分析で得た気づきはすぐに企画に反映
――イベントの成果はどういった軸で分析・評価されていますか?
鈴木:来場者の分析などを行っています。イベントの開催前に、ある程度来場者の属性を予想して内容を練るのですが、予想していなかったような属性の方々に来場していただくとイベント前後で比べてアンケート評価が少し下がっていることがあります。セッションごとの評価も、社内外で相違があったりするんですよね。そうして得た気づきは以降のイベントでの内容に反映させ、来場者の満足度向上につなげていきます。
たとえば、以前、既存のお客様を対象にした日を「Cybozu Days」で設けたことがあります。ところが、実際に参加された方を分析すると、新規のユーザーさんも多く足を運んでいたことがわかりました。想定外ではあったのですが、「新規のユーザーさんは実際に製品がどのように使われているのかを知りたがっている」というニーズを新たに知ることができました。
――イベントを進める上で、鈴木さんが最も大変だと思われることはなんでしょうか?
鈴木:時間との戦いが最も大変ですが、メーカー企業側の人間として、1番こだわるべきはコンテンツだと思ってます。ですので、できるだけ効率化できる作業は効率化し、企画を練るために割く時間を増やしたいと考えています。あとは、私自身が飽きっぽい性格を持っていますので、自分自身が飽きないようなことをやり続けることでしょうか。
――イベント来場者の新規と既存の割合はいかがですか?
鈴木:ちょうど半々ほどです。今年(2018年)からデータを取り始めたのですが、そこまで悪くない数字だと思っています。イベントのコンテンツを企画する上で、新規と既存のお客様がどのくらいの割合でいらっしゃるのかは重要な指標になります。リピーターの方が多ければ前回と同じようなセッションは組めませんし、逆に新規の方が多ければ、基本的な説明ができるような内容で、まずは製品をよく理解していただけるようにします。

イベントごとのリード獲得はKPIにしない
――御社では、イベントでのリード獲得はKPIにしていないと伺いました。どこにKPIを置いてマーケティングをされているのでしょうか?
鈴木:「年間での製品売り上げへの貢献度」をKPIとしています。年に一度、どういった経路でサイボウズの製品を認知するに至ったかをアンケートで分析しています。特にBtoB製品は、購入までのリードタイムが長いという特徴があります。そのため、イベント単発でのリード獲得よりも、最終的に購入に貢献したかをより重要視しています。製品認知への貢献度は、現状で展示会が約10%・自社イベントが約5%ですが、自社イベントの割合を今後伸ばしていきたいと考えています。
――「kintone」の訴求にあたっては、製品メッセージである「まとまると強い」をテーマに、車両内広告やSNSキャンペーンも実施されていますよね。こうした施策では、ブランディングも意識されているのでしょうか?
鈴木:サイボウズでは、冒頭に申し上げた通り、コーポレートブランディング部がマーケティングチーム内にあるくらいですので、製品プロモーションでもブランディングは意識しています。SaaSの世界では、単純な機能だけではなく、いかにお客様にメーカーが持つ世界観に共感してもらえるかが重要になってきています。サイボウズの製品を使うことで、お客様はどんなメリットが得られるのか、またどんな世界が体験できるかを伝えていくことが大切だと思っています。
――BtoBでも、そうしたソーシャルも意識した施策は広がっているのでしょうか?
鈴木:段々と主流になってきているように感じています。中でも、AWS(Amazon Web Services)さんは「JAWS-UG(AWS Uses Group - Japan)」というユーザー同士のコミュニティが自発的に生まれるなど、巧みに世界観を伝えている企業のひとつだと思います。
BtoBの領域においても、ユーザーのコミュニティの重要性は増しているように感じますね。実際に製品を利用しているユーザーの方々が自発的に使い勝手の良さや魅力を発信してくださるようなコミュニティの形成には、やはりユーザーと企業間における世界観の共有が欠かせません。確かに、BtoBマーケティングの主流はリード獲得やナーチャリングですが、私は今後さらにコミュニティマーケティングが勢いを増すと見ています。