SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

BOOKS

口コミで成功するのは奇跡?ヒットの近道は「1対100万の瞬間」を掴むこと【おすすめの書籍】

 本稿では、編集部からおすすめの書籍を紹介します。今回は、誰もが夢見る「ヒット」を紐解く1冊。モノやアイデアを流行させるには、「ボーリングの球が、並んでいる数個のピンの先頭を倒す」ように広げていくことが重要だというのですが、一体どういうことなのでしょうか。

「心理」と「市場」から流行の理由を考える

 この商品を流行らせたい、あの投稿でバズを起こしたい――マーケターに限らず、多くの人が「ヒット」を夢見ます。今回ご紹介する『ヒットの設計図──ポケモンGOからトランプ現象まで』は、そうした思いをもつ方が深く学べる1冊です。

『ヒットの設計図──ポケモンGOからトランプ現象まで』著者 デレク・トンプソン氏 早川書房 2,052 円(税込)
『ヒットの設計図──ポケモンGOからトランプ現象まで』
著者 デレク・トンプソン氏 早川書房 2,052 円(税込)

 著者のデレク・トンプソン氏は、米国の評論誌で経済・メディア関連の記事を執筆する編集主任。テレビ出演や、グーグルの社内プログラムでの講演も行っています。

 同書において、はじめに提示される2つの問いがこちら。

・人々が好む製品を作る秘訣とは何か?
・同様のアイデアなのに、まったく当たらない製品と大当たりする製品があるのはなぜか?

 著者はこの謎に迫るために、人間の「心理」と、製品を広める「市場」の両方に着目。実際のヒット商品を例に挙げながら、話を展開していきます。

口コミで成功するのは奇跡? 流行を支えていたのは……

 では「市場」において、モノやアイデアはどのように広まっていくのでしょうか。流行の理由を説明するときに用いられることがあるのが、「バイラルマーケティング」という理論。まるでウイルスに感染するように、1人から2人に、2人から4人に口コミが広がり続け、やがて社会現象になるという考え方です。

 しかし著者は、ヒット商品の仕掛け人やネットワークの専門家に取材を重ねた上で、デジタルの世界で「バイラル」が起こるのは非常に稀であると主張します。代わりに大流行を支えているのは、1つの情報源から多くの人が同時に情報を得る「ブロードキャスト(放送)拡散」のメカニズム。つまり「1対1がつながる瞬間が100万回存在したのではなく、1対100万の瞬間が何回かあった」ために、ヒットが生まれるというのです。

 たとえば、ベストセラー書籍『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、次の3つの「ブロードキャスト拡散」の力によって多くの読者に届きました。

・ネットの創作コミュニティで既に有名人だった作者が、書籍を出版した
・書籍の出版後、書評サイトの人気投票でランクインした
・より大きな出版社と契約を交わし、認知と流通が一気に拡大した

 ヒットというのは人から人へ、伝言ゲームのように伝わるイメージを持たれがちですが、著者の表現を借りれば、「ボーリングの球が、並んでいる数個のピンの先頭を倒す」ように広がっていくものだということです。

 しかしまだ誰にも知られていない商品やコンテンツを、いきなり100万人に届ける機会を得るのは困難。「ブロードキャスト拡散」の波に乗せるには、どうしたらよいのでしょうか。

小さなネットワークを見つけ、そこに働きかける

 アイデアの広げ方について、著者はこのようなアドバイスをしています。

何かのアイデアは、関心のある人たちが緊密につながっている既存のネットワークに乗った時に、最も確実に広がる

 お手本として紹介されているのは、マッチングアプリ「Tinder(ティンダー)」のマーケティング。マーケターは、インフルエンサーや大きなブロードキャストを介して拡散したのではなく、元々享楽的な校風のある大学の社交クラブに出向き、アプリのダウンロードを依頼して利用者を増やしていきました。商品やコンテンツに人が集まってくるのを待つのではなく、ぴったりのネットワークを見つけ、そこに仕掛けていくことが重要というわけです。

 また同書では「人々が好む製品を作る秘訣」も紹介。

顧客にとってなじみのあるものを売るときは、そこに驚きを加えること。顧客を驚かすようなものを、売るときには、なじみ感が得られるようにすること

編集者として人々の好みや流行をウォッチし続けてきた著者ならではの、鋭い視点が活きています。

ヒットの役目は昔と同じ 変わったのは「広げ方」 

 著者は同書の最後で、ネットが登場してからも、遊びを提供する、古いものに新風を吹き込むといったヒットの役目は変わっていないと前置きした上で、こう指摘しています。

昔と今とで違うのは、ヒットを生じさせる方法だ。今は、一介の個人の能力で膨大な人数の聴衆を得ることも可能だし、ディズニーのように巨大企業がその力をもって世界的な「全知」を達成することも可能だ。

 誰もがヒットを生むチャンスをもつ時代だからこそ、モノやアイデアの広め方を適切に設計することが、勝負の分かれ道なのだと感じました。同書を参考に、戦略のブラッシュアップに取り組んでみてはいかがでしょうか。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
BOOKS連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/12/07 07:00 https://markezine.jp/article/detail/29801

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング