年代別ペルソナ分布
講演では、ペルソナプラットフォームを使ったデモンストレーションを行い、女性の価値観を年代別に探っていった。たとえば20代では、女性らしさの価値観が「幸福する快楽」と「越境する効率」の2層に、家族観は「楽しい」「協働」「スマホ」の3層に分かれた6つのペルソナを中心に構成されていたが、40代は「強さへの自信」に価値観が寄り、50代はペルソナが広範囲に分散しているのが特徴としてうかがえた。
これに対し吉丸氏は、「20代は未婚・既婚が半々ほどの年代。もう少し詳細を見ると、未婚は『幸福する快感』寄りで、既婚になると『越境する効率』という柔軟な考え方に落ち着いていく傾向が見えます。また、分布の様子から、同じ20代でも色々な価値観を持っていることがわかります。40代は妻・母としての役割を持ちながら働く人が増え、強くなければいけないという想いを抱えている人が多いようです。仕事貢献度を見ると高い数値となっている一方で、生活満足度はかなり不満と考えている人も多いのも特徴です。50代は自分に向き合う時間ができ、使えるお金にも余裕が出てきたからか、色々な価値観に分かれてきます」と考察を述べた。
ペルソナプラットフォームでは、他にも「あるブランドを好んで買う女性の顧客像」といったブランド別購入層のペルソナなどを簡単な操作ですぐに確認できるようになっている。具体的な活用方法としては、「エビデンスとして企画書やコンセプトシートに添付」「ブランド戦略におけるペルソナ仮説設定」「タイアップキャンペーンのターゲットとその出現率を確認し、効果を予測」などが考えられる。
本音を探る3つのメソッド
ペルソナプラットフォームを開発する上で苦心したのは、基盤となっているアンケートの調査票だったという。一般的に調査票は統計処理を前提に作られる。また、実際問題として、途中の設問でふるい落とされず先に進むほど回答への謝礼が高くなる。そのため、答える側は、設問側の意図を読み取って「何とか最後までたどり着きたい」と考える。しかし、そうしたアンケートから適切なペルソナを描くのは難しい。
そこでポイントとなるのは、 “アンケート慣れ”している日本女性たちに、いかに調査主催側の意図を知られない設問づくりをするかだ。そこで共同印刷では、熊坂氏の考える以下の3つのメソッドを用いて調査票を作成していった。
メソッド1:本音に迫ることのできる調査票=セクシーな調査
調査票は思わず答えたくなるようなものでなくてはならない。たとえば、読むと家族の在り方や普段の会話までイメージできそうな設問を入れて価値観を聞いたり、究極の選択をさせたりするなどだ。それを熊坂氏は「セクシーな調査票」と呼んでいる。
メソッド2:共感度は高すぎても低すぎてもよくない
共感度が80%以上になるとコモディティー化した価値観になってしまう。30%ほどの信頼性や共感度を得られるような価値観を拾っていくことが最適だ。「ペルソナ4×4」作成時の調査には、女性像をランダムに出し、それに共感できるかを尋ねていった。
メソッド3:設問は主観的で構わない
熊坂氏によると設問は主観的でよく、偏見が入っても構わないそうだ。「ペルソナ4×4」作成時に行ったアンケートの最後には、「あなたの仕事や趣味や恋愛など、今の『あなたらしさ』をアピールするとしたら、どのようなことですか。自由に、気楽に、なるべく具体的にお書きください。(1,000文字まで可)」という自由回答項目を用意した。吉丸氏は1,000字というボリューム感に回答率の低下を懸念していたが、蓋を開けてみると半数以上の人がきちんと記入していた。「内容も具体的なものが多々ありました。そういう気持ちにさせる設問の設計が、女性の価値観を汲み取る上では非常に重要だとプロジェクトを通して学びました」と吉丸氏は語る。