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イベントレポート

Advertising Week New York 2018で、Googleが語ったデータの取り組み


GCPのデータ基盤がマーケティングにもたらすものとは?

3、Marketers in Conversation : How to Get More Value from Your Data

 このセッションは、Google Cloud の Global Strategy Lead、Michelle Kraemer氏をモデレータとし、GCP(Google Cloud Platform)ユーザー企業4社からそれぞれの責任者がパネラーとして登壇するパネルディスカッション形式で行われました。

 Michelle氏はまず冒頭で、前日に行われたGCP活用についての別のセッションをおさらいすることから話を始めました。前日のセッションでは、GCPの活用メリットとして「1つの場所にすべてのデータをまとめると、そのデータをよりよく分析してアクティブ化できるようになる」と述べ、さらにGCPで構築されたデータ基盤での分析により、「カスタマージャーニーの理解(可視化)」「ビジネス成果の予測分析」「顧客体験のパーソナライズ」の3点が可能になると述べました。これを踏まえ、本セッションでは実際に活用しているユーザー企業4社の責任者を交えたディスカッションが開始されました。

クラウドのデータ基盤はなぜ”マーケティング担当者“にとって適切だと思うか?

 Michelle氏は、最初の質問で「クラウドはシステムの人たちのためだけではなく“マーケターにとってのメリット”は何か?」と率直に問いました。

 サムスン電子アメリカ データ&マーケティングテクノロジー責任者のJesse氏はそれに対し、「まず、実際により多くのデータを処理する速度が従来のシステムよりもはるかに速い。そしてコストが安い。これからも、より多くの詳細なデータを入れていく予定にしている」と述べました。

それに対し、オフィス・デポ デジタルマーケティング責任者のDarren氏は、「まったく同感です。さらに、非常に多くの実用的な分析が可能になる」と付け加えました。

 一方で、スカイUK デジタル&アナリティクス責任者のRobet氏は、「当社ではクラウド上での拡張性の高さのために、GCPを始めた。圧倒的なボリュームのデータを安価に置くことができ、決して過去にはできなかったような方法でデータを計算し意思決定を行うことを可能にしてくれる」と言います。

 さらにTeam Snap ジェネラルマネージャーのKen氏は、「当社では、Google アナリティクス360のデータをBigQueryにエクスポートすることから始めた。2年を経過したころに500ドル分の無料クーポン分のデータ量を超過するくらいのデータ量になり、これを考えるととても自前のシステムでの運用は難しかったと考えている」と語り、各社一様にそのデータスケーラビリティと処理速度、そしてコストメリットについて評価をしました。

左からオフィス・デポ Darren氏、サムスン電子 Jesse氏、Google Michelle氏

パートナー企業や代理店が果たす役割は何か?

 Michelle氏は続いての質問で、「(GCP上のデータ基盤は基本インハウスでの運用になるが)マーケティング分析のためクラウドデータ基盤を使う中で、パートナー企業や代理店が皆さんのビジネスを変革するためにどのような役割を果たしているか?」と、問いかけました。

 それに対し、オフィス・デポのDarren氏は「私たちが今日持っている知識には間違いなくギャップがあり、私たちはGoogleのパートナー会社を大切にしている」とする一方で、「私たちは徐々に多くの分析機能やノウハウを社内に持ち込めるように努力している。今後も可能な限り、引き続きこれらの役割と責任のインハウス化を進めていく。 しかし、知識やノウハウのギャップがまだ多くあり、私たちはパートナーを引き続き頼りにしている」とインハウス強化の姿勢も覗かせました。

 Team SnapのKen氏は「BigQueryはとても親しみやすい部分があるが、いくつか助けが必要な部分もあった。我々のパートナー企業は、とても素晴らしいトレーニングによってその問題を解決してくれた」とトレーニングの重要性について述べました。さらに、「私たちはGoogle AnalyticsとSalesforceをうまく組み合わせようとしたが、上手くいかず、おそらく自分たちだけでは3ヵ月かかるような高度な技術課題もパートナー企業の助けを得て短期間で解決することができた」と新しい取り組みにおけるパートナー企業の重要性についても言及。さらには「私たちは最終的には、すべてをインハウスに所有する必要があると考えているが、今はパートナーの協力を得てそれを加速しようとしている」と、インハウス化のためにもパートナーとの協力が重要であると述べました。

これからのマーケティング分析のための必要な投資は?

