※本記事は、2019年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』37号に掲載したものです。
NIKEが打ち出す五番街旗艦店の優先順位とは
NIKEが2018年11月ニューヨーク五番街52丁目にオープンさせた旗艦店「Nike House of Innovation 000」が話題だ。オープン当初から新しい「店舗体験」がメディアでも報道されているが、筆者の実体験からNIKEの「オンライン起点」の経営に関して、報道では触れていない弱点について考察する。
五番街のNIKE旗艦店は、地下1階+地上5階建て、約6,300m2(1,900坪)の敷地で、年間の家賃は約3,500万ドル(38億円)、つまり1ヵ月の家賃が約3億円強、1日あたりざっと1,000万円の場所だ。かつてこの様な「高級一等地」への進出費用は、「広告宣伝費」として割り切る考え方があった。見込めるトラフィック量に依存した認知拡大や、一等地への出店イメージが広く付与されれば良しとするマス戦略だ。
しかしAmazonをはじめとしたD2C競争におけるリアル店舗の位置づけは、「まずは多くの方に来店いただいて」というノスタルジーな考えが「起点」ではない。昨今のネット起点企業によるリアル流通店舗への進出ラッシュは、来店者の入店を「アプリの起動」を前提とする傾向(法則)がある。構築したいビジネスとして「オンライン起点の顧客との関係構築」が前提だ。その次に結果的にリアル店舗も、関係構築の方法論の1つとして開設されるという順序だ。極論すればオンライン契約無しでは、リアル店舗が楽しめない構造に向かっている。