激動の4年半を振り返って
――メルカリでの約4年半で、特に印象的だったことは何ですか?
鋤柄:色々ありますが、初めて実施したテレビCMは印象に残っていますし、その光景を今でも覚えています。2014年5月に一回目のテレビCMを打ったんですが、当時、非ゲームでテレビCMをやっている会社はLINEさんくらいしかなかった。テレビCMでサービスのインストールが伸びるのかは、業界的にもわからない状況だったので、実際に始まるまでドキドキしていました。本気で不安に思いながらやっていましたね。
――動くお金も大きいから、プレッシャーも相当あったのでは?
鋤柄:そうですね、めちゃくちゃありました。当時は、調達した資金の数分の一を投資してテレビCMを打っていたので、プレッシャーはもちろんありましたし、「しっかり数値的な意味での成果を出さないと」という気持ちもありました。結果としては、インストールがきちんとリフトして、デジタル広告の効率も劇的に上がりました。心配が大きかった分、喜びも大きかったですね。
鋤柄氏が認識している、デジマ業界の課題
――デジタルもマスも経験されている鋤柄さんから見て、デジタルマーケティングの業界の課題はどこにあると思われますか?

鋤柄:いくつかあると思います。一つは、会社全体としての1ユーザーあたりのLTVをどう考えるかでしょうか。クロスデバイスだったりアプリとWeb横断で展開しているサービスも多い中、一つのIDベースで明確にLTVを出せている会社は少ないでしょう。横断的に計測できるツールが少ないという問題もありますが、LTVは広告予算などの戦略にも関わってきますから、一つ課題としてありますね。
次は、データの扱いについて。どこまでメディア側にデータを渡すのかというポリシーを決めきれていない会社が多いと感じています。確かに、メディアとのデータ連携で精度が高くなるので、マーケティングの成果も上がります。ですが、今後データがもっと増えていくことを考えると、データの扱いに関するポリシーを決めることは重要だと思います。
――鋤柄さんは、どこまでならメディア側にデータを渡してもいいとお考えですか?
鋤柄:サービスにもよるし、企業が所有しているデータの量にもよりますが……。広告の効果最大化と会社としてのリスクは別の話なので、会社としてのリスクを考えた上でマーケティングをすることが大事です。
マーケティングの担当者は、効果最大化のためにあらゆるデータを渡したいと思いがちですが、マーケター自身も会社のリスクを考えておく必要があると思います。