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新規獲得件数147%を達成!シャノンが語った、BtoBマーケティングにおけるデジタル×アナログ戦略

2019/01/09 10:00

 2016年、アナログからデジタルへと戦略を全面的にシフトしたシャノン。デジタルのみに偏った施策で見えてきたものは、「アナログ施策と連動させた統合マーケティングの重要性」だったという。「MarkeZine Day 2018 Kansai」に登壇した同社 関西支社長 浅野哲氏は、BtoBマーケティングおける統合マーケティングの実践方法を自社の失敗談を交えながら語った。

重要性が高まるデジタル×アナログの統合マーケティング

 昨今、多くの企業がデジタルを活用したマーケティングに取り組んでいる。一方で、「デジタル一辺倒の状況は変わりつつある」と語るのは、シャノンの関西支社長を務める浅野哲氏だ。

 「デジタルマーケティングにアナログ施策を組み合わせるニーズの高まりは、肌で感じています。近年、デジタルマーケティングに取り組んだ企業様からのセミナー実施ノウハウに関するホワイトペーパーのダウンロードが急増しています。

 また、弊社が提供するマーケティングオートメーション(以下、MA)ツールをお使いのユーザー様も、セミナー管理機能やインサイドセールス向けの機能の利用が同様に増えてきていますので、アナログ領域への関心・活用が高まっていると言えます」(浅野氏)

株式会社シャノン 関西支社長 浅野哲氏

 なぜ今、アナログ施策が再注目されているのか。デジタル施策は、伝統的なメール配信やSEM、MA、DSP、Web接客など手段が多岐にわたる。その上、新たな手段が次々と生まれてきており、いずれも単発での効果を継続するのは難しい。

 そもそも何から始めていいか、どれを選択すればいいか自信を持って選択している企業は少ない。漠然と「デジタル」だけで完結するのが難しいと気づいた、または「デジタル疲れ」した企業から順に、アナログ施策の組み合わせが始まっているのではないかと浅野氏は指摘した。

 デジタルとアナログを統合したマーケティングを効果的に行うためには、前述の様々な手段を理解し、自社の目的やフェーズに合わせて選定・運用していくことが求められる。これを実現できるマーケターは、決して多くないだろう。それどころか、多くの関西企業においては、マーケティング業務に割かれる人員や予算は、取り組むべき施策に相対して圧倒的に足りていない。

 では、限られた予算の中で、これからマーケティングに取り組む企業は何から始めればいいのか。成功のカギは、「顧客のステータスに合わせ、チャネルを使い分けた施策を行うこと」だという。

「認知」「課題」の2軸で4象限を作る

 具体的には、まず「自社製品に対する認知があるかどうか」「課題が顕在化しているかどうか」の2軸で4象限を形成し、顧客のステータスを分類する。そして、各象限によって適切な施策を打っていく。

浅野氏が提唱した4象限のイメージ。枠内に記載されているのは、実際に行える施策の例だ

1. 「自社認知あり・課題が顕在化」

 はじめに、「自社の認知があり、課題が顕在化」している顧客に対しては、取りこぼしを防ぐ施策を打つことが重要だという。具体的な施策として、浅野氏は以下の2つを紹介した。

  • 自社サイトに資料請求の導線を設置
  • Webトラッキングを活用し、見込み顧客の自然検索流入を把握

 まず、「自社サイトに資料請求の導線を設置」することで、サイトを訪問するだけで離脱してしまう見込み顧客の取りこぼしを図る。浅野氏曰く、BtoB企業の場合、自社サイトにおける自然検索流入の半分以上は指名検索だという。

 「指名検索される方の多くは、展示会などで製品・サービスの存在を知り、その後社内でチラシよりも詳細な情報を共有するためにサイトに訪れます。このような場合、資料請求時ではまだ営業を受けたいとは思っていません。

 それにもかかわらず、資料請求しようとWebサイトに飛ぶと、問い合わせ用の電話番号しかそこに記載されていないパターンがBtoBの企業では多く見られます。これでは多くの方が営業されると感じ、離脱してしまいます。単純に資料請求とお問い合わせのフォームを分けるだけで、『関心はあるがお問い合わせ未満』の取りこぼしをなくすことができます」(浅野氏)

