仮説からの棚割りの最適化
――買上率上昇へのアプローチの成果は?
松中氏:まだ導入から日が浅く、売り上げへの貢献という意味ではこれからのところが大きいのですが……。新橋のお店では、棚割りの最適化で一定の成果を上げています。3つ並んだ棚のそれぞれの買上率を調べた結果、右側の棚の買上率が高いということがありました。新橋という場所柄、「白いシャツが多いからでは?」という仮説を立て、真ん中の棚に白シャツを持っていきました。すると、買上率が10ポイント近く変わったのです。レジに近い左の棚は元々買上率が3つの中で最も低かったのですが、そこに白シャツを移動させても買上率は改善されました。この結果から、白シャツが売り上げに貢献しているということが客観的事実としてわかりました。

松中氏:そこで、商品構成比率の白シャツの割合を増やすというということになるのですが、こういった取り組みは店舗全体の売り上げがゴールという中で局所最適になりがちです。そのため、全体売り上げが一番高くなったレジに近い左側に白シャツを集めるという形にしました。こういった棚割りの最適化をトライアンドエラーで行っているところです。
AI×CRMで優良顧客化へのプロセス設計を変える
――今後計画されていることや展望についてお話しください。
松中氏:横展開の前に、導入店舗におけるデータ収集の深さを出していければと考えています。現状は、「ABEJA Insight for Retail」の強みであるAI領域の機能を活用できていません。これから属性推定やリピート検知ということにも取り組んでいきたいと思います。現在、CRM構築にも注力しており、店舗に来店されたお客様とECを訪れた方のデータ統合も行っていきます。弊社の場合、一人のお客様が購買に至るのは年に2回程度です。しかし、店舗やECを訪れているのも2回ということはないんじゃないかなと。

―――店舗とECの両方で来店計測ができ、名寄せしたデータが持てれば、いろいろなアプローチ方法が模索できそうですね。
松中氏:冒頭でもお話したお客様の行動の変化と実店舗のあり方の再定義ということについてですが、それを決めるのはお客様でしかないかなと思っています。店舗に来て実物を見て、ECで買われている方もいるでしょう。いわゆるショールーミング化した店舗のあり方というのもあるかもしれません。そういう場合は、ECで使えるクーポンを配布するとか。逆にECでログインしたが、最終的には店舗で実物を見て購入するといったケースもあるでしょう。顔認証などを用いれば、どこに何回来店していただいているかわかり、優良顧客になっていただくための接客やインセンティブの与え方などのプロセス設計も大分変わってくるでしょう。AIとCRM、そしてデータドリブンマーケティングを回すMAもフル活用することで、どのチャネルを使っても便利に買い物できるのが東京シャツであるという認識を持っていただけるようにしていきたいですね。