紙媒体経由の流入は最大規模に
――今回の施策には、チラシに記載されたQRコードを経由し、アプリのダウンロードを促進する仕掛けが施されています。実際にどの程度の流入があったのでしょうか?
南坊:紙媒体を入り口にした施策としては、過去最大規模の流入数を確認しました。紙媒体経由での流入が、2019年になった今でも一定数継続していることには驚いています。
先ほども申し上げたように、今回は「手に取れる」媒体としてチラシを活用しましたが、瞬間的な影響だけでなく持続的な影響もあるというのはひとつの発見でした。投資対効果で見ても、オフラインの施策としては平均的な水準レベルに達していました。
――ネット上で折り込みチラシが話題になる前後では、どういった変化がありましたか?
南坊:メディアからはこの施策で5件ほどの取材を受けました。折り込みチラシ配布のタイミングとほぼ同時にネットで話題になったため、前後の比較は非常に難しいです。ただ、施策に対するネット上での反応という意味では、過去トップクラスの話題性があったと認識しています。ダウンロード数増加などの目に見える効果も大切ですが、弊社のマーケティング施策に対する注目度が高まったこと自体がポジティブな影響だと思っています。
――結果として、非スマホネイティブ世代への訴求やアプリのダウンロード数といった具体的な目標は達成できたのでしょうか?
南坊:ダウンロード数やサービスの認知率において、具体的なKPIを設定していたわけではありません。それでも、テスト・マーケティングで特定地域に絞って配布した割にはユーザー登録数の増加や認知の拡大など複数の成果を得ることができたと考えています。
新たなタッチポイントづくりでユーザー層を拡大
――改めて、折り込みチラシというアナログな施策を採用した背景には、やはりこれまでリーチできていなかった新たなユーザー層を獲得する狙いがあったのでしょうか?
南坊:「メルカリ」は認知率9割(2018年12月にメルカリが自社で実施したインターネット調査より ※18~59歳の男女3,000人を対象)、世界で1億ダウンロードを超えており、アプリサービス企業の中でもレイヤーが異なるフェーズに差し掛かってきていると認識しています。単純なマス展開だけでは、効果が得られなくなってきました。
一方で、スマホネイティブ世代を開拓し尽くしたという認識もありません。まだリーチできていないお客さまに対するコミュニケーションとして、様々なタッチポイントを活用していく必要があると考え、今回の施策が実現しました。
――非スマホネイティブ世代に向けた次なるマーケティング施策として、どのようなものを考えていらっしゃいますか?
南坊:弊社は、お客さまとのタッチポイントは、広告・宣伝的に考える「メディア」だけではないと考えています。過去には、「メルカリカフェ」「メルカリフリマ」などのリアルなタッチポイント作りも行ってきました。このように、従来のような「広告」に留まらない発想を持つことが、ターゲット層へのリーチにつながっていきます。今後も常に試行錯誤を繰り返し、あらゆるプランを組み合わせた施策を考えていきたいですね。
――どうもありがとうございました。
折り込みチラシが配布された愛知県と北海道では、年末の大掃除のタイミングで「不要なものがこんなに出てきたから、売れるものはメルカリで売ってみよう」という会話が多くの家庭でされたと想像することができます。
「モノは数多く持てば持つほど幸せ」という価値観で育ってきた非スマホネイティブ世代が、これまで捨てられなかったモノにはお宝的価値のあるものも多いはず。メルカリの狙いは、単純に非スマホネイティブ世代のユーザー数増加以外にも、彼らの保有するお宝的価値を持ったモノを「メルカリ」というマーケットで流動化させるところにあったのではないでしょうか。
