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「結果を見届けるため」に事業会社へ エージェンシーを渡り歩いたグローバルマーケターの胸中とは?

 アジア・欧州のエージェンシーでキャリアを積み上げ、事業会社のCMOへと転身したベテランにインタビュー。決断の理由を語ってもらった。また、グローバルと比較した日本のマーケティングの特徴や、20年の業界歴を通じて大切にしてきた「問い」についてもうかがった。

ジェネシスヘルスケア CMO ミシェル・モメジャ氏

Omnicomの関連会社TEQUILAに在籍し、グローバルのデジタルマーケティング、CRMに注力。テキーラ・ジャパンや、Integer日本オフィスの設立にも参画した。その後はシンガポールに在住し、Wunderman APACやフライシュマン・ヒラード APACにて企業のデジタルトランスフォーメーションを支援。McCann Worldgroup Japanのデジタルマネージングディレクターを経て現職。

「結果を見届けるため」事業会社CMOへ転身

ジェネシスヘルスケア株式会社 CMO ミシェル・モメジャ氏
ジェネシスヘルスケア株式会社 CMO ミシェル・モメジャ氏

――はじめに自己紹介をお願いいたします。

 遺伝子解析を専門とする会社のCMOをしています。一般の方向けに提供している遺伝子検査キット「GeneLife」のブランド認知向上や、マーケティング、コミュニケーションの統括が主な仕事です。日本はもちろん、台湾やシンガポールにも拠点をもち、アジア各国の戦略を担当しています。

――エージェンシーで長年キャリアを積んできた中で、今回事業会社のCMOへ転身した理由を教えて下さい。

 一言で言うと「結果を見届けるため」です。マーケティングには、戦略を立て、クリエイティブやコンテンツを制作し、それを実行するという循環がありますが、エージェンシー側ではその循環が完結するまで一貫して関わる、ということができません。私はデータやデジタルの領域で長く仕事をしてきたため、結果に対する強い思い入れをもっています。行った施策がどう作用し、売上にどう貢献したのか知りたいのです。

 事業領域に関しては、遺伝子検査という分野に大きな可能性を感じていました。世界の消費者に目を向けてみると、単に「病気ではない」という状態を超えた、より積極的な健康への関心が高まっています。日本も例外ではありません。人々は身体的、精神的、そして社会的に良好で、幸福な状態を目指すようになっているのです。そのためこの分野は、非常に成長性が高いと感じています。

 「成長する可能性が高い領域」で働くという考え方は、実はキャリアをスタートさせたときから変わっていません。1993~1994年頃、私は米国にいたのですが、ちょうどその時、伝統的なマス広告やセールスプロモーションに、大きな変化が起こっているのを肌で感じていました。ネットが影響力を持ち始めていたのです。この波はいずれ世界中に広がっていく。この分野でやっていこうと決心したのを覚えています。

「メディア主導」の国、ニッポン

――日本でお仕事をなさるのは今回が初めてではないとか。

 2001~2007年まで東京に駐在し、CRMやダイレクト・レスポンス領域のマーケティングエージェンシー「テキーラ・ジャパン」の立ち上げを行っていました。とてもおもしろい経験でしたよ。始まりは、3つのLANケーブルしかない小さな会議室でした。信じられないかもしれませんが、Wi-Fiすらなかったのです(笑)。東京での6年間では、主にセールスのマネジメントやクライント対応の業務を担当しました。その後はシンガポールで2つのエージェンシーで働き、2013年に再び日本に戻り、今に至ります。

――最初に来日した時と、その後戻ってきた時を比較して、日本に対する印象の違いはありますか?

 最初に駐在した2001~2007年の間、日本はマーケティング最先端の国だと思いました。日本には携帯電話やiモードがありましたが、他の国にはまだ何もなかった。とても進んでいましたね。しかしその後、iPhoneやスマホが普及するにつれて、世界中が日本よりも速く変化していきました。2013年に日本へ戻りましたが、以前の先進性は影を潜めていました。デジタル・ソーシャルの普及に関しても、日本が特別早かったわけではありません。去年、モバイル利用がデスクトップを上回りましたが、この動きも諸外国と同じくらいです。

――確かにiモードの時点は日本は最先端でしたが、スマホの普及により先進性は失われた印象です。日本とグローバルの違いについては、どう感じていますか。

 おもしろいのは、日本では今も「メディア主導」のマーケティングが行われているということです。グローバルと比べて、伝統的なメディアの影響力が残っていると感じます。日本ではまだテレビの影響が大きく、私は2021年ごろにはデジタルの広告費がテレビを上回ると予想していますが、海外ではこの比率は既に逆転しています。

 「メディア主導」の理由は、テレビ広告が長い間、成功モデルとして強く機能してきたからではないでしょうか。しかし消費者の行動は既に変わっていて、過去に比べてテレビを視聴していないのは明らかです。マーケターはこの状況を理解し、適応する必要があります。

 日本とグローバルの違いでもうひとつ感じるのは、UXやUIに関することです。日本はアートやデザインの領域で、最も優れた国のひとつとして知られている一方、UXやUIは見劣りしているのではないかと思います。たとえば日本のeバンキングや旅行サイトは、1つずつ手順を踏まなければならない場合が非常に多い。シンプルにする余地が大きいと感じます。この部分に手を付ければ、顧客体験のさらなる向上を目指せるでしょう。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/29853

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