広告領域にも活用広がるブロックチェーン

既存のネット広告技術を変革する試みは、既に始まっている。たとえば、イスラエルの「Zinc Protocol project」は、ブロックチェーン技術の広告プロトコルだ。
「Zinc」のサイトには、「Zinc is a blockchain based advertising protocol that empowers users to share their data and rewards them for viewing ads on their favorite apps」と明記されている。意訳すると、「Zincは、ブロックチェーンの広告プロトコルだ。Zincを使うと、ユーザーは自分のデータを管理し、シェアする権限を持ち、データをシェアした状態でアプリ内広告に接触したらユーザーが報酬をもらえる」。
「Bitcoin Exchange Guide」の「Zinc Protocol project」に関する記事では、「help to empower users to have more control over the type of data that they share with advertising agencies, all the while incentivizing them to use the service to do so. 」と、よりわかりやすい表現を使っている。
つまり、広告代理店へどのタイプのデータを共有して良いかについて、ユーザーに多くのコントロール権を付与し、インセンティブ(ポイントや仮想通貨の提供など)をユーザーに与えることで、「Zinc」のサービスをユーザーが利用するのを促進していく、ということだ。「Zinc」は、データの主導権をユーザーに与えて、許諾をとるという意味に当たる。
Mozilla Corporationの前CEOのBrendan Eich(JavaScriptの生みの親)が作ったブラウザ「Brave」も、ほぼ同じ思想をもっている。「Brave」については、CNET Japanの記事『ブラウザ『Brave』が追求する新たな広告システム--仮想通貨でユーザーにも利益』(リンク)を参考にして欲しい。
そして、日本においても電通グループが設立した情報銀行、株式会社マイデータ・インテリジェンスが、「パーソナルデータとは生活者個人に帰属するものであり、それを企業活動に活用するには生活者からの許諾が必要」という思想を掲げている。電通は、既に来たるべきIoT広告へ、戦略的に手を打っているのかもしれない。
また、Planetway Japan株式会社が、「データは組織でなく個人に帰属すべきであると考えています。個人の許諾ベースのもと、自身の意思でデータを、安全かつ自由に第三者に公開可能とする事で、 自身と社会にとって好ましい形でデータが利活用される世界『データ個人主権の新時代』の創出を目指します」(参考)と謳っている。
「Zinc」「Brave」「マイデータ・インテリジェンス」「Planetway Japan」の4社の共通点は、Googleが中心となって作り上げてきたネット広告のモデルを、「Disrupt(破壊)」しようとする点、それも、「データ主権を個人に与えるという点」で、一致している。
Googleは、もはや「Disruptee(破壊される側)」になったのだ(もちろん、Googleも次の一手を考えているが、その話はまた別の機会にしたい)。