 2つ目の施策は、「Webトラッキングを活用し、見込み顧客の自然検索流入を把握」すること。通常、一度接触した顧客に対しては、メールを使ったアプローチが主流だ。もちろんメールマーケティングも重要だが、これではリアルタイムに顧客の関心度を把握することが難しい。また、メール反応という受動的な反応ではなく、自発的な検索を経由したWebサイト来訪のほうが関心度が高いことは、想像に難くない。

 社名やMA関連のキーワードなどを入力し、自然検索でサイトに流入するユーザーにおいては、どういったニーズを現在抱えているかが明確になる。ニーズが顕在化した顧客に対して適切なアプローチをすることができれば、当然商談の成功率は上がる。

 「たとえば、展示会のアンケートで『情報収集中』と答えた方がいたとします。その方に直接営業をかけると、おそらく嫌われてしまうでしょう。しかし1ヵ月ほどすると、『予算が意外と余った』『上司や関連部門からの鶴の一声』など、状況の変化に応じてニーズが顕在化する場合があります。このタイミングを逃さず、しっかりと適切なアプローチをすることが重要です。

 これは、新規営業の話だけではなく、ルートセールスでも重要な観点です。自社が一番手であれば、タイミングが来れば顧客から連絡があるかもしれませんが、その商談において二番手・三番手の場合、新しい情報の有無を確認しにWebサイトに来訪しても目新しい情報がなければ声がけすらされず、知らずのうちに失注しているケースも考えられるからです」(浅野氏)

「名刺のデータ化」で、埋もれているリードを発掘

2. 「自社認知あり・課題が潜在的」

 次に、「自社認知があり、課題が潜在的な場合」に言及した浅野氏。具体例としては、「名刺交換したが成約していない顧客」などが想定される。こうしたステータスの顧客に対しては、名刺データを活用することでファネルの拡大を狙うことが重要だという。

 「名刺交換をしても、7割の顧客はすぐに購入を行いません。中長期的なフォローが必要です。しかし現状では、この7割の見込み顧客を放置してしまっている企業がほとんどです。このような場合は、シンプルですが交換した名刺をデータ化し、Cookieと紐づけてデジタル上の行動と連動させる施策が有効です」(浅野氏)

 名刺で顧客情報が補完できる体制を構築すれば、資料請求やセミナー参加といったコンバージョン率の向上も見込めると浅野氏は述べた。

 「たとえば、資料請求のフォームには、アドレス入力欄だけを設置します。また、セミナーの申し込みフォームには、アドレス・会社名・氏名の入力欄だけを設け、最低限の情報のみを取得します。フォーム経由で取得する情報が少なくても、のちに名刺データと統合すれば顧客情報は補完することが可能です。入力事項を極力少なくすることで、フォームを最後まで入力していただける確率は上がります。

 また、名刺をデジタル化した際には、過去の履歴接点が一覧性ある形で名寄せされ、その後も前述のデジタルおよびアナログの行動履歴が紐づけられます。そのため、営業活動に極めて有効なデータとして提供することができるのです」(浅野氏)

「リストを営業に丸投げ」していないか

3. 「自社認知なし・課題が顕在化」

 3つ目は、「自社認知がなくて課題が顕在化」している顧客だ。この場合、MAツールなどを用いることで、デジタル広告や展示会でアプローチすることが有効だと浅野氏は述べた。

 「MAツールを導入していない企業の多くは、展示会で獲得したリストの大半を活用できていないと聞きます。たとえば、『展示会に出展して獲得したリストを営業に丸投げする』などです。営業が主体となって、見込み顧客に対してアプローチするか否かを決め、商談を進める。そして、アプローチしなかったリストはそのまま放置、という状況にある企業がほとんどではないでしょうか」(浅野氏)

 浅野氏は続けて、コンテンツとフォローの最適化にも言及。

 「展示会後の“お礼メール”を素早く送信できていても、肝心のメールの本文を見てみると、製品を売り込むような内容がほとんどです。メールの開封は、必ずしも製品への関心を意味しません。まずは、展示会の内容に関係する文面やリンク先を用意することが重要です。メールを開封した顧客が、特別感を得られるような内容にするのは必須です。

