昨今、様々な業界で取り入れられ始めたサブスクリプションモデル。これまでの「単品通販」のような定期購入サービスモデルとの違いはどこにあるのでしょうか。今回は、オイシックス・ラ・大地 執行役員 CMT 西井敏恭氏に、サブスクリプションモデルが普及した要因や、これまでのマーケティング概念の変化について伺いました。
「食の体験」を変える定期宅配サービス

――はじめに、西井さんの現在のご担当領域を教えてください。
西井:執行役員という立場で、「EC事業本部」「システム」「海外事業部」の3部署を担当しています。入社したときはCMOとしてEC事業を中心に見ていたのですが、2年ほど前からはCMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)として、テクノロジーを活用できるような組織の構築にも関わっています。
――御社のサブスクリプションモデルについて、ご説明いただけますか?
西井:弊社で展開しているサブスクリプションモデルのサービスは「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3つ。それぞれ異なるブランド設計がされているのですが、どれも定期宅配サービスであることには変わりません。
今回は「Oisix」にフォーカスしてお話ししようと思います。まず、お客様には「おいしっくすくらぶ」という会員に登録していただきます。登録後は、毎週総額5,000~6,000円相当の食材が入った定期ボックスが送られてくる仕組みです。週によっては定期ボックスの郵送をキャンセルすることもできますし、食材の選択や増減もフレキシブルです。
サービスの特徴を挙げるとすれば、「提供するユーザーメリットが価格にはない」ということです。会員の方は、食材が通常より低価で購入できるわけではありません。じゃあ何が提供価値なのかと言うと、普通のスーパーで買えないような安全でおいしい食材が届くことによって、「豊かな食卓が実現できる」という体験です。
これまで家庭で料理をする際、まずはスーパーに足を運び、そこで食材を選んでいましたよね。弊社のサービスでは、定期的に食材をお届けすることで家庭ごとの食の傾向を理解し、買い物をイチからスタートする体験を、最初からカートに商品がはいっている体験に変えます。
これによって、スーパーでは買えない有機野菜をはじめ、珍しい野菜などの食材を使った料理や「ミールキット」を中心とした、これまでチャレンジできなかった食事を自宅で楽しめる機会を提供しています。
データを活用し、改善策を即座に打つ
――それぞれのサービスで、ボリュームゾーンや利用方法はどのように変化するのでしょうか?
西井:「Oisix」の主な利用者層は30代主婦で、「大地を守る会」はもう少し上の40代後半以降が主な利用者層です。「らでぃっしゅぼーや」は、この2つのサービスのちょうど中間層にあたる方々を中心に利用いただいています。
――異なる層から得られる利用データは、どのように活用されていますか?
西井:まず、EC業界の中でも、弊社が保有する食に関するデータ量は非常に多いです。たとえば化粧品だと、購入ペースは平均して3ヵ月に1度程度。食の場合は、少なくとも1週間に1回、かつ購入する食材の種類も多岐にわたりますから、取り扱うデータ量は多いと言えます。
弊社では、EC事業部の中にデータを分析・活用するチームを備えています。定期ボックスで提示された食材の中で、お客様がどのような食材を多く削除しているのかなどをモニタリングし、仕入れ量を最適化することで廃棄量の削減などにつなげています。
――各サービスで取得したデータの統合などもされているのでしょうか?
西井:データを統合して活用する、というところまではまだ着手していません。我々が取り組んでいるのはアマゾンのような商品単位の最適化ではなく、あくまで「食卓の最適化」です。そのため、ブランドによって、データの活用法は少しずつ異なります。
ただ、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやとの経営統合(参考リンク)を経た今、食に関するデータのプラットフォーマーとしては大きな強みを持っていると感じています。たとえば、解約率の改善にしても、各サービスのデータを横並びにして見たとき、課題が非常にわかりやすく浮き彫りになるんです。カテゴリーあたりの利用率や一回の購入あたりの商品単価が数値として出るため、すぐに改善の打ち手を出すことができます。
じゃあ、仮にECモールで同じ商材を展開したらどうなるかと言うと、おそらくそう上手くはいかないと思います。我々の戦略の中心にあるのは、あくまでも食のサブスクリプションコマース。逆に言えば、これに関してのノウハウは他社よりも優先して蓄積してきたという自負があります。
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富安 純人(編集部)(トミヤス スミト)
MarkeZine編集部
上智大学ポルトガル語学科卒業後、新卒で翔泳社に入社。プライベートではサッカーブログを運営し、週末は寝る間も惜しんでサッカーを観る欧州サッカーオタク。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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