッチポイントを設計。そしてコンテンツ制作につなげていくことが重要です。
社内でカスタマージャーニーを描くワークショップを実施することも有効です。顧客とのタッチポイントからどのようなデータが取得でき、それがコンテンツ制作につながるものかどうかを見極める。さらに、取得したデータをスコアリングすることで貢献度を可視化し、これをもとに分析担当者とシナリオを作り、仮説をもとにPDCAを回していく取り組みが必要です」(大内氏)
異なる分析基準が「顧客理解」を曖昧に
4.技術
4つ目の「技術」の問題点について、大内氏は、組織づくりやプロジェクトチーム内の連携の重要性を認めた上で、根本的な技術の差がもたらす影響は大きいと話した。
大内氏曰く、近年、複数のデバイスをまたいだサイト利用が増え、顧客のセッション(1回の訪問における行動)が分断されている。一方で、多くのアクセス解析ツールはセッションを基準に設計されており、それぞれのセッションにおける数値がどう変動したかを分析している。実際は、顧客行動がセッションで完結することは少なくなってきているため、セッション単位ではなく顧客単位でCVR(コンバージョン率)を見ることが必要だという。
大内氏は実際に、Google Analyticsにおける通常レポートのCVRと、CookieのIDから引用した同様のデータを比較した。その結果、後者のほうがCVRが高くなることが判明した。
「このように、本来の設計思想が違う技術を使って顧客を理解しようとすると、見落としてしまう部分が多くなります。ある意味、本当の顧客が見えなくなってしまうということです」(大内氏)
さらに大内氏は、同じサイトを参照していても、事業部によって顧客行動が違って見えてしまうことがあると指摘。「ビュー」「プロファイル」「レポート」とデータを区切って管理していく中で、サイトの貢献度が曖昧になってしまうという。
こうした背景のもと、最近では分析担当者が一人ひとりの顧客行動を一貫して追っていくような取り組みを行っている企業が増えてきているそうだ。顧客一人の様々な行動を詳細に分析することで、改善案を出し合い、解決策につなげていくという。