 続いてパネラーに投げかけられた質問は「(今後のマーケティング分析のためには)どのようなテクノロジーに投資していくのが良いと考えているか?」というものでした。

 Team SnapのKen氏からは「我々のビジネス(スポーツチームの運営管理アプリ)では、多様なスポーツのシーズン開始時期から3週間の間に、多くのタッチポイント(グローバルでの各地域)での広告展開が必要になる。しかし、それはとても人間のできる範囲のボリュームを超えているので、現在は機械学習を利用している」と回答。「我々はBigQueryを基盤としたAI活用をし、BIではTableauも利用している」と、機械学習と合わせてBI活用へも積極的に投資をしていることを述べました。

 サムスン電子のJesse氏は、「我々は、おそらく今後2年間は、顧客のカスタマージャーニーの理解にフォーカスしていくだろう」と述べ、「あとは、マーケティング組織を自動化対応していくことに注力していきたい」と語った。必要なデータにマーケターが簡単にアクセスできるようにすることで、これまでに多くの時間を費やしてきた様々な作業からの自動化をしていきたいと、組織の抱負についても語りました。

左からTeam Snap Ken氏、スカイ英国 Robert氏、オフィス・デポ Darren氏

組織内のマーケティング分析を加速するためのアドバイスを

 最後にMichelle氏からは「組織内のマーケティング分析について、最後に皆さんからアドバイスを」と、投げかけました。

 Jesse氏は「皆さんができることはたくさんある。長期的な視野をもって一つひとつ段階的に進めていってくことで、最終的には必ず理想的な状態にすることができる」と答えました。

 さらにRobert氏は、「データを活用していく上では、仕組みの構築だけでなく“ガバナンス”などやらなければならないことがたくさんある。しかし、それはやるべき。なぜなら、それは“不便なデータ活用”の状態からデータ活用の未来に向けて組織を推進していくことだから。そこに向けて、皆さんの役割は広がっていくだろう。データは既に分析担当者だけのものではないのだから」とアドバイスを伝えました。

 このセッションでの大きな気づきの一つに、登壇したパネラーの方の組織がすべてマーケティングや分析側の組織であったことです。システムやIT部門ではなく、また、単に広告宣伝を扱う組織でもなく、明らかにデータを使ったマーケティングを推進していくことをミッションにした組織であることがそのタイトルからもわかります。GCPの基盤を「データをダイレクトにマーケティングニーズに提供する」仕組みと捉え、いち早く組織を上げて取り組んでいる様子が見えてきます。

AWNYでGoogleが伝えたかった真意は?

 本稿の冒頭でも述べたように、今年の大きな変化としては、GCP活用のセッションが2つも組み込まれたことです。ますます、デジタルだけでなく、マーケティング全体とデータの距離が近づくに従いマーケターとデータの距離も“ツール”を通じてだけではなく、クラウド上のデータ基盤へダイレクトにアクセスできる環境へのニーズが高まっていることを強く感じる変化だと思います。

 そして、ユーザー企業のマーケター達がデータ基盤にダイレクトにアクセスできるようなった時(インハウス化)、広告代理店やパートナー企業の役割と存在価値も大きく変わらなければならない必然性を強く感じざるを得ません。海外のカンファレンスに出向く理由の1つに、ユーザー企業に対してプレスやプラットフォーマーたちが、パートナー企業や代理店の存在についてなどをテーマに、そのダイナミックな変化についても“忖度”のない議論が交わされそれを目の当たりにできることもあります。今年もその大きな波を昨年以上に強く感じました。

 モバイル化によるカスタマージャーニーの複雑化、それにともなう“ファネルの再定義”、そして動画の普及による“アッパーファネル”層へのフォーカスが高まる中で、”ブランディング“と”パフォーマンス“効果両立の取り組み。いずれにしても、データ基盤がよりマーケターの手に届く距離に近づいたことによって”消費者の行動“と”購買意図“を結び付けた分析が可能になることで起きている大きなシフトチェンジであり、それこそが今年のAWNYでGoogleが伝えたかったことではないだろうか。 

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この記事の著者

山浦 直宏(アユダンテ)(ヤマウラ ナオヒロ(アユダンテ))

アユダンテ株式会社 データソリューション推進統括部 統括部長
チーフエグゼクティブコンサルタント
元立教大学経営学部兼任講師

読売広告社において、事業局、営業局、デジタルビジネス局を経て、ファーストリテイリング、トランスコスモスにて一貫してデジタルマーケティングに従事。2016年よりアユダンテに勤務。 ネット広告の黎明期より一貫して、ネット広告、デジタルマーケティング畑を歩む。アクセス解析には2003年より取組み、解析・コンサルティングの実績多数。2010年よりGoogle アナリティクス360を中心としたデジタルマーケティングコ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/21 12:44 https://markezine.jp/article/detail/29697

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