 また、お礼メール送付後、次のメールアクションがメルマガの周期にあわせて1ヵ月後になってしまう企業が多いですが、1ヵ月もすれば多くの場合は忘れられてしまいます。未開封者に対して、忘れられる前に漏れなくフォローし、関心のある方へより詳細な情報を届ける。こうした『やるべきだと思いつつも徹底できていないフォロー』を、MAを使った自動化で実現していくことが必要です」(浅野氏)

アナログ施策でリードを啓蒙し、課題を顕在化

4. 「自社認知なし・課題が潜在的」

 最後は、「自社認知がなく、課題が潜在的な顧客」に対する施策だ。このステータスの顧客は、4象限の中で最も購買の見込みが薄い。「この領域こそデジタル施策」と考える人も多いかもしれない。しかし浅野氏は、「この領域にこそ、アナログ施策が必要です」と力強く語った。

 浅野氏がそう力説した背景には、シャノンが過去に経験した失敗がある。これまで同社は、展示会を中心に見込み顧客のリードを獲得していた。年に2回イベントに出展し、約1万にのぼるリードをフォローしていたそうだ。

 しかし、デジタルマーケティングの普及にともない、2016年にリアルイベントへの出展をすべて取り止め、デジタル施策中心に方向性をシフト。結果、Webサイトからの資料請求数が激増するなど、数字上には大きな変化が見られたという。その一方で、数字の変化に見合う受注が取れなかったそうだ。

 初年度に続き、翌年も同じような状況に陥ったことを受け、浅野氏は失注につながった原因を分析した。その結果、「イベントを開催していなかった」ことが根本的な原因だったという結論に至った。というのも、競合企業はデジタル施策と並行して、セミナーなどのイベントを通して、「接触時間」を増やす施策、いわゆる啓蒙活動(ナーチャリング)を行っていたことが明らかになった。つまり、潜在的だった顧客の課題を顕在化する施策はすべて競合が行っており、「競合が作ったマーケット」で戦っていたことに気づいたという。

 「特にBtoBの場合、課題への気づきを与えた企業に信頼が集まります。弊社のマーケティング施策は『刈り取り』としての資料請求を増やすだけで、顧客の態度変容に導くアナログ施策を打てていませんでした」(浅野氏)

アナログ施策に再注力した結果、受注数は約1.5倍に

 こうしてシャノンは、再びアナログ施策にも注力。セミナーを定期的に開催し、外部イベントへの協賛も増やした。また、製品説明だけでなく、マーケティングに悩んでいる顧客に向けて解決策を提供するなど、啓蒙活動も積極的に行ったという。

 これらと並行し、デジタル施策にも引き続き取り組むことで、デジタルとアナログを連動させたマーケティングを推進。結果、新規顧客獲得数は、アナログ施策に取り組んでいなかった1年前と比べて約1.5倍に伸びたという。

 浅野氏は最後に、デジタルとアナログを連動させることで、マーケティングの効果最大化だけでなく、効率化も図ることができると述べた。そして、以下のようにセッションを締めくくった。

 「BtoBマーケティングでは、キラーコンテンツとなるのは事例です。事例を量産する上で営業との協力は不可欠ですし、なかなか忙しい営業の協力を仰げない企業も多いでしょう。また、たとえ1年目で事例を含めたコンテンツ制作を頑張っても、それ以降『デジタル疲れ』をしてしまうことも多くあります。

 そこで、デジタルとアナログを上手く連動させたマーケティング体制の構築が重要になってきます。この体制が整えば、具体的には、アナログ施策として取り組んだセミナーや展示会出展を開催レポートのようなデジタルコンテンツにし、それをもとにまた新たなアナログ施策への誘導に使うなど、1つの事例で『2度も3度もおいしい』一連の流れを作ることが可能です。

 これによって、受注などの効果に貢献するだけでなく、より効率的にマーケティングを進めることができるようになります。また、結果が出れば営業の協力を得やすく、予算も取りやすくなります。こうした成功体験を生み出し続けることがマーケティングの成功、ひいては事業の成功につながります」(浅野氏